Skip to main content

オーストラリアのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、オーストラリアのさくらんぼ生産量は1961年以降、大きな変動を見せてきました。1960年代から1980年代にかけては年間7,000トン前後でしたが、1990年代以降には生産量が一時的に減少傾向を示し、その後2000年代後半から急速に増加しました。特に2013年の17,720トンや2016年の18,374トンなど、近年では記録的な生産量を達成した年もあります。2021年には21,310トンと過去最高を記録しましたが、直近の2023年には15,114トンへ減少しました。このような長期的データから、気候や経済、農業技術の影響を反映した動向が見てとれます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 15,114
-19.68% ↓
2022年 18,818
-11.69% ↓
2021年 21,310
47.22% ↑
2020年 14,475
-9.19% ↓
2019年 15,941
-0.14% ↓
2018年 15,964
38.43% ↑
2017年 11,532
-37.24% ↓
2016年 18,374
18.18% ↑
2015年 15,547
22.48% ↑
2014年 12,694
-28.36% ↓
2013年 17,720
52.69% ↑
2012年 11,605
10.79% ↑
2011年 10,475
-11.31% ↓
2010年 11,811
-13.96% ↓
2009年 13,727
40.07% ↑
2008年 9,800
0.72% ↑
2007年 9,730
-0.54% ↓
2006年 9,783
19.35% ↑
2005年 8,197
0.28% ↑
2004年 8,174
-13.59% ↓
2003年 9,460
41.15% ↑
2002年 6,702
-21.01% ↓
2001年 8,485
45.42% ↑
2000年 5,835
-3.07% ↓
1999年 6,020
-13.82% ↓
1998年 6,985
4.52% ↑
1997年 6,683
39.72% ↑
1996年 4,783
-17.05% ↓
1995年 5,766
-9.91% ↓
1994年 6,400
26.91% ↑
1993年 5,043
5.92% ↑
1992年 4,761
-11.78% ↓
1991年 5,397
14.63% ↑
1990年 4,708
21.31% ↑
1989年 3,881
-15.02% ↓
1988年 4,567
12.93% ↑
1987年 4,044
2.43% ↑
1986年 3,948
3.13% ↑
1985年 3,828
10.41% ↑
1984年 3,467
-17.16% ↓
1983年 4,185
-23.17% ↓
1982年 5,447
-16.53% ↓
1981年 6,526
67.33% ↑
1980年 3,900
-42.24% ↓
1979年 6,752
-7.04% ↓
1978年 7,263
8.6% ↑
1977年 6,688
-31.12% ↓
1976年 9,709
-7.46% ↓
1975年 10,492
13.23% ↑
1974年 9,266
-12.05% ↓
1973年 10,536
-3.75% ↓
1972年 10,946
22.74% ↑
1971年 8,918
21.56% ↑
1970年 7,336
6.6% ↑
1969年 6,882
-10.03% ↓
1968年 7,649
22.25% ↑
1967年 6,257
-27.37% ↓
1966年 8,615
11.9% ↑
1965年 7,699
-4.54% ↓
1964年 8,065
20.93% ↑
1963年 6,669
-13.5% ↓
1962年 7,710 -
1961年 7,710 -

オーストラリアのさくらんぼ生産量推移は、農産物生産における地政学的要因や気候条件の影響を色濃く示しています。1961年の7,710トンからスタートしたデータによると、1960年代から1980年代にかけては生産量が年間3,000~8,000トンの範囲で変動していました。この期間は主要農産物への重点がさくらんぼ以外に振り分けられたことや生産技術の発展が限定的だったこと、また自然災害や天候不順が頻繁であったことがその要因と考えられます。

1990年代後半以降、オーストラリア国内で高付加価値果物への需要が拡大し、また輸出への関心が高まったことを背景に、さくらんぼ生産量は顕著な上昇傾向を示し始めました。特に2000年代に入ってからは気候変動の影響が強まりつつある中で、農業技術の改善と水管理の向上が、生産の安定に寄与しました。2009年以降の生産量急増も注目され、この年には13,727トンが記録されました。さらに2013年には17,720トン、2016年には18,374トンという記録的な数値に達しましたが、これらは技術革新や輸出需要の伸びによるものと考えられます。

一方で、気候変動の影響には注意が必要です。オーストラリアは近年、干ばつや洪水といった極端な気象イベントの頻度が高まっています。2020年から2023年にかけての生産量を見ると、15,000トン前後と比較的高位を保ちながらも、短期的な変動が見られます。これには、天候不順や物流の混乱に加え、新型コロナウイルス感染症による国際輸出や労働力に関する課題も背景として存在しています。

さらに地政学的には、さくらんぼは中国への輸出品として重要な役割を担っています。しかし、オーストラリアと中国の外交関係が近年緊張状態にあるため、貿易摩擦が生じた場合には、さらなる生産調整が必要とされる可能性があります。輸出市場の多様化や他国(例:日本、韓国、アメリカ)との貿易関係の強化といった取り組みが、今後の市場安定に不可欠です。

オーストラリアのさくらんぼの生産量をさらに押し上げるためには、いくつかの課題と対策が考えられます。まず、気候変動へ適応するための耐候性の強い品種の育成や、灌漑システムの効率化を進めることが必要です。また、収穫とその後の流通を支える労働力不足への対応として、移民政策の見直しや季節労働者の導入を広げることも解決策となるでしょう。さらに、さくらんぼの付加価値を高めるための加工産業の推進やマーケティングの強化を図ることで、国内外での需要を増やすことが期待されます。

長期的には、農業部門における柔軟な政策運用と気候変動対策が不可欠となります。国際的な協力の枠組みや、気候に左右されにくい農業技術への投資を増やすことで、オーストラリアのさくらんぼ生産が安定し、輸出市場でも競争力を保つことができるでしょう。このように、多面的なアプローチを通じて、オーストラリアのさくらんぼ産業はさらなる発展を遂げる可能性を秘めています。