国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、オーストラリアのトマト生産量は1961年から2022年の間で大きな変動を見せています。1961年の生産量142,591トンからゆるやかな増加を経て、2001年には過去最高の556,240トンに達しましたが、その後減少傾向が見られ、2022年には325,000トンとなっています。このデータは、気候変動や市場の需要、農業技術の進歩、その他の地政学的影響を反映していると考えられます。
オーストラリアのトマト生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 325,000 |
2021年 | 336,888 |
2020年 | 297,474 |
2019年 | 329,188 |
2018年 | 386,376 |
2017年 | 371,578 |
2016年 | 405,167 |
2015年 | 389,205 |
2014年 | 326,189 |
2013年 | 455,654 |
2012年 | 371,514 |
2011年 | 301,719 |
2010年 | 471,883 |
2009年 | 440,093 |
2008年 | 362,286 |
2007年 | 296,035 |
2006年 | 450,459 |
2005年 | 407,867 |
2004年 | 474,220 |
2003年 | 364,368 |
2002年 | 424,950 |
2001年 | 556,240 |
2000年 | 413,617 |
1999年 | 394,371 |
1998年 | 380,130 |
1997年 | 393,117 |
1996年 | 370,913 |
1995年 | 340,033 |
1994年 | 327,221 |
1993年 | 279,762 |
1992年 | 330,549 |
1991年 | 364,108 |
1990年 | 322,060 |
1989年 | 318,618 |
1988年 | 282,551 |
1987年 | 266,019 |
1986年 | 249,400 |
1985年 | 270,475 |
1984年 | 258,281 |
1983年 | 224,077 |
1982年 | 228,390 |
1981年 | 216,836 |
1980年 | 196,922 |
1979年 | 172,639 |
1978年 | 182,454 |
1977年 | 178,071 |
1976年 | 162,151 |
1975年 | 165,441 |
1974年 | 132,736 |
1973年 | 172,353 |
1972年 | 189,985 |
1971年 | 178,464 |
1970年 | 162,912 |
1969年 | 156,794 |
1968年 | 155,770 |
1967年 | 175,741 |
1966年 | 162,270 |
1965年 | 149,556 |
1964年 | 137,995 |
1963年 | 131,115 |
1962年 | 142,591 |
1961年 | 142,591 |
オーストラリアのトマト生産量の推移を見ると、1961年から初めの数十年間、全体として緩やかな増加が観察されます。この時期は、農業技術の改良や農地面積の拡大、国内市場の需要増加が背景にあったと思われます。その後、1980年代から1990年代にかけて急激な成長が見られ、特に1990年には32万トンを超え、2000年代初頭のピークに向けて生産量が急増しています。これは、農業の機械化や灌漑技術の普及、また輸出市場の拡大が主因と考えられます。
しかしながら、2001年の556,240トンという最高生産量を記録した後、2007年以降大幅な減少が確認されます。この年、地球規模での気候変動の影響が目に見え始め、オーストラリアは深刻な干ばつに見舞われました。特に水資源の管理が難しい地域ではトマト栽培に多大な影響が及びました。また、グローバル市場における競争の激化や、安価な輸入トマトの台頭も国内生産に圧力を与えたと考えられます。
2010年以降には一時的な回復傾向が見られるものの、全体としては減少または横ばい傾向が続いています。特に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年以降は、生産量が30万トン前後に停滞しており、これには労働力不足や物流の問題が絡んでいると推測されます。
トマト生産量の推移を分析すると、以下の課題が浮かび上がります。まず、気候変動による干ばつや高温の頻発が安定した生産を阻害しています。さらに、輸出入市場での競争激化は、国内農家の利益を圧迫する要因となっています。特に安価な中国やインドからのトマト類の流入が、オーストラリア国内の生産コストと比べて一層厳しい選択を強いられています。
このような状況を受け、オーストラリアが取るべき対策として、農業技術のさらなる進化が重要です。具体的には、持続可能な灌漑技術や気候適応型品種の開発が必要です。また、輸出市場の多国間協議を強化し、自国産トマトの有利な市場位置を確保することが求められます。さらに、政府主体での農家支援政策、例えば補助金制度や水資源利用の優遇措置を進めるとともに、国内消費キャンペーンを通じて需要を喚起するのもひとつの方法です。
特筆すべきは、近年のトマト生産において垂直農業のような新しい栽培方式が注目を集めていることです。この技術は限られた土地や水資源で高収量を実現する可能性があり、オーストラリアの厳しい気候条件を克服する選択肢として期待されています。
全体としてオーストラリアのトマト生産量は時代とともに多くの挑戦に直面してきましたが、技術革新や市場の工夫を通じて未来の生産性向上が期待されます。国際的な市場変動や地政学的なリスクを俯瞰しつつ、持続可能性を見据えた農業政策を進めることが重要です。