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オーストラリアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、オーストラリアの牛乳生産量は、1961年の627万7000トンから1999年に初めて1000万トンを超え、その後2002年には最高値である1127万1000トンに達しました。しかし、その後は減少傾向にあり、2023年には846万7000トンとなりました。この長期的推移は、自然環境、政策、経済状況といった複数の要因が影響を及ぼしていると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 8,467,000
0.2% ↑
2022年 8,450,000
-6.8% ↓
2021年 9,067,000
-0.35% ↓
2020年 9,099,000
2.87% ↑
2019年 8,845,000
-4.78% ↓
2018年 9,289,000
3.03% ↑
2017年 9,015,779
-6.87% ↓
2016年 9,680,907
2.02% ↑
2015年 9,489,000
-0.56% ↓
2014年 9,542,000
0.21% ↑
2013年 9,522,000
0.44% ↑
2012年 9,480,132
4.17% ↑
2011年 9,101,000
0.86% ↑
2010年 9,023,000
-3.89% ↓
2009年 9,388,000
1.79% ↑
2008年 9,223,000
-3.76% ↓
2007年 9,583,000
-5.02% ↓
2006年 10,089,000
-0.38% ↓
2005年 10,127,000
0.51% ↑
2004年 10,076,000
-2.44% ↓
2003年 10,328,000
-8.37% ↓
2002年 11,271,000
6.86% ↑
2001年 10,547,000
-2.77% ↓
2000年 10,847,000
6.57% ↑
1999年 10,178,000
7.83% ↑
1998年 9,439,000
1.32% ↑
1997年 9,316,000
3.67% ↑
1996年 8,986,000
6.22% ↑
1995年 8,460,000
1.6% ↑
1994年 8,327,000
10.23% ↑
1993年 7,554,000
8.83% ↑
1992年 6,941,000
5.15% ↑
1991年 6,601,000
2.25% ↑
1990年 6,456,000
-0.43% ↓
1989年 6,484,000
2.61% ↑
1988年 6,319,000
-0.69% ↓
1987年 6,363,000
2.22% ↑
1986年 6,225,000 -
1985年 6,225,000
1.93% ↑
1984年 6,107,000
7.23% ↑
1983年 5,695,000
4.86% ↑
1982年 5,431,000
0.46% ↑
1981年 5,406,000
-2.86% ↓
1980年 5,565,000
-4.43% ↓
1979年 5,823,000
2.88% ↑
1978年 5,660,000
-4.91% ↓
1977年 5,952,000
-7.61% ↓
1976年 6,442,000
-3.82% ↓
1975年 6,698,000
-3.29% ↓
1974年 6,926,000
-3.38% ↓
1973年 7,168,000
-1.78% ↓
1972年 7,298,000
-2.35% ↓
1971年 7,474,000
-3.64% ↓
1970年 7,756,000
8.01% ↑
1969年 7,181,000
2.31% ↑
1968年 7,019,000
-6.67% ↓
1967年 7,521,000
3.4% ↑
1966年 7,274,000
2.05% ↑
1965年 7,128,000
1.63% ↑
1964年 7,014,000
1.96% ↑
1963年 6,879,000
1.69% ↑
1962年 6,765,000
7.77% ↑
1961年 6,277,000 -

オーストラリアの牛乳生産量は、20世紀半ばから2023年までの間で様々な変動を見せてきました。その背景には、国内外の需要、気候変動、農業政策の変更、国際市場の動向など、多岐にわたる要因があります。特に、1960年代から1990年代半ばにかけて、牛乳生産量は一貫して増加し、2002年には過去最高の1127万1000トンに達しました。この成長は、生産技術の進歩や輸出市場の拡大、国内の消費増加によるものと考えられます。

しかし、2002年以降のデータを見ると、牛乳生産量は減少に転じており、2023年には846万7000トンと約25%の減少を記録しています。この減少傾向の背景には、干ばつの頻発や洪水といった気候変動による自然災害が影響しています。オーストラリアは乾燥した気候を持つ国であり、水資源が畜産業全般への大きな課題となっているため、気象変動の影響を強く受けやすい地域です。特に、2000年代後半から続く異常気象が、牧草地の収穫量を低下させ、牛やその飼育環境に影響を与えたことが指摘されています。

また、国際市場の変化も重要な要因です。例えば、中国やアメリカをはじめとする主要輸出国との乳製品市場の競争激化は、オーストラリアの輸出の拡大を制限している可能性があります。一方で、国内市場においては健康志向の高まりによる植物性ミルク(例えば、アーモンドミルクやオーツミルク)の人気が高まっており、乳牛由来の牛乳需要を減少させています。この変化は、他の先進国である日本やイギリスでも見られる傾向と一致しています。

さらに、農業政策の変更も影響していると考えられます。補助金や投資の削減により、特に小規模の酪農業者が生産活動を縮小する動きがあったことが報告されています。この政策の変化は、一定程度の規模を持つ大規模農場が農業全体のシェアを獲得する傾向を強めている一方で、小規模酪農業者の廃業が地方コミュニティに影響を与えている可能性もあります。

未来の課題としては、気候変動に対応する持続可能な酪農の実現が挙げられます。具体的には、効率的な水管理技術や干ばつ耐性の高い牧草・家畜の導入が含まれます。また、国内外の市場ニーズを見据えた生産品目の多様化も重要です。たとえば、消費者の健康志向や環境意識を考慮し、オーガニック乳製品や低エミッション乳製品の開発を推進することで、新たな市場参入の可能性があります。

地政学的に見ても、オーストラリアの酪農業はアジア太平洋地域への乳製品供給地としての役割を果たしていますが、この役割を維持するためには貿易協定や関税の緩和、国際的な地位の強化が求められます。また、国内の酪農業の維持と発展を目的とした移民政策による酪農人材の確保は、地域経済を支える柱となり得るでしょう。

結論として、オーストラリアの牛乳生産量推移は農業全般が抱える課題を象徴しています。気候、政策、消費トレンドの変化に柔軟に対応するためには、持続可能な生産技術の導入、乳製品需要の変化に合わせた柔軟な戦略、そして地域・国際協力のさらなる強化が必要です。国際連合や地域機関も協調して支援を行うことで、オーストラリアは持続可能な酪農業のモデルケースとなる可能性があります。