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オーストラリアのオリーブ油生産量推移(1961年~2021年)

オーストラリアのオリーブ油生産量は、1961年の97トンから2021年の22,600トンと、長期的に見ると顕著な増加を見せています。1980年代までは100トン前後で安定していましたが、1990年代後半以降に急激に増加し、特に2000年代後半から2010年にかけて飛躍的な成長を遂げています。2008年には5,400トン、2010年には18,000トンと大幅に伸び、近年では20,000トン前後の高水準で推移しています。一方で、気候変動や地政学的リスクと生産量の変動は密接な関係があり、2020年には10,200トンと一時的な減少も見られます。

年度 生産量(トン) 増減率
2021年 22,600
121.57% ↑
2020年 10,200
-45.45% ↓
2019年 18,700
-10.1% ↓
2018年 20,800
-0.95% ↓
2017年 21,000
4.48% ↑
2016年 20,100
2.55% ↑
2015年 19,600
38.03% ↑
2014年 14,200
40.59% ↑
2013年 10,100
-31.29% ↓
2012年 14,700
-16.95% ↓
2011年 17,700
-1.67% ↓
2010年 18,000
219.21% ↑
2009年 5,639
4.43% ↑
2008年 5,400
110.07% ↑
2007年 2,571
35.44% ↑
2006年 1,898
-8.47% ↓
2005年 2,074
252.26% ↑
2004年 589
104.98% ↑
2003年 287
77.28% ↑
2002年 162
-24.05% ↓
2001年 213
69.65% ↑
2000年 126
-41.89% ↓
1999年 216
110.06% ↑
1998年 103
78.26% ↑
1997年 58
-19.75% ↓
1996年 72
-11.11% ↓
1995年 81
-3.85% ↓
1994年 84
16.85% ↑
1993年 72
-14.15% ↓
1992年 84
36.4% ↑
1991年 62
28.09% ↑
1990年 48
2.1% ↑
1989年 47
-12.4% ↓
1988年 54
22.84% ↑
1987年 44
-62.15% ↓
1986年 116
-15.53% ↓
1985年 137
3.05% ↑
1984年 133
69.93% ↑
1983年 78
-68.87% ↓
1982年 251
81.39% ↑
1981年 138 -
1980年 138
-48.77% ↓
1979年 270
10.13% ↑
1978年 245
37.51% ↑
1977年 178
-36.99% ↓
1976年 283
58.87% ↑
1975年 178
-21.5% ↓
1974年 227
0.72% ↑
1973年 225
9.64% ↑
1972年 205
1.2% ↑
1971年 203
16.35% ↑
1970年 175
-13.55% ↓
1969年 202
2.47% ↑
1968年 197
66.59% ↑
1967年 118
-25.43% ↓
1966年 159
66.54% ↑
1965年 95
-34.97% ↓
1964年 146
54.07% ↑
1963年 95
10.23% ↑
1962年 86
-11.3% ↓
1961年 97 -

オーストラリアのオリーブ油生産量の長期的推移を見ると、最初の20年間(1961年~1980年)では生産量は100トン前後で大きな変動はありませんでした。1990年代に入っても依然として低水準でしたが、1999年の216トンを境に増加基調に転じ、2000年代以降はオリーブ栽培技術の進展や農地拡張、オリーブ油への需要拡大を背景に生産量が急増しました。その中で2005年の2,000トン台、2008年の5,400トン台、そして2010年の18,000トン到達と、オーストラリアのオリーブ油産業は画期的な転換点を迎えました。

この生産増加には、いくつかの背景があります。主要な要因の一つは、健康志向の高まりによるオリーブ油の国内外での需要増加です。特にオーストラリア産オリーブ油は品質の高さで評価され、輸出市場も拡大しています。また、政府や農業団体の支援を受けたオリーブ産業への投資や研究開発も重要な役割を果たしました。一方で、2000年代以降に急増した生産量は、オーストラリアが地中海諸国との市場競争を繰り広げる中での戦略的基盤作りを示しています。

しかし近年、特に2019年以降のデータを見ると、変動が大きくなっていることが分かります。2020年に一時的に10,200トンまで減少したのは、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴うロジスティクスの混乱、労働力不足、さらにはオーストラリア国内の干ばつや山火事といった気候災害による影響が重なったためと解釈できます。このように、環境や政策、市場の変化が生産に直接影響を与えていると考えられます。

今後の課題としては、まず気候変動への適応が挙げられます。オリーブ栽培は乾燥地域での栽培が可能な一方で、高温や水不足には影響を受けやすいため、灌漑システムの改良や耐乾性の強い品種の導入が重要です。また、生産が過剰になる年には市場価格が下落しやすく、生産者の収益安定が課題となるため、持続可能な生産システムとともに、マーケティング戦略の強化も必要です。

さらに、オーストラリア国内外の市場動向を見ると、イタリアやスペインといった主要生産国との競争だけでなく、近隣のアジア市場への輸出拡大も戦略的に検討するべきです。特に中国や日本、韓国では近年オリーブ油の需要が増加しており、これらの市場でのプレゼンスを高めることが競争力向上につながると考えられます。

また、オリーブ油産業には地政学的リスクも影響します。特にオリーブ油の主要な輸出市場であるヨーロッパが経済変動や政治的不安定に見舞われた場合、その影響がオーストラリアの輸出産業に波及する可能性があります。そのため、地域を超えた中長期的な貿易戦略の策定も重要です。

結論として、オーストラリアのオリーブ油生産量は、他国に比べると依然として小規模ではありますが、急速な成長を遂げてきた分野です。国際食糧農業機関のデータが示すように、増加基調を維持しながらも、各種課題に対応することが産業の持続的発展に必要です。具体的な対策としては、耐気候性品種の開発、国内外市場の開拓、サプライチェーンの強化などが挙げられます。今後、このような努力が実を結び、オーストラリアが高品質なオリーブ油の主要生産国として認知される日が期待されます。