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オーストラリアの大豆生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、オーストラリアの大豆生産量は、1960年代初期には年間生産量が数百トンに過ぎなかったものの、1970年代から急速に増加し、1980年代にはピーク時で10万トンを超える規模に成長しました。しかし、2000年以降、気候変動や農業条件の変化により大きな変動を見せ、2020年代には安定的ではないものの一定の回復傾向が見られます。2022年には57,200トンに達し、ここ数年の中では高い水準となっています。

年度 生産量(トン)
2022年 57,200
2021年 40,219
2020年 17,323
2019年 15,136
2018年 28,903
2017年 31,335
2016年 29,403
2015年 37,439
2014年 31,949
2013年 91,800
2012年 86,100
2011年 29,750
2010年 59,600
2009年 80,105
2008年 34,700
2007年 25,907
2006年 50,149
2005年 44,689
2004年 59,807
2003年 9,212
2002年 63,061
2001年 48,649
2000年 104,800
1999年 108,800
1998年 54,000
1997年 74,000
1996年 44,606
1995年 27,247
1994年 81,263
1993年 48,889
1992年 62,600
1991年 62,016
1990年 77,413
1989年 129,511
1988年 68,952
1987年 89,800
1986年 105,234
1985年 109,840
1984年 88,635
1983年 53,217
1982年 77,089
1981年 73,181
1980年 81,962
1979年 98,722
1978年 76,500
1977年 55,246
1976年 44,607
1975年 73,723
1974年 62,541
1973年 37,937
1972年 33,629
1971年 9,207
1970年 5,028
1969年 1,740
1968年 887
1967年 775
1966年 770
1965年 1,112
1964年 748
1963年 599
1962年 260
1961年 200

オーストラリアの大豆生産量のデータからは、いくつかの重要な特徴と課題が見て取れます。まず、1960年代から1970年代にかけての急激な成長は、作付面積の拡大や農業技術の進歩によるものと考えられます。特に1970年代後半から1980年代にかけては、国際的な大豆需要の増加に伴い、国内農家も生産拡大に貢献しました。この時期、オーストラリアの農業政策が積極的に後押ししたことも影響している可能性があります。

しかし、1990年代以降、生産量は天候や市場条件に強く左右される状況が目立つようになります。大豆は特に水や気温に敏感な作物であり、オーストラリア特有の干ばつや気候変動の影響を受けやすい作物であることがわかります。実際、干ばつが発生した年には生産量が急激に落ち込み、たとえば2003年の9,212トンや2007年の25,907トンなど、過去の平均値から大きく下回る年が見られます。

近年、2020年から2022年にかけては、再び生産が増加傾向にあり、2022年には57,200トンに到達しました。これには、気候の回復や作付体系の工夫、さらなる農業技術の向上が関与していると考えられます。ただし、この増加が長期的に続くか否かは依然として不透明です。

ここで考慮すべき課題には、気候変動が大きく関わっています。オーストラリア全体が直面する干ばつリスクや水資源の不足、大豆栽培に必要な適切な土壌条件の確保など、多方面での課題があります。特に、気候安定の欠如が大豆の収量に直接的な影響を及ぼしており、これが長期的に持続可能な栽培の妨げになっています。

さらに、地政学的背景として、中国などアジア市場における大豆需要の増加が影響を与えています。中国は大豆の主要な輸入国であり、特にアメリカやブラジルからの輸入が多い一方、オーストラリアは比較的小規模な供給国に留まっています。しかし、地政学的緊張や輸出制限による国際市場の変動が続く中、オーストラリアには供給の多様性を拡大し、国際市場において競争力を強化する機会があります。

これらの課題に対する解決策として、次のような取り組みが考えられます。まず、干ばつに強い大豆の品種改良を進めることで、気候変動の影響を緩和することが期待されます。また、水資源の効率的な活用を図る灌漑技術の進展や、土地利用を最適化するアプローチが必要です。その上で、地域間協力を深め、特にアジア市場への輸出競争力を高めるための積極的な外交政策を展開することが重要となります。

結論として、オーストラリアの大豆生産は、過去数十年にわたり変動を繰り返してきましたが、現在は一定の回復傾向にあります。ただし、世界的な気候変動や市場の競争に対応していくためには、研究開発への投資や輸出市場の多様化、そして持続可能な農業の推進などを通じて、長期的な安定を目指す努力が求められます。これらの取り組みはオーストラリア全体の農業分野における未来にも貢献するものとなるでしょう。