国際連合食糧農業機関が2024年7月に発表した最新データによると、オーストラリアの鶏卵生産量は数十年にわたり一定の増減を繰り返しながらも、近年では総じて増加傾向を見せてきました。特に2018年以降、歴史的な高水準に達する傾向が観察されます。ただし、2022年には大幅な減少が見られる一方、2023年には部分的な回復を示しており、生産量の波動には外的要因が大きく影響を与えていることが伺えます。
オーストラリアの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 245,474 |
8.62% ↑
|
2022年 | 225,991 |
-16.03% ↓
|
2021年 | 269,137 |
11.54% ↑
|
2020年 | 241,295 |
-5.57% ↓
|
2019年 | 255,527 |
-1.31% ↓
|
2018年 | 258,928 |
4.58% ↑
|
2017年 | 247,579 |
4.61% ↑
|
2016年 | 236,662 |
3.22% ↑
|
2015年 | 229,278 |
-1.04% ↓
|
2014年 | 231,686 |
-3.83% ↓
|
2013年 | 240,925 |
12.22% ↑
|
2012年 | 214,686 |
4.62% ↑
|
2011年 | 205,200 |
17.93% ↑
|
2010年 | 174,000 |
9.21% ↑
|
2009年 | 159,328 |
-0.42% ↓
|
2008年 | 160,000 |
-1.05% ↓
|
2007年 | 161,700 |
-5.6% ↓
|
2006年 | 171,300 |
23.59% ↑
|
2005年 | 138,600 |
5% ↑
|
2004年 | 132,000 |
1.23% ↑
|
2003年 | 130,400 |
-6.52% ↓
|
2002年 | 139,500 |
-1.06% ↓
|
2001年 | 141,000 |
-1.4% ↓
|
2000年 | 143,000 |
-4.03% ↓
|
1999年 | 149,000 |
0.68% ↑
|
1998年 | 148,000 |
7.01% ↑
|
1997年 | 138,300 |
1.92% ↑
|
1996年 | 135,700 |
-1.81% ↓
|
1995年 | 138,200 |
-2.61% ↓
|
1994年 | 141,900 |
0.07% ↑
|
1993年 | 141,800 |
1.36% ↑
|
1992年 | 139,900 |
-12.83% ↓
|
1991年 | 160,500 |
-14.63% ↓
|
1990年 | 188,000 |
0.53% ↑
|
1989年 | 187,000 |
1.63% ↑
|
1988年 | 184,000 |
-2.13% ↓
|
1987年 | 188,000 |
1.08% ↑
|
1986年 | 186,000 | - |
1985年 | 186,000 |
-5.58% ↓
|
1984年 | 197,000 |
-3.62% ↓
|
1983年 | 204,389 |
2.54% ↑
|
1982年 | 199,324 |
-1.99% ↓
|
1981年 | 203,371 |
4.51% ↑
|
1980年 | 194,600 |
-0.53% ↓
|
1979年 | 195,640 |
-2.53% ↓
|
1978年 | 200,712 |
4.18% ↑
|
1977年 | 192,663 |
-1.85% ↓
|
1976年 | 196,300 |
-0.7% ↓
|
1975年 | 197,678 |
4.58% ↑
|
1974年 | 189,021 |
-2.15% ↓
|
1973年 | 193,166 |
-4.12% ↓
|
1972年 | 201,466 |
3.17% ↑
|
1971年 | 195,275 |
5.75% ↑
|
1970年 | 184,661 |
5.46% ↑
|
1969年 | 175,100 |
1.63% ↑
|
1968年 | 172,300 |
6.49% ↑
|
1967年 | 161,800 |
4.25% ↑
|
1966年 | 155,200 |
1.44% ↑
|
1965年 | 153,000 |
6.99% ↑
|
1964年 | 143,000 |
1.42% ↑
|
1963年 | 141,000 |
-3.89% ↓
|
1962年 | 146,700 |
1.66% ↑
|
1961年 | 144,300 | - |
オーストラリアの鶏卵生産量の推移は、1960年代からのデータを基に、さまざまな時代背景や経済・気候的な状況を反映しています。1961年に144,300トンから始まった記録は、1970年代初頭には200,000トンを超える成長を見せ、その後1980年代後半から1990年代初頭にかけて減少傾向に転じました。この期間では、特に1992年から1996年の間で13万トン台に低下する低迷期が観察されます。
しかし、2000年代後半以降、生産量は再び回復基調を示し始め、特に2011年以降の数年間では、継続的に20万トン以上の高い水準を記録しています。2018年には約258,928トンに達し、この時点で過去最高の記録となりました。その後も260,000トン以上の水準を維持してきましたが、2022年には225,991トンと一時的な減少が見られました。この減少は新型コロナのパンデミックによる供給チェーンや物流の混乱、また自然災害が原因である可能性が指摘されています。しかし2023年には245,474トンと回復しました。
このような生産量の波動は、オーストラリア国内外における経済や地政学的要因、さらには天候や動物の飼育環境に起因していると考えられます。オーストラリアの農業は地理的な制約と直面しており、干ばつや洪水といった自然災害が直接的に生産能力に影響を及ぼします。また、環境保護や動物福祉に対する国際規制が進展する中、従来の生産方式から持続可能な形態への転換も進みつつあります。
比較として、近隣国である中国やインドの卵生産量が大規模かつ巨大な市場に支えられて急増している一方で、オーストラリアは国内需要と輸出のバランスを重視した生産体制を維持しています。これにより、鶏卵の単価は近隣諸国に比べて高水準を保ちつつ、品質管理やブランド化にも注力されています。
今後の課題としては、気候変動が引き起こす不安定な天候条件や、国際的な競争の激化が挙げられます。特に洪水や干ばつといった極端な気象パターンの影響を最小限に抑えるため、生産設備の強化や効率化が求められます。また、動物福祉に関する規制強化に対応した飼養方法の導入も、持続可能な農業の確立という観点から重要です。
政策面では、農家への補助金の提供や、気候変動に対応するための革新的な技術開発への支援が鍵を握ります。また、輸出市場におけるブランド価値を高めるためのマーケティング強化や、輸送インフラの改善も検討すべきです。さらに、国際的な協力の枠組みを通じ、他地域との知見の共有や貿易の円滑化を推進することも、オーストラリアにとっての成長機会となるでしょう。
これらを総合すると、オーストラリアの鶏卵生産は将来的にも安定した供給と質の維持のために、環境や経済、社会的課題に適応する柔軟な姿勢が重要であると言えます。