国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、オーストラリアにおけるアボカド生産量は長期的に顕著な増加を見せています。1961年には400トンであった生産量は、2023年には115,385トンまで成長しました。1970年代には停滞や変動が見られましたが、1980年以降から持続的な上昇傾向に転じています。特に2000年代後半以降の成長率が著しく、近年ではアボカド需要増加に対応した生産拡大が背景にあります。
オーストラリアのアボカド生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 115,385 |
33.9% ↑
|
2022年 | 86,171 |
0.21% ↑
|
2021年 | 85,986 |
11.24% ↑
|
2020年 | 77,295 |
-2.81% ↓
|
2019年 | 79,533 |
25.28% ↑
|
2018年 | 63,486 |
12.36% ↑
|
2017年 | 56,501 |
-16.42% ↓
|
2016年 | 67,600 |
36.85% ↑
|
2015年 | 49,397 |
12.35% ↑
|
2014年 | 43,969 |
-17.01% ↓
|
2013年 | 52,982 |
8.23% ↑
|
2012年 | 48,951 |
34.76% ↑
|
2011年 | 36,325 |
-14.5% ↓
|
2010年 | 42,486 |
10.42% ↑
|
2009年 | 38,478 |
-14.49% ↓
|
2008年 | 45,000 |
-4.74% ↓
|
2007年 | 47,238 |
37.11% ↑
|
2006年 | 34,452 |
5.57% ↑
|
2005年 | 32,634 |
-22.11% ↓
|
2004年 | 41,897 |
3.37% ↑
|
2003年 | 40,531 |
42.29% ↑
|
2002年 | 28,485 |
-4.52% ↓
|
2001年 | 29,834 |
24.43% ↑
|
2000年 | 23,976 |
-1.38% ↓
|
1999年 | 24,311 |
20.51% ↑
|
1998年 | 20,174 |
0.51% ↑
|
1997年 | 20,072 |
22.27% ↑
|
1996年 | 16,416 |
4.96% ↑
|
1995年 | 15,640 |
11.71% ↑
|
1994年 | 14,000 |
8.32% ↑
|
1993年 | 12,925 | - |
1992年 | 12,925 |
11.98% ↑
|
1991年 | 11,542 |
-3.86% ↓
|
1990年 | 12,005 |
5.18% ↑
|
1989年 | 11,414 |
3% ↑
|
1988年 | 11,082 |
13.1% ↑
|
1987年 | 9,798 |
1.01% ↑
|
1986年 | 9,700 |
38.57% ↑
|
1985年 | 7,000 |
12.9% ↑
|
1984年 | 6,200 |
14.81% ↑
|
1983年 | 5,400 |
58.82% ↑
|
1982年 | 3,400 |
41.67% ↑
|
1981年 | 2,400 |
41.18% ↑
|
1980年 | 1,700 |
21.43% ↑
|
1979年 | 1,400 |
42.86% ↑
|
1978年 | 980 |
48.04% ↑
|
1977年 | 662 |
16.14% ↑
|
1976年 | 570 |
-19.72% ↓
|
1975年 | 710 |
6.93% ↑
|
1974年 | 664 |
-3.49% ↓
|
1973年 | 688 |
-26.89% ↓
|
1972年 | 941 |
4.56% ↑
|
1971年 | 900 |
12.5% ↑
|
1970年 | 800 | - |
1969年 | 800 |
14.29% ↑
|
1968年 | 700 | - |
1967年 | 700 |
16.67% ↑
|
1966年 | 600 | - |
1965年 | 600 |
20% ↑
|
1964年 | 500 | - |
1963年 | 500 |
25% ↑
|
1962年 | 400 | - |
1961年 | 400 | - |
オーストラリアのアボカド生産は、1961年に400トンと非常に小規模で始まりました。この当初の生産量は、地域的な需要に応じたもので、国内市場への供給が主な目的となっていました。1970年代にはやや不安定な推移が見られ、気候変動の影響や農業技術の限界、さらには農産物価格の変動が主要な原因であると考えられます。しかし、1980年代には生産技術や灌漑設備の向上により、生産量が急激に増加しました。この期間で9,798トン(1987年)を超える生産規模を実現しており、この成長は国内での消費増加だけでなく、地元農家への支援や技術共有が活発化した結果とも言えます。
1990年代にはさらに成長が続き、1997年には20,000トンを突破しました。この成長の背景には、健康志向の高まりやアボカドを用いた料理の普及が市場拡大に寄与していることが挙げられます。また、2000年代以降、オーストラリア国内外でアボカドブームが到来し、それに合わせた生産者の投資や農地拡大が顕著になりました。特に2016年以降は、気候条件の安定や効率的な農業経営の影響も受け、67,600トン(2016年)、79,533トン(2019年)、85,986トン(2021年)と順調な成長を遂げています。そして直近の2023年には、記録的な115,385トンを達成しています。このような増加は、国内消費の伸びと輸出市場の拡大を反映しています。
しかし、このような急成長には課題もあります。まず、アボカド生産には大量の水資源が必要であり、灌漑施設や水供給網が気候変動の影響を受けやすい点を考慮する必要があります。特にオーストラリアのような乾燥地域では、今後の水資源確保がアボカド産業の持続可能な成長を左右します。さらに、アボカドのプランテーション増加により、森林伐採や生態系への影響が懸念される場合があります。現状の市場拡張を維持しつつ、産業の足跡(フットプリント)を小さく保つ努力が重要です。
また、アボカドの市場価格の変動にも注視する必要があります。生産量が拡大する一方で、供給過多に陥る可能性があり、それによって農家収益が圧迫される恐れがあります。この点については、需給バランスを維持するための消費促進策や輸出戦略の強化が重要です。オーストラリアでは、特にアジア市場(例:中国、日本、韓国など)に向けた輸出が成長の鍵となるでしょう。
地政学的にも、オーストラリア産アボカドの輸出は周辺国との関係性に大きく依存しています。特にアジア太平洋地域では貿易政策や関税の変動が輸出産業に直結するため、政府間での貿易協定や枠組みづくりが求められています。また、自然災害や疫病のリスクが生産量に与える影響も忘れてはならず、これに対処するための農業保険や技術支援の強化が必要です。
今後、オーストラリアがアボカド生産を持続可能に拡大するには、水資源管理の効率化、輸出先市場の多様化、さらには地域間協力の強化が不可欠です。同時に、国内外の持続可能な農業基準を遵守し、環境影響を抑えた生産方式を推進する必要があります。オーストラリア政府や農業専門機関は、これらの視点を持って長期的な戦略を立て、成長の維持と環境保全を両立させるべきです。