Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ジンバブエのヤギ肉生産量は2023年に34,353トンを記録し、これまでで最も高い数値となりました。長期的には着実な増加傾向が見られる一方、1980年の3,064トンという大幅な減少や、2010年代以降の年ごとの変動には注目が必要です。近年では気候変動や経済状況の影響が生産量に影響を与えていると考えられます。
ジンバブエのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 34,353 |
21% ↑
|
2022年 | 28,391 |
2.16% ↑
|
2021年 | 27,790 |
11.45% ↑
|
2020年 | 24,935 |
-15.84% ↓
|
2019年 | 29,628 |
14.04% ↑
|
2018年 | 25,980 |
7.85% ↑
|
2017年 | 24,089 |
40.28% ↑
|
2016年 | 17,172 |
-21.84% ↓
|
2015年 | 21,971 |
-10.32% ↓
|
2014年 | 24,500 |
2.08% ↑
|
2013年 | 24,000 |
2.13% ↑
|
2012年 | 23,500 |
3.98% ↑
|
2011年 | 22,600 |
0.89% ↑
|
2010年 | 22,400 |
19.79% ↑
|
2009年 | 18,700 |
35.86% ↑
|
2008年 | 13,764 |
-6.75% ↓
|
2007年 | 14,760 |
6.96% ↑
|
2006年 | 13,800 |
-4.17% ↓
|
2005年 | 14,400 |
4.35% ↑
|
2004年 | 13,800 |
-5.74% ↓
|
2003年 | 14,640 |
-2.4% ↓
|
2002年 | 15,000 |
13.64% ↑
|
2001年 | 13,200 | - |
2000年 | 13,200 |
2.8% ↑
|
1999年 | 12,840 |
7% ↑
|
1998年 | 12,000 |
3.63% ↑
|
1997年 | 11,580 |
-0.52% ↓
|
1996年 | 11,640 |
7.78% ↑
|
1995年 | 10,800 |
2.27% ↑
|
1994年 | 10,560 |
3.53% ↑
|
1993年 | 10,200 |
-4.49% ↓
|
1992年 | 10,680 |
1.14% ↑
|
1991年 | 10,560 |
1.15% ↑
|
1990年 | 10,440 |
11.54% ↑
|
1989年 | 9,360 |
5.41% ↑
|
1988年 | 8,880 |
10.45% ↑
|
1987年 | 8,040 |
11.67% ↑
|
1986年 | 7,200 |
22.45% ↑
|
1985年 | 5,880 |
6.52% ↑
|
1984年 | 5,520 |
41.54% ↑
|
1983年 | 3,900 |
17.75% ↑
|
1982年 | 3,312 |
-32.72% ↓
|
1981年 | 4,922 |
60.67% ↑
|
1980年 | 3,064 |
-42.6% ↓
|
1979年 | 5,338 |
-30.66% ↓
|
1978年 | 7,698 |
16.98% ↑
|
1977年 | 6,581 |
3.04% ↑
|
1976年 | 6,386 |
-9.17% ↓
|
1975年 | 7,031 |
-2.35% ↓
|
1974年 | 7,200 |
1.32% ↑
|
1973年 | 7,106 |
3.62% ↑
|
1972年 | 6,858 |
6.9% ↑
|
1971年 | 6,415 |
12.78% ↑
|
1970年 | 5,688 |
16.06% ↑
|
1969年 | 4,901 |
30.48% ↑
|
1968年 | 3,756 |
18.29% ↑
|
1967年 | 3,175 |
9.29% ↑
|
1966年 | 2,905 |
15.29% ↑
|
1965年 | 2,520 |
16.67% ↑
|
1964年 | 2,160 |
20% ↑
|
1963年 | 1,800 |
11.19% ↑
|
1962年 | 1,619 |
6.89% ↑
|
1961年 | 1,514 | - |
ジンバブエのヤギ肉生産の推移を1961年から2023年までのデータで振り返ると、初期には緩やかな増加が見られ、特に1969年から1973年にかけての10年間で生産量がおよそ5倍に増加しました。しかしながら、1975年以降、多くの波が現れる不安定な傾向が見られます。例えば、1980年には3,064トンと大幅な減少が記録されました。この時期はジンバブエが独立を達成した直後であり、政治的・経済的不安定さが畜産業を含めた農業全体に影響を与えたと考えられます。また、干ばつなどの自然災害も寄与している可能性が高いでしょう。
1990年代から2000年代初頭にかけては、ヤギ肉生産量は再び安定的に増加し、10,000トンを超える水準に達しました。特に2002年には15,000トンとなり、前年度の水準から急増しました。この増加は、家禽や牛肉の代替としてヤギ肉が注目されたことや、現地農家に対する飼育支援政策の影響が考えられます。しかし、2008年のジンバブエの経済危機により、インフレや資源不足が農業に悪影響を及ぼし、一部の農家が生産活動を縮小せざるを得なくなるという課題が発生しました。
近年、特筆すべきなのは2010年以降の回復傾向と2023年の生産量が大幅に増加し、34,353トンという記録を達成した点です。この増加傾向には複数の要因が考えられます。気候変動により農牧環境が厳しさを増す中で、ヤギが耐候性に優れた家畜として選択される機会が増えています。また、ジンバブエ政府が小規模農家への投資を促進した結果として、地方農業の活発化と持続可能な開発が後押しされた可能性があります。
一方で、データからは依然としていくつかの課題が読み取れます。例えば、2015年の生産量が21,971トンから翌年に17,172トンに急減したことや、近年でも2020年の24,935トンから2021年に27,790トンとなり、翌2023年にさらに増加するなど、生産量の変動が大きいことが挙げられます。この変動には、気候変動の影響、政策の継続性の問題、さらには新型コロナウイルス感染症の流行による社会的混乱や物流の遅延が関与していると考えられます。
ジンバブエのヤギ肉生産業が直面するもう一つの課題として、市場の不安定性があります。国内の経済的な格差や購買力の低下、さらには輸出先としての競合国の増加が影響を及ぼしています。これにはインドや中国といった畜産大国の動向も関連しています。両国ではヤギ肉が広く消費され、ジンバブエの製品が輸出市場で競争力を持つためには品質向上とマーケティング戦略の強化が求められます。
このような背景を踏まえて、今後ジンバブエのヤギ肉生産をさらに拡大し持続可能な形で発展させるには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず第一に、小規模農家に対する支援を充実させ、生産技術や資金的な支援を強化することが求められます。第二に、市場の拡大を目指し、特に地域内での連携を強化することで輸出の円滑化を図る必要があります。また、気候変動に対処するための持続可能な農業ソリューションの導入も急務です。例えば、農業技術の近代化や灌漑システムの普及によって収量の安定を図ることが期待されます。
結論として、ジンバブエのヤギ肉生産業は長期的な成長のポテンシャルを持ちながらも、地政学的リスクや自然環境の変化に対応するための取り組みが必要不可欠です。この分野への適切な投資と支援が行われることで、ヤギ肉生産を通じた地方経済の活性化や食料自給率の向上が実現する可能性があります。国際機関や地域間の協力がこれを支える重要な役割を果たすでしょう。