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オーストラリアの大豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、オーストラリアの大豆生産量は、1960年代初期には年間生産量が数百トンに過ぎなかったものの、1970年代から急速に増加し、1980年代にはピーク時で10万トンを超える規模に成長しました。しかし、2000年以降、気候変動や農業条件の変化により大きな変動を見せ、2020年代には安定的ではないものの一定の回復傾向が見られます。2022年には57,200トンに達し、ここ数年の中では高い水準となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 52,000
-9.09% ↓
2022年 57,200
42.22% ↑
2021年 40,219
132.17% ↑
2020年 17,323
14.45% ↑
2019年 15,136
-47.63% ↓
2018年 28,903
-7.76% ↓
2017年 31,335
6.57% ↑
2016年 29,403
-21.46% ↓
2015年 37,439
17.18% ↑
2014年 31,949
-65.2% ↓
2013年 91,800
6.62% ↑
2012年 86,100
189.41% ↑
2011年 29,750
-50.08% ↓
2010年 59,600
-25.6% ↓
2009年 80,105
130.85% ↑
2008年 34,700
33.94% ↑
2007年 25,907
-48.34% ↓
2006年 50,149
12.22% ↑
2005年 44,689
-25.28% ↓
2004年 59,807
549.23% ↑
2003年 9,212
-85.39% ↓
2002年 63,061
29.62% ↑
2001年 48,649
-53.58% ↓
2000年 104,800
-3.68% ↓
1999年 108,800
101.48% ↑
1998年 54,000
-27.03% ↓
1997年 74,000
65.9% ↑
1996年 44,606
63.71% ↑
1995年 27,247
-66.47% ↓
1994年 81,263
66.22% ↑
1993年 48,889
-21.9% ↓
1992年 62,600
0.94% ↑
1991年 62,016
-19.89% ↓
1990年 77,413
-40.23% ↓
1989年 129,511
87.83% ↑
1988年 68,952
-23.22% ↓
1987年 89,800
-14.67% ↓
1986年 105,234
-4.19% ↓
1985年 109,840
23.92% ↑
1984年 88,635
66.55% ↑
1983年 53,217
-30.97% ↓
1982年 77,089
5.34% ↑
1981年 73,181
-10.71% ↓
1980年 81,962
-16.98% ↓
1979年 98,722
29.05% ↑
1978年 76,500
38.47% ↑
1977年 55,246
23.85% ↑
1976年 44,607
-39.49% ↓
1975年 73,723
17.88% ↑
1974年 62,541
64.85% ↑
1973年 37,937
12.81% ↑
1972年 33,629
265.25% ↑
1971年 9,207
83.11% ↑
1970年 5,028
188.97% ↑
1969年 1,740
96.17% ↑
1968年 887
14.45% ↑
1967年 775
0.65% ↑
1966年 770
-30.76% ↓
1965年 1,112
48.66% ↑
1964年 748
24.87% ↑
1963年 599
130.38% ↑
1962年 260
30% ↑
1961年 200 -

オーストラリアの大豆生産量のデータからは、いくつかの重要な特徴と課題が見て取れます。まず、1960年代から1970年代にかけての急激な成長は、作付面積の拡大や農業技術の進歩によるものと考えられます。特に1970年代後半から1980年代にかけては、国際的な大豆需要の増加に伴い、国内農家も生産拡大に貢献しました。この時期、オーストラリアの農業政策が積極的に後押ししたことも影響している可能性があります。

しかし、1990年代以降、生産量は天候や市場条件に強く左右される状況が目立つようになります。大豆は特に水や気温に敏感な作物であり、オーストラリア特有の干ばつや気候変動の影響を受けやすい作物であることがわかります。実際、干ばつが発生した年には生産量が急激に落ち込み、たとえば2003年の9,212トンや2007年の25,907トンなど、過去の平均値から大きく下回る年が見られます。

近年、2020年から2022年にかけては、再び生産が増加傾向にあり、2022年には57,200トンに到達しました。これには、気候の回復や作付体系の工夫、さらなる農業技術の向上が関与していると考えられます。ただし、この増加が長期的に続くか否かは依然として不透明です。

ここで考慮すべき課題には、気候変動が大きく関わっています。オーストラリア全体が直面する干ばつリスクや水資源の不足、大豆栽培に必要な適切な土壌条件の確保など、多方面での課題があります。特に、気候安定の欠如が大豆の収量に直接的な影響を及ぼしており、これが長期的に持続可能な栽培の妨げになっています。

さらに、地政学的背景として、中国などアジア市場における大豆需要の増加が影響を与えています。中国は大豆の主要な輸入国であり、特にアメリカやブラジルからの輸入が多い一方、オーストラリアは比較的小規模な供給国に留まっています。しかし、地政学的緊張や輸出制限による国際市場の変動が続く中、オーストラリアには供給の多様性を拡大し、国際市場において競争力を強化する機会があります。

これらの課題に対する解決策として、次のような取り組みが考えられます。まず、干ばつに強い大豆の品種改良を進めることで、気候変動の影響を緩和することが期待されます。また、水資源の効率的な活用を図る灌漑技術の進展や、土地利用を最適化するアプローチが必要です。その上で、地域間協力を深め、特にアジア市場への輸出競争力を高めるための積極的な外交政策を展開することが重要となります。

結論として、オーストラリアの大豆生産は、過去数十年にわたり変動を繰り返してきましたが、現在は一定の回復傾向にあります。ただし、世界的な気候変動や市場の競争に対応していくためには、研究開発への投資や輸出市場の多様化、そして持続可能な農業の推進などを通じて、長期的な安定を目指す努力が求められます。これらの取り組みはオーストラリア全体の農業分野における未来にも貢献するものとなるでしょう。