国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、オーストラリアの鶏の飼養羽数は1961年から一貫して増加傾向にありましたが、年によって変動も見られます。初期の1961年には19,890千羽だった飼養羽数は、2022年には109,382千羽に増加しています。この間、生産技術の向上や需要の変化に伴う増加を見せつつも、一部の年では経済や環境の要因による減少も観察されました。足元では、飼養羽数は再び増加基調にあり、特に2022年の近年データでは110,000千羽台に近い水準を記録しています。
オーストラリアの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 109,382.00 |
2021年 | 111,189.00 |
2020年 | 100,894.00 |
2019年 | 111,924.00 |
2018年 | 99,784.00 |
2017年 | 95,012.00 |
2016年 | 90,052.00 |
2015年 | 88,658.00 |
2014年 | 97,500.00 |
2013年 | 98,653.00 |
2012年 | 100,996.00 |
2011年 | 90,744.00 |
2010年 | 83,024.00 |
2009年 | 95,409.00 |
2008年 | 88,629.00 |
2007年 | 97,386.00 |
2006年 | 94,384.00 |
2005年 | 75,903.00 |
2004年 | 83,404.00 |
2003年 | 83,826.00 |
2002年 | 85,002.00 |
2001年 | 90,973.00 |
2000年 | 84,928.00 |
1999年 | 91,775.00 |
1998年 | 89,540.00 |
1997年 | 81,432.00 |
1996年 | 75,744.00 |
1995年 | 66,004.00 |
1994年 | 69,208.00 |
1993年 | 68,087.00 |
1992年 | 60,071.00 |
1991年 | 55,116.00 |
1990年 | 59,956.00 |
1989年 | 52,901.00 |
1988年 | 64,566.00 |
1987年 | 56,009.00 |
1986年 | 51,930.00 |
1985年 | 50,401.00 |
1984年 | 47,768.00 |
1983年 | 48,632.00 |
1982年 | 44,974.00 |
1981年 | 46,561.00 |
1980年 | 46,749.00 |
1979年 | 43,214.00 |
1978年 | 42,637.00 |
1977年 | 43,341.00 |
1976年 | 42,917.00 |
1975年 | 40,759.00 |
1974年 | 44,151.00 |
1973年 | 41,738.00 |
1972年 | 40,535.00 |
1971年 | 30,000.00 |
1970年 | 27,000.00 |
1969年 | 24,000.00 |
1968年 | 22,500.00 |
1967年 | 22,000.00 |
1966年 | 21,500.00 |
1965年 | 21,500.00 |
1964年 | 21,110.00 |
1963年 | 20,700.00 |
1962年 | 20,290.00 |
1961年 | 19,890.00 |
オーストラリアの鶏飼養羽数の推移データは、同国の家禽産業や家畜数に関する重要な情報を示しています。このデータは、食料生産、輸出産業、さらには気候変動対策や動物福祉の観点でも注目されています。1961年時点ではおよそ19,890千羽と控えめな規模でしたが、その後約60年間でほぼ5倍に達する増加を見せています。1970年代半ば以降、波はあるものの緩やかで安定した拡大を続けています。2022年のデータでは109,382千羽という大幅な増加が記録されています。
この増加の背景には、主に人口増加、食肉消費の増加、農業生産技術の向上、特に集約的農業の普及が挙げられます。また、輸出市場における需要拡大もオーストラリアの生産者にとって大きなインセンティブとなっています。一方で、飼料価格の変動や干ばつなどの気候要因、また政策的な規制の影響もその年々の変動に表れています。これらの要因を考慮に入れず単純に数値の増加だけを評価することは避けなければなりません。
1972年から1973年にかけて大幅に増加した要因としては、家禽業界における生産プロセスの効率化や、鶏肉が安価なタンパク源として地元消費者に広く受け入れられるようになったことが挙げられます。同時期の世界的な食品需要の拡大も影響しています。1998年から2007年にかけては、飼養羽数が急増した一方で、2000年代半ばになると一部減少期が見られます。これには干ばつや農業用水の供給問題が関わっています。
最近の動向として、2019年以降、再び100,000千羽を超えた水準に達している点は注目に値します。これは、特にアジア諸国を含む輸出量の増加による需要の伸びが主因であり、また国内外での鶏肉の健康志向に基づいた消費拡大が反映されています。ただし、2020年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で物流や消費の一時的な停滞が生じ、飼養数は100,894千羽にとどまりました。2021年以降は再び増加基調に転じ、農業部門の回復が観察されています。
将来的な課題として、気候変動の影響が避けられません。鶏飼養数の増加は水資源の消費量増加や温室効果ガスの排出に影響を与えるため、持続可能な生産方法の採用が求められています。また、動物福祉の観点からも集約的飼育環境の改善が議論されており、ヨーロッパ諸国での規制動向を参考にした政策立案が必要です。
具体的な対策として、政府や民間セクターによる持続可能な農業技術の支援プログラムを拡充することが挙げられます。たとえば、飼料効率を向上させる技術や省水型の飼育施設の導入が効果的でしょう。また、輸出市場での競争力を維持するために、自由貿易協定による海外市場のさらなる解放並びに品質保証体制の整備を進める必要があります。
結論として、オーストラリアの鶏飼養羽数は、経済成長や貿易への貢献という面で大きな役割を果たしてきましたが、環境問題や動物福祉の課題を含む新たな局面を迎えています。持続可能な発展を実現するため、政府、業界、研究機関が連携して計画的な取り組みを進めることが不可欠です。これにより、農業と環境のバランスを維持しながら、今後も食料安全保障に貢献する鶏産業を構築することが可能となるでしょう。