Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、オーストラリアの馬肉生産量は1961年から2023年にかけて大きな変動をみせています。1960年代には約14,000トンを記録し、その後一時的に減少するものの、1980年代から1990年代にかけて再び増加傾向に転じ、特に2000年代以降は安定した水準を維持していました。しかし、2020年以降は緩やかな減少の兆しが見られる中、2023年には一気に約29,831トンへと回復しています。この増加の背景には様々な要因が関与していると考えられます。
オーストラリアの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 29,831 |
20.76% ↑
|
2022年 | 24,703 |
-2.72% ↓
|
2021年 | 25,393 |
-3.28% ↓
|
2020年 | 26,256 |
-3.47% ↓
|
2019年 | 27,200 |
-2.7% ↓
|
2018年 | 27,956 |
0.64% ↑
|
2017年 | 27,778 |
-1.71% ↓
|
2016年 | 28,262 |
0.24% ↑
|
2015年 | 28,195 |
0.7% ↑
|
2014年 | 28,000 |
2.04% ↑
|
2013年 | 27,440 |
3.16% ↑
|
2012年 | 26,600 |
1.06% ↑
|
2011年 | 26,320 |
2.17% ↑
|
2010年 | 25,760 | - |
2009年 | 25,760 | - |
2008年 | 25,760 |
1.1% ↑
|
2007年 | 25,480 |
3.41% ↑
|
2006年 | 24,640 |
15.79% ↑
|
2005年 | 21,280 | - |
2004年 | 21,280 | - |
2003年 | 21,280 | - |
2002年 | 21,280 | - |
2001年 | 21,280 | - |
2000年 | 21,280 | - |
1999年 | 21,280 | - |
1998年 | 21,280 |
-2.56% ↓
|
1997年 | 21,840 | - |
1996年 | 21,840 |
-2.5% ↓
|
1995年 | 22,400 | - |
1994年 | 22,400 | - |
1993年 | 22,400 |
2.56% ↑
|
1992年 | 21,840 | - |
1991年 | 21,840 |
5.41% ↑
|
1990年 | 20,720 |
13.85% ↑
|
1989年 | 18,200 |
-16.67% ↓
|
1988年 | 21,840 |
-21.69% ↓
|
1987年 | 27,888 | - |
1986年 | 27,888 |
21.46% ↑
|
1985年 | 22,960 | - |
1984年 | 22,960 | - |
1983年 | 22,960 |
9.77% ↑
|
1982年 | 20,916 |
-1.32% ↓
|
1981年 | 21,196 |
152.33% ↑
|
1980年 | 8,400 |
25% ↑
|
1979年 | 6,720 |
9.09% ↑
|
1978年 | 6,160 | - |
1977年 | 6,160 |
4.76% ↑
|
1976年 | 5,880 |
-8.7% ↓
|
1975年 | 6,440 | - |
1974年 | 6,440 |
2.22% ↑
|
1973年 | 6,300 |
2.27% ↑
|
1972年 | 6,160 | - |
1971年 | 6,160 | - |
1970年 | 6,160 |
-24.14% ↓
|
1969年 | 8,120 |
16% ↑
|
1968年 | 7,000 |
-21.88% ↓
|
1967年 | 8,960 |
-20% ↓
|
1966年 | 11,200 |
14.29% ↑
|
1965年 | 9,800 |
-16.67% ↓
|
1964年 | 11,760 |
-4.55% ↓
|
1963年 | 12,320 |
-15.38% ↓
|
1962年 | 14,560 |
-1.89% ↓
|
1961年 | 14,840 | - |
オーストラリアの馬肉生産量の推移を見ると、1960年代から1970年代にかけては減少傾向が顕著でした。これは、国内需要の減少や輸出市場の競争激化などが影響したと推測されます。特に1968年から1971年にかけて、年間生産量は約6,000トン程度にまで低下していました。しかし、1980年代初頭に大幅な増加が見られ、その生産量は22,000トンを超える水準へと達しました。この背景には海外需要の拡大や、オーストラリアの農業技術の向上が寄与したと考えられます。
2000年代以降、馬肉生産量は安定した水準を維持する一方で、2014年には28,000トンに達し、2015年以降も上向きの傾向が続きました。この時期の背景には、特定の市場での需要増加が挙げられます。例えば、ヨーロッパやアジア市場での馬肉消費の安定した需要や、輸出先としてのオーストラリア産馬肉の信頼性が高まったことが影響していると考えられます。
ところが、2020年から2022年にかけては生産量が徐々に減少に転じ、約24,703トンまで落ち込んでいます。この時期は世界的な新型コロナウイルス感染症の流行に伴う輸出制限や、国内の畜産業への影響が影を落とした可能性があります。また、気候変動による干ばつや洪水といった自然災害も、牧草供給や畜産業全般における課題として浮き彫りとなりました。しかし2023年には、生産量が約29,831トンへ急回復しており、これは生産技術の改善や輸出市場の需要復活が大きく影響していると見られます。
こうした推移にはいくつかの課題が浮き彫りとなります。まず、オーストラリアの馬肉生産は輸出市場への依存度が非常に高く、国際市場での需要や規制変化に大きく左右される点です。特にヨーロッパやアジア市場の政策変更や消費嗜好の変化は、生産者に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、動物福祉や持続可能性に対する関心の高まりから、一部の消費者や国々では馬肉そのものへの倫理的懸念が広がりつつあります。
将来的な課題としては、持続可能な生産管理体制の確立が重要となるでしょう。例えば、家畜の飼料供給の安定化を図るために、地域全体で効率的な水資源利用や牧草管理を進めるべきです。また、輸出市場の多様化を進めることも有効です。これにより、特定の市場への依存度を下げ、不測のリスクを軽減することができます。さらに、馬肉製品に関するマーケティング戦略を強化することで、消費国における認識向上を図ることも必要です。
オーストラリア政府および関連機関は、国内の畜産業を支援するため、さらに包括的な政策を検討する必要があります。具体的には、自然災害や疫病からの回復を早めるための支援金や、輸出市場での貿易利便性を向上させるための貿易合意の強化が挙げられます。また、地政学的リスクや国際的な環境規制の変化を見据えながら、柔軟かつ戦略的な対応を続けることが肝要です。
結論として、オーストラリアの馬肉生産は長期的な安定を保ちながらも、地政学的条件や環境変動の影響を受けやすい産業であることがわかります。そのため、多様性を持った輸出構造の構築や、生産における持続可能性の改善を目指すことが重要です。国際的な協力と国内政策の調整を通じて、馬肉産業の成長と安定を確保する努力が求められるでしょう。