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オーストラリアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新データによると、オーストラリアの羊肉生産量は1961年以降、数十年間の変動を経て、2023年には849,249トンに達し、この期間の最高値を記録しました。特に近年は不安定な気候条件や輸出需要の影響を受けながらも、内外の需要を反映した増加傾向が顕著です。生産量は1960年代から1970年代初頭にかけて急増した後、1970年代中盤から減少に転じ、その後も断続的な上下を繰り返しています。また、ここ数年の回復基調と2023年の記録的な生産量の背後には、国際的な食肉需要の増大や国内の畜産業の効率化が関係していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 849,249
20.14% ↑
2022年 706,905
6.63% ↑
2021年 662,973
-1.89% ↓
2020年 675,735
-7.6% ↓
2019年 731,281
-0.72% ↓
2018年 736,557
10% ↑
2017年 669,604
-6.02% ↓
2016年 712,525
-1.18% ↓
2015年 721,053
0.06% ↑
2014年 720,600
9.11% ↑
2013年 660,437
19.12% ↑
2012年 554,434
7.32% ↑
2011年 516,608
-6.95% ↓
2010年 555,206
-12.58% ↓
2009年 635,110
-3.7% ↓
2008年 659,512
-3.52% ↓
2007年 683,573
9.26% ↑
2006年 625,629
5.12% ↑
2005年 595,185
6.09% ↑
2004年 561,000
-6.03% ↓
2003年 597,000
-7.3% ↓
2002年 644,000
-9.93% ↓
2001年 715,000
5.15% ↑
2000年 680,000
8.22% ↑
1999年 628,375
1.98% ↑
1998年 616,189
8.78% ↑
1997年 566,431
-1.37% ↓
1996年 574,298
-7.6% ↓
1995年 621,558
-4.01% ↓
1994年 647,520
0.64% ↑
1993年 643,377
-3.53% ↓
1992年 666,891
-0.3% ↓
1991年 668,883
6.54% ↑
1990年 627,798
15.53% ↑
1989年 543,423
-7.28% ↓
1988年 586,081
0.34% ↑
1987年 584,119
1.01% ↑
1986年 578,258
12.18% ↑
1985年 515,492
10.89% ↑
1984年 464,866
-12.33% ↓
1983年 530,217
3.78% ↑
1982年 510,916
-11.64% ↓
1981年 578,200
5.41% ↑
1980年 548,500
11.62% ↑
1979年 491,400
-4.33% ↓
1978年 513,620
-6.49% ↓
1977年 549,261
-6.54% ↓
1976年 587,720
11.49% ↑
1975年 527,148
12.77% ↑
1974年 467,472
-34.47% ↓
1973年 713,395
-25.4% ↓
1972年 956,328
15.89% ↑
1971年 825,236
9.31% ↑
1970年 754,925
11.06% ↑
1969年 679,737
2.29% ↑
1968年 664,497
11.41% ↑
1967年 596,421
-1.98% ↓
1966年 608,439
2.39% ↑
1965年 594,223
-0.15% ↓
1964年 595,127
-1.3% ↓
1963年 602,984
1.12% ↑
1962年 596,276
2.19% ↑
1961年 583,525 -

オーストラリアの羊肉生産量は、長期的な視点で見ると、地政学的背景、国内外の経済状況、そして気候変動の影響を大きく受けてきました。1960年代から1970年代にかけて、オーストラリアは羊毛生産大国としての地位を確立しつつありましたが、同時に羊肉生産も成長期を迎えました。しかしながら、1973年以降の世界的な景気後退や羊毛市場の変動、さらに1970年代中ごろの干ばつの影響により、羊肉の生産量は一時的に減少。この時期、1974年には467,472トンと記録的な低水準にまで落ち込みました。

その後、1980年代から1990年代にかけては、部分的な回復が見られましたが、持続成長は達成されませんでした。主な理由として、干ばつや市場での競争の激化が挙げられます。また、この時期には牛肉や豚肉など他の畜産物への需要シフトが進んだことも影響したとされています。特に1994年以降のデータでは、年間約60万トン前後で大きな変動が少ない状態が続きました。

近年の動向を見ると、2023年に849,249トンという過去最高の生産量に達しており、これは数年前からの国内外の消費増加や輸出需要の強化が原動力となっています。特に、アジア市場、特に中国、韓国、日本などの近隣諸国における食肉需要の拡大は、羊肉の価値を押し上げ、オーストラリア産羊肉の輸出量を支える重要な要因となっています。また、国内では持続可能な農業手法や技術革新が進み、生産効率の向上が実現されました。

しかし、このような記録的な生産には課題も少なくありません。まず、気候変動による影響は依然として重大です。干ばつや豪雨の頻度と強度が増すことで、牧草地の品質が低下し、更に飼育コストが上昇する可能性があります。また、諸外国との貿易摩擦や防疫の強化など、地政学的なリスクも無視することができません。例えば、新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に物流網の滞留が発生し、羊肉の流通に困難が生じたケースが報告されました。

これらの課題に対処するためには、具体的な政策が必要です。まず、気候変動に対応するための持続可能な農業技術の導入が挙げられます。干ばつ耐性のある牧草種の開発や、効率的な水資源管理が生産のリスクを軽減するでしょう。さらに、国際市場をターゲットとした輸出戦略の強化が重要になります。例えば、アジア市場におけるオーストラリア産羊肉のブランド価値をさらに高めるためのマーケティング戦略の構築が効果的と考えられます。

結論として、オーストラリアの羊肉生産量の増加は、国内外の需要増大と畜産効率化の成果を反映したものであり、今後もその傾向が続くことが期待されます。ただし、これには多くの課題も伴うため、気候変動への適応や輸出市場の拡大といった具体的な戦略が求められます。オーストラリアがこれらの課題を克服し、引き続き国際的に競争力のある羊肉生産国であり続けるためには、官民連携による積極的な取り組みが必要でしょう。