国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新データを用いて、ジンバブエの茶葉生産量の推移を分析しました。1961年から2022年にかけて、同国の茶葉生産量は大きな変動を見せています。具体的には、1960年代から1980年代の初期にかけて穏やかな増加傾向が見られた一方、1990年代以降は一時的に急激な成長がありました。しかし、2000年代中盤以降は停滞や減少が目立つ期間も見られています。2020年に80,000トンと一時的に回復を見せたものの、2022年には63,000トンに減少しています。この長期的な波形には、国の経済政策や地政学的背景、気候変動が影響していると考えられます。
ジンバブエの茶葉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 66,219 |
5.11% ↑
|
2022年 | 63,000 |
-14.86% ↓
|
2021年 | 74,000 |
-7.5% ↓
|
2020年 | 80,000 |
21.21% ↑
|
2019年 | 66,000 |
-2.94% ↓
|
2018年 | 68,000 |
1.49% ↑
|
2017年 | 67,000 |
1.52% ↑
|
2016年 | 66,000 |
8.2% ↑
|
2015年 | 61,000 |
3.39% ↑
|
2014年 | 59,000 | - |
2013年 | 59,000 |
-7.81% ↓
|
2012年 | 64,000 |
3.23% ↑
|
2011年 | 62,000 |
1.64% ↑
|
2010年 | 61,000 | - |
2009年 | 61,000 | - |
2008年 | 61,000 |
-3.17% ↓
|
2007年 | 63,000 |
-8.7% ↓
|
2006年 | 69,000 |
-28.87% ↓
|
2005年 | 97,000 | - |
2004年 | 97,000 |
-1.02% ↓
|
2003年 | 98,000 | - |
2002年 | 98,000 |
1.03% ↑
|
2001年 | 97,000 |
1.04% ↑
|
2000年 | 96,000 |
18.52% ↑
|
1999年 | 81,000 |
6.58% ↑
|
1998年 | 76,000 |
2.7% ↑
|
1997年 | 74,000 |
1.37% ↑
|
1996年 | 73,000 |
12.31% ↑
|
1995年 | 65,000 |
12.07% ↑
|
1994年 | 58,000 |
-4.92% ↓
|
1993年 | 61,000 |
52.5% ↑
|
1992年 | 40,000 |
-36.51% ↓
|
1991年 | 63,000 |
270.59% ↑
|
1990年 | 17,000 |
-5.28% ↓
|
1989年 | 17,948 |
8.04% ↑
|
1988年 | 16,612 |
10.75% ↑
|
1987年 | 14,999 |
-4.34% ↓
|
1986年 | 15,679 |
11.32% ↑
|
1985年 | 14,085 |
19.29% ↑
|
1984年 | 11,807 |
11.9% ↑
|
1983年 | 10,551 |
-0.48% ↓
|
1982年 | 10,602 |
6.92% ↑
|
1981年 | 9,916 |
2.64% ↑
|
1980年 | 9,661 |
-1.33% ↓
|
1979年 | 9,791 |
13.45% ↑
|
1978年 | 8,630 |
39.85% ↑
|
1977年 | 6,171 |
3.14% ↑
|
1976年 | 5,983 |
-13.09% ↓
|
1975年 | 6,884 |
16.82% ↑
|
1974年 | 5,893 |
29.09% ↑
|
1973年 | 4,565 |
-12.25% ↓
|
1972年 | 5,202 |
21.86% ↑
|
1971年 | 4,269 |
8.21% ↑
|
1970年 | 3,945 |
8.68% ↑
|
1969年 | 3,630 |
20.68% ↑
|
1968年 | 3,008 |
3.87% ↑
|
1967年 | 2,896 |
27.69% ↑
|
1966年 | 2,268 |
41.04% ↑
|
1965年 | 1,608 |
15.52% ↑
|
1964年 | 1,392 |
13.82% ↑
|
1963年 | 1,223 |
-5.92% ↓
|
1962年 | 1,300 |
18.18% ↑
|
1961年 | 1,100 | - |
ジンバブエの茶葉生産量は、1960年代には年間1,000トン程度の規模で始まりました。その後、一貫して増加を続け、1980年代までに10,000トンを安定的に超える規模に到達しています。この成長期は、農業技術の改良、農業労働力の増強、輸出市場の拡大が進んだことに起因していると考えられます。また、この時期は、国内での産業インフラの整備が進みつつあった時期でもあり、茶葉の栽培と加工が効率化されました。
1990年代に入り、ジンバブエの茶葉生産量は異例の急増を見せ、1991年には63,000トンと、前年の17,000トンから飛躍的に増加しました。この急増の背後には、政府の政策的支援や茶産業の輸出志向型の展開があったと推測されます。しかし、気候条件の変動や適切な農業政策の一貫性の欠如などから、1992年には40,000トンと急減。その後は、波状的に増減を繰り返しましたが、2000年以降に年間80,000~97,000トンに達し、歴史的に見ても最高の水準を維持しました。
しかし、2006年以降、ジンバブエの茶葉生産量は急激に低下し、61,000トン程度で停滞する期間が目立つようになりました。この低迷の背景には、国内の政治経済不安やインフレ、そして気候変動の影響が深刻化していることがあります。ジンバブエは長年にわたり、政治的な対立による農地改革が行われており、大規模農場の解体や技術的な支援不足が生産力に影響を与えています。また、近年、ジンバブエ国内では降水量の不安定化が顕著で、水事情が悪化し、農地の効率的な利用が困難になっています。
2020年には80,000トンと一時的に回復を果たしていますが、これはグローバル市場での茶の需要が一時的に高まったことや、気候条件が比較的安定していた年に限定されると考えられます。しかし、2022年には再び63,000トンに低下し、生産量の変動が依然として課題であることを示しています。
今後、ジンバブエの茶葉産業が安定した成長を遂げるためには、いくつかの課題に対処する必要があります。まず、農業インフラの再整備と技術革新の導入を進めることが求められます。特にドリップ灌漑技術や耐干ばつ性のある品種の導入が鍵となるでしょう。また、地域間協力を通じて、茶葉の輸出市場を多様化することや、持続可能な農法を推進することも重要です。さらに、国際社会との関係再構築による外資誘致が期待されます。気候変動に適応した政策を制定し、農業従事者に対する研修や支援を拡充することも、生産量の回復と安定化につながると考えられます。
総じて、ジンバブエの茶葉産業は、国内外の様々な要因による影響を受けながらも、回復の余地を持つ可能性が秘められています。これらの政策を早急に実施することで、国内農業の復活と茶葉の輸出産業としての発展に寄与することが期待されます。