最新データによると、オーストラリアの柿生産量は、2023年に3,646トンと大きく増加しました。それ以前の40年間では、増加傾向が見られるものの、特に1983年から2006年にかけては緩やかな成長を示し、2007年以降は700トン前後での安定が続いていました。しかし、2023年の生産量急増は、異例の動きとして注目に値します。この成長は、明らかに2022年以前の747トンを大幅に上回り、過去最多となっています。
オーストラリアの柿生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 3,646 |
387.82% ↑
|
2022年 | 747 |
0.48% ↑
|
2021年 | 744 |
0.48% ↑
|
2020年 | 740 |
-0.01% ↓
|
2019年 | 740 |
1.21% ↑
|
2018年 | 732 |
0.74% ↑
|
2017年 | 726 |
0.7% ↑
|
2016年 | 721 |
0.85% ↑
|
2015年 | 715 |
0.11% ↑
|
2014年 | 714 |
1.73% ↑
|
2013年 | 702 |
6.37% ↑
|
2012年 | 660 |
-4.59% ↓
|
2011年 | 692 |
-0.56% ↓
|
2010年 | 696 |
-0.66% ↓
|
2009年 | 700 |
-2.74% ↓
|
2008年 | 720 |
0.7% ↑
|
2007年 | 715 |
2.14% ↑
|
2006年 | 700 |
2.77% ↑
|
2005年 | 681 |
0.88% ↑
|
2004年 | 675 |
0.92% ↑
|
2003年 | 669 |
1.05% ↑
|
2002年 | 662 |
0.63% ↑
|
2001年 | 658 |
0.92% ↑
|
2000年 | 652 |
0.93% ↑
|
1999年 | 646 |
0.75% ↑
|
1998年 | 641 |
0.9% ↑
|
1997年 | 635 |
-2.25% ↓
|
1996年 | 650 |
4.25% ↑
|
1995年 | 624 |
1.1% ↑
|
1994年 | 617 |
-3.63% ↓
|
1993年 | 640 |
25.49% ↑
|
1992年 | 510 |
6.25% ↑
|
1991年 | 480 |
45.9% ↑
|
1990年 | 329 |
41.81% ↑
|
1989年 | 232 |
0.87% ↑
|
1988年 | 230 |
-1.29% ↓
|
1987年 | 233 |
10.43% ↑
|
1986年 | 211 |
-2.31% ↓
|
1985年 | 216 |
72.8% ↑
|
1984年 | 125 |
52.44% ↑
|
1983年 | 82 | - |
国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization)が発表したデータを基に、オーストラリアにおける柿生産量の推移を分析すると、1983年の82トンから1990年代初頭にかけて急激な増加を見せ、2000年以降はおおむね緩やかな上昇で推移していました。このような背景には、農業技術の向上や収穫効率の増加、気候条件の改善などが影響していると考えられます。
しかし、2023年にはそれまでの生産量水準の約4倍超となる3,646トンに達しています。この大幅な増産には、いくつかの要因が関連している可能性があります。オーストラリア政府が行った果樹栽培支援政策に加え、農業分野での新たな投資が柿生産に特化したプロジェクトを成功へ導いたことが挙げられます。また、中国などの主要な柿消費国や輸出先市場にて需要が拡大した結果、供給力の強化に拍車がかかったとも考えられます。
オーストラリアの柿生産量が安定していた2010年代後半には、極端な気候変動や水資源問題の影響を受けた時期もあり、生産量の伸びが頭打ちとなる時期がありました。一方で、オーストラリアの柿の国際市場における競争力は特にアジア市場で認識されているため、現地での貿易やプロモーション戦略が結果として輸出拡大につながったとも言えるでしょう。他国との比較では、日本や韓国が長年主要な輸出国であった一方、オーストラリアはその市場シェアで劣位に立っていました。しかし、今回の生産量増加は、こうした競争関係に新たな変化をもたらす可能性があります。
2023年の記録的な生産量は、同国の農業インフラ増強や気候条件が特殊に恵まれたことで成り立ったかもしれませんが、持続可能性の観点からの課題も重要です。この増産が、労働力需要の増加や水資源のさらなる消費を伴う可能性があり、環境負担をどう軽減していくかが鍵となるでしょう。特にオーストラリアでは干ばつなどの自然災害が頻発することもあり、水資源管理の政策が今後の持続可能な農業の焦点となるはずです。
また、地政学的リスクとしては、2023年以降、貿易摩擦や地域市場の競争激化が生じた場合、この生産量が需給バランスに悪影響を与えるリスクもあります。そのため、輸出先の多角化や生鮮食品の保存技術の向上を進めることで、不確定要因に対する柔軟な対応力を確保するのが望ましいでしょう。
今後の対応としては、第一に、生産効率と環境負荷のバランスを取るため、スマート農業技術のさらなる導入を促進することが重要です。第二に、輸出先市場と国内市場の両面での需要を見据えた戦略的農業政策が求められます。第三に、異常気象への備えとして農地の排水設備や灌漑施設の整備を進める必要があります。
今回の急激な生産量の増加が一時的な現象で終わらないよう、長期的視野に立脚した政策が必要とされています。この動向は、オーストラリアだけでなく、世界的な農産物市場にとっても重要な示唆を持つと言えるでしょう。