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オーストラリアのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に発表した最新データによると、オーストラリアのバナナ生産量は1961年から2022年までに大きな変動を見せており、特に近年では環境要因や市場需要がその推移に強く影響を与えていることが示されています。1961年の生産量が約12万トンであったのに対し、2022年には約28万トンまで増加していますが、1950年代から2022年までの間にいくつかの急激な増減が見受けられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 374,251
33.26% ↑
2022年 280,837
-18.84% ↓
2021年 346,035
-7.09% ↓
2020年 372,433
20.08% ↑
2019年 310,160
-17.05% ↓
2018年 373,931
-9.45% ↓
2017年 412,972
16.58% ↑
2016年 354,241
40.56% ↑
2015年 252,024
-0.96% ↓
2014年 254,474
-22.97% ↓
2013年 330,340
15.69% ↑
2012年 285,535
40.83% ↑
2011年 202,751
-32.9% ↓
2010年 302,173
11.75% ↑
2009年 270,393
30.59% ↑
2008年 207,061
-2.88% ↓
2007年 213,193
13.77% ↑
2006年 187,384
-29.44% ↓
2005年 265,570
3.24% ↑
2004年 257,237
-2.85% ↓
2003年 264,772
-15.49% ↓
2002年 313,314
-12.58% ↓
2001年 358,388
39.52% ↑
2000年 256,867
14.08% ↑
1999年 225,167
0.99% ↑
1998年 222,957
11.71% ↑
1997年 199,581
-9.3% ↓
1996年 220,047
5.74% ↑
1995年 208,102
-5.07% ↓
1994年 219,222
2.48% ↑
1993年 213,908
20.92% ↑
1992年 176,906
7.18% ↑
1991年 165,057
-8.45% ↓
1990年 180,290
-7.9% ↓
1989年 195,762
22.25% ↑
1988年 160,137
1.53% ↑
1987年 157,720
18.81% ↑
1986年 132,751
-8.3% ↓
1985年 144,774
-1.13% ↓
1984年 146,423
4.23% ↑
1983年 140,481
8.41% ↑
1982年 129,582
4.22% ↑
1981年 124,341
-0.62% ↓
1980年 125,123
10.6% ↑
1979年 113,132
15.67% ↑
1978年 97,808
-15% ↓
1977年 115,062
11.46% ↑
1976年 103,233
3.35% ↑
1975年 99,887
-5.59% ↓
1974年 105,797
1.14% ↑
1973年 104,600
-18.18% ↓
1972年 127,834
-3.58% ↓
1971年 132,585
1.16% ↑
1970年 131,069
4.45% ↑
1969年 125,481
-3.98% ↓
1968年 130,688
4.99% ↑
1967年 124,479
4.39% ↑
1966年 119,241
-6.64% ↓
1965年 127,719
-5.55% ↓
1964年 135,226
10.17% ↑
1963年 122,745
-0.9% ↓
1962年 123,863 -
1961年 123,863 -

データから見えるオーストラリアのバナナ生産量の推移は、農業技術の進展、市場需要の変動、自然災害の影響など、複数の要因が複雑に絡み合った結果を物語っています。1961年には約12万トンの生産量でスタートしたものの、1980年代に入ると徐々に生産規模が拡大し、1988年には16万トンを超え、1990年代後半から2000年代初頭にかけて一気に25万トン前後まで成長しました。特筆すべきは2001年の35万8千トンという突出した増加であり、この頃はおそらく技術革新や農業政策の強化が背景にあると考えられます。

しかしその一方で、急激な生産量の上下動が目立つのもこのデータの特徴です。例えば、2006年にはバナナ生産量が18万トン台まで急激に落ち込んでいます。この減少は、同年に発生したサイクロン「ラリー」の影響と関連しているとされています。熱帯性気候の多い地域特有の自然災害の脅威が、農作物の安定的な供給に直接的な影響を及ぼすことを示す好例です。

また、2013年から2018年にかけて、オーストラリアのバナナ生産量は概ね30万〜40万トンの間で推移していましたが、その後2022年には28万トン台まで減少しています。この減少は、コロナ禍による労働力不足や、世界的な輸送コストの上昇が部分的に影響している可能性があります。加えて、近年の気候変動により気温や降水量の極端な変動が増えたことも、作物の収量に影響を与えている一因と推察されます。

オーストラリアと他国の比較においては、日本はバナナの自国生産がほとんどないため輸入に頼っていますが、中国やインドのような国では自国の大規模農地を活用して国内需要を賄うとともに、輸出による収益も上げています。このような状況を鑑みると、オーストラリアのバナナ産業は地域市場での競争力をさらに高めるため、収量の安定化を図る必要があります。

解決策としてはまず、気候リスクの軽減に向けた農業インフラの強化が挙げられます。例えば温室内での栽培システムや耐久性の高い品種の開発を進めることで、台風や旱魃への備えを強化できます。また、労働力確保については、労働者ビザを拡大し、海外からの季節労働者を積極的に受け入れることで柔軟性を持たせることが重要です。さらに、オーストラリア国内だけでなく、アジア市場などの近隣国市場をターゲットに輸出ルートを拡大させることも、中長期的な発展に寄与すると考えられます。

加えて、地政学的背景では気候変動の進行や国際的な輸送コスト上昇が、今後オーストラリアの農業全体に与える影響が懸念されています。特に熱帯性地域に位置するバナナの主要生産地では、シベリア高気圧の影響や極端な気候動向による生育環境の変化が予想されています。このため、国や国際機関との連携を深め、温暖化の緩和や災害時の早急な支援体制を構築することが不可欠です。

結論として、オーストラリアのバナナ産業は長期的には成長可能性を秘めていますが、現在の不安定な生産量の推移を解消するには、環境対応や労働力強化、市場多様化などの課題を解決する必要があります。政府や業界団体、さらには国際協力を通じてこれらの課題に取り組むことで、持続可能かつ競争力のあるバナナ産業を実現できるでしょう。