国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ジンバブエの大麦生産量は1961年の1,000トンから2023年には58,262トンまで増加し、長期的には着実な成長を遂げています。一方で、生産量は時折大幅に増減しており、特に1983年や1992年では大きな減少が見られました。その後、2003年後からは安定した増加傾向が続いています。これは、気候変動や政策の影響、灌漑技術の変化などの複合的な要因が関与しているものと考えられます。
ジンバブエの大麦生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 58,262 |
1.69% ↑
|
2022年 | 57,292 |
1.09% ↑
|
2021年 | 56,675 |
1.21% ↑
|
2020年 | 55,995 |
-3.19% ↓
|
2019年 | 57,843 |
1.99% ↑
|
2018年 | 56,713 |
1.47% ↑
|
2017年 | 55,891 |
1.66% ↑
|
2016年 | 54,977 |
0.09% ↑
|
2015年 | 54,927 |
2.39% ↑
|
2014年 | 53,645 |
3.65% ↑
|
2013年 | 51,757 |
2.21% ↑
|
2012年 | 50,638 |
2.26% ↑
|
2011年 | 49,519 |
0.12% ↑
|
2010年 | 49,459 |
2.49% ↑
|
2009年 | 48,258 |
-3.48% ↓
|
2008年 | 50,000 |
4.17% ↑
|
2007年 | 48,000 |
-11.11% ↓
|
2006年 | 54,000 |
25.58% ↑
|
2005年 | 43,000 |
19.44% ↑
|
2004年 | 36,000 |
-40% ↓
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2003年 | 60,000 |
263.64% ↑
|
2002年 | 16,500 |
-34% ↓
|
2001年 | 25,000 |
-22.36% ↓
|
2000年 | 32,200 |
93.15% ↑
|
1999年 | 16,671 |
-70.87% ↓
|
1998年 | 57,234 |
25.51% ↑
|
1997年 | 45,600 |
52% ↑
|
1996年 | 30,000 |
140% ↑
|
1995年 | 12,500 |
-62.12% ↓
|
1994年 | 33,000 | - |
1993年 | 33,000 |
560% ↑
|
1992年 | 5,000 |
-84.38% ↓
|
1991年 | 32,000 |
20.87% ↑
|
1990年 | 26,474 |
-7.5% ↓
|
1989年 | 28,621 |
4.33% ↑
|
1988年 | 27,433 |
24.61% ↑
|
1987年 | 22,015 |
-23.56% ↓
|
1986年 | 28,800 |
14.29% ↑
|
1985年 | 25,200 |
180.16% ↑
|
1984年 | 8,995 |
-30.02% ↓
|
1983年 | 12,854 |
-66.65% ↓
|
1982年 | 38,538 |
16.78% ↑
|
1981年 | 33,001 |
39.41% ↑
|
1980年 | 23,672 |
2.41% ↑
|
1979年 | 23,116 |
21.36% ↑
|
1978年 | 19,047 |
-4.77% ↓
|
1977年 | 20,000 | - |
1976年 | 20,000 |
-6.98% ↓
|
1975年 | 21,500 |
437.5% ↑
|
1974年 | 4,000 |
5.26% ↑
|
1973年 | 3,800 |
8.57% ↑
|
1972年 | 3,500 |
6.06% ↑
|
1971年 | 3,300 |
32% ↑
|
1970年 | 2,500 |
25% ↑
|
1969年 | 2,000 |
5.26% ↑
|
1968年 | 1,900 |
11.76% ↑
|
1967年 | 1,700 |
13.33% ↑
|
1966年 | 1,500 |
29.2% ↑
|
1965年 | 1,161 |
-12.97% ↓
|
1964年 | 1,334 |
-12.47% ↓
|
1963年 | 1,524 |
-2.62% ↓
|
1962年 | 1,565 |
56.5% ↑
|
1961年 | 1,000 | - |
ジンバブエの大麦生産量は、穀物のローカル需要や輸出市場、さらには食糧安全保障の観点からも重要な指標となっています。1960年代から始まったデータによると、当初は年間生産量が1,000トン台という小規模な規模にとどまっていました。しかし1970年代になると、生産量は急激に増加し1975年には21,500トンを記録しました。この大幅な増量の背景には、当時の農業政策や市場の需要増加、収益を高めるための転作促進策などが挙げられます。
その一方で1980年代前半には突如として生産が激減し、1983年には12,854トン、その翌年には8,995トンという記録的な低水準を記録しました。これは、当時ジンバブエが直面していた干ばつの影響が大きいと考えられます。同様に1992年も5,000トンへと落ち込んでおり、再び極端な干ばつの影響が顕著だったことが伺えます。気候変動による天候不順がジンバブエの農業生産に与える影響の大きさを反映しているでしょう。
1990年代後半から2000年代の初頭にかけては、生産量が不安定ながらも回復し、変動が大きいものの30,000トンを超える年も増え始めました。特に2003年には60,000トンに到達し、その後はおおむね40,000~50,000トン台で推移を見せています。この安定期を経てから、2011年以降は毎年わずかながらも右肩上がりの増加がみられたことが特徴的です。最新の2023年では58,262トンと過去最高を記録しており、ここ10年間での増加分だけでも万単位を超えています。
この長期的な増加傾向には、灌漑設備や農業技術の改善、特に近年ジンバブエ農業セクターが外国援助に基づく資金調達や制度改革を進めていることが寄与していると考えられます。また、大麦はビールの醸造や家畜飼料など、多様な用途を持つため市場の需要も底堅いと推察されます。
しかしながら、いくつかの課題も明らかになっています。まず、気候不順による大幅な生産変動のリスクが依然大きいことです。これを解決するためには、さらなる灌漑設備の拡充や耐干ばつ性の高い品種の導入が必要です。次に、ジンバブエの農業政策は過去数十年の間に変遷を繰り返しており、その安定性を高めるための長期的な戦略作りが緊急課題となっています。また農民に対する教育や資源分配の公平性も向上すべき重要なポイントです。
地政学的にもジンバブエはアフリカ南部のハブとなる位置にあり、周辺国との連携は大麦の供給網を強化する上で欠かせません。したがって地域協力の枠組みを築き、例えば南部アフリカ開発共同体(SADC)のメカニズムを活用した共同農業プロジェクトなどを進めることも重要です。加えて、新型コロナウイルスがもたらした物流の混乱や、国際市場の価格変動の影響を最小化するため、加工産業の育成を通じた付加価値の創出も有望な展開でしょう。
まとめると、ジンバブエの大麦生産量は着実な成長を遂げる一方で、干ばつや政策の不安定性といった長期的な課題も抱えています。今後は、国際機関や地域共同体の協力を得ながら、持続可能な農業経営や輸出政策を目指すことが生産量のさらなる向上につながるでしょう。