Food and Agriculture Organization(FAO)による最新データによると、オーストラリアのヤギ肉生産量は、1961年には250トンと非常に限定的な規模から始まり、その後急激な成長と変動を見せてきました。特に1980年代後半から2000年代にかけて著しい増加が見られ、その後も変動しながら現在に至ります。2023年には37,772トンを記録し、過去最高の生産量を達成しました。このデータからは、オーストラリアにおけるヤギ肉の需要の変化や産業構造の変遷、さらには地政学的要因や市場の影響が読み取れます。
オーストラリアのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 37,772 |
32.71% ↑
|
2022年 | 28,463 |
38.15% ↑
|
2021年 | 20,603 |
17.64% ↑
|
2020年 | 17,513 |
-21.75% ↓
|
2019年 | 22,381 |
-4.31% ↓
|
2018年 | 23,388 |
-29.13% ↓
|
2017年 | 33,000 |
-0.99% ↓
|
2016年 | 33,330 |
3.24% ↑
|
2015年 | 32,285 |
-1.91% ↓
|
2014年 | 32,913 |
3.95% ↑
|
2013年 | 31,663 |
6.22% ↑
|
2012年 | 29,809 |
5.08% ↑
|
2011年 | 28,368 |
7.24% ↑
|
2010年 | 26,452 |
3.01% ↑
|
2009年 | 25,680 |
47.9% ↑
|
2008年 | 17,363 |
6.96% ↑
|
2007年 | 16,233 |
-12.66% ↓
|
2006年 | 18,585 |
0.78% ↑
|
2005年 | 18,441 |
7.35% ↑
|
2004年 | 17,178 |
11.07% ↑
|
2003年 | 15,466 |
4.81% ↑
|
2002年 | 14,756 |
41.44% ↑
|
2001年 | 10,433 |
-1.81% ↓
|
2000年 | 10,625 |
25% ↑
|
1999年 | 8,500 |
4.62% ↑
|
1998年 | 8,125 |
-9.72% ↓
|
1997年 | 9,000 |
-10% ↓
|
1996年 | 10,000 | - |
1995年 | 10,000 |
-9.09% ↓
|
1994年 | 11,000 |
-4.35% ↓
|
1993年 | 11,500 | - |
1992年 | 11,500 |
24.32% ↑
|
1991年 | 9,250 |
17.46% ↑
|
1990年 | 7,875 |
28.57% ↑
|
1989年 | 6,125 |
-7.55% ↓
|
1988年 | 6,625 |
42.47% ↑
|
1987年 | 4,650 |
-0.53% ↓
|
1986年 | 4,675 |
835% ↑
|
1985年 | 500 |
11.11% ↑
|
1984年 | 450 |
12.5% ↑
|
1983年 | 400 | - |
1982年 | 400 | - |
1981年 | 400 |
6.67% ↑
|
1980年 | 375 | - |
1979年 | 375 | - |
1978年 | 375 | - |
1977年 | 375 | - |
1976年 | 375 | - |
1975年 | 375 | - |
1974年 | 375 | - |
1973年 | 375 | - |
1972年 | 375 |
32.74% ↑
|
1971年 | 283 |
13% ↑
|
1970年 | 250 | - |
1969年 | 250 | - |
1968年 | 250 | - |
1967年 | 250 | - |
1966年 | 250 | - |
1965年 | 250 | - |
1964年 | 250 | - |
1963年 | 250 | - |
1962年 | 250 | - |
1961年 | 250 | - |
オーストラリアのヤギ肉生産量の歴史を見てみると、1960年代から1970年代の初期までは、毎年250トン前後で安定していました。この低い生産量は、当時の国内市場や輸出需要が限定的だったことを示しています。しかし、1971年に生産量が283トンまで増加し、さらに1972年には375トンへ増加したことは、ヤギ肉に対する市場関心の変化や飼育技術の向上が始まりつつある兆候といえます。
1980年代後半にかけ、ヤギ肉の生産量は急増しました。1986年にはわずか1年で4,675トンに達し、その後、1990年代を通じて10,000トンを超える産業規模へと成長しました。この拡大の背景には、アジアや中東を中心とした海外市場の需要増加が挙げられます。ヤギ肉は、特定の文化や宗教的背景で好まれる食材としての重要性が高く、世界市場での需要は一貫して増加する傾向にあります。オーストラリアがこの需要を取り込む形で、輸出ビジネスに力を入れた結果、急成長が見られます。
特に2000年代になると、14,756トン(2002年)から18,441トン(2005年)へと、増加基調が顕著になります。この時期には、オーストラリアの農業政策やヤギ飼育技術、輸出インフラが次第に整備され、ヤギ肉産業が一つの成熟段階に入ったことが分かります。
一方、2018年から2020年までの間には生産量の減少が見られ、2020年には17,513トンにまで減少しました。この下降の背景には、干ばつや森林火災といった自然災害が農業全般に深刻な影響を与えた可能性が高いです。また、新型コロナウイルスの世界的な流行により輸出や物流に混乱が生じたことも要因と考えられます。しかし、それを経て2022年には28,463トン、2023年には37,772トンへ急回復しています。この急激な回復は、輸出需要の着実な増加に加えて、国内の生産基盤が復旧しつつあることを示しています。
地域的な課題としては、オーストラリア国内でのヤギ肉の消費が依然として限定的であることが挙げられます。これは主に、オーストラリアの食文化が牛肉や羊肉を主軸としているためで、ヤギ肉は輸出市場に大きく依存している現状があります。この傾向を考えると、輸出先の国々の経済や政治情勢がダイレクトに影響を与えるリスクをはらんでいます。例えば、アジアや中東市場での需要の変化や、地政学的リスク、貿易摩擦などが挙げられるでしょう。
今後の成長を持続的なものとするためには、いくつかの対策が必要です。具体的には、まず輸出市場の多様化が挙げられます。アジアや中東以外の地域、例えばヨーロッパやアメリカといった先進国市場における認知度や需要を拡大することが重要です。次に、国内消費の拡大を目指し、ヤギ肉の栄養価や調理法に関する普及啓発を進めることが考えられます。さらに、自然災害への脆弱性を低減するため、気候変動に対応した農業技術の導入や、食肉加工施設などの強化が求められます。
結論として、オーストラリアのヤギ肉生産量は過去数十年にわたり大きな成長を遂げていますが、依然として多くの課題が残っています。輸出市場の多様性確保と国内消費の促進、さらには気候変動への対応策を講じることで、持続可能な産業の実現が期待されます。この取り組みは、FAOを通じた国際協力や国内農業政策の見直しとも連動する形で行われるべきといえるでしょう。