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ジンバブエの小麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ジンバブエの小麦生産量は2022年に200,000トンに達しました。データでは、1960年代から1980年代後半にかけて急激な増加が見られた一方で、その後は政治的混乱や経済的要因により大きな変動を経て、2008年以降は著しく減少した時期が続きました。しかし、2020年以降、生産量は再び回復傾向にあります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 300,000
50% ↑
2022年 200,000
-40.69% ↓
2021年 337,212
58.67% ↑
2020年 212,530
124.46% ↑
2019年 94,685
110.41% ↑
2018年 45,000
16.23% ↑
2017年 38,715
-7.84% ↓
2016年 42,008
-7.27% ↓
2015年 45,302
13.26% ↑
2014年 40,000
-21.52% ↓
2013年 50,966
-4.26% ↓
2012年 53,232
131.44% ↑
2011年 23,000
27.78% ↑
2010年 18,000
50% ↑
2009年 12,000
-61.29% ↓
2008年 31,000
-79.21% ↓
2007年 149,110
-38.36% ↓
2006年 241,924
5.6% ↑
2005年 229,089
-7.27% ↓
2004年 247,048
101.79% ↑
2003年 122,427
-37.22% ↓
2002年 195,000
-1.28% ↓
2001年 197,526
-14.04% ↓
2000年 229,775
-11.93% ↓
1999年 260,909
7.76% ↑
1998年 242,121
-4.97% ↓
1997年 254,772
-3.18% ↓
1996年 263,134
275.91% ↑
1995年 70,000
-75.69% ↓
1994年 288,000
3.97% ↑
1993年 277,000
385.96% ↑
1992年 57,000
-78.01% ↓
1991年 259,213
-20.48% ↓
1990年 325,983
14.85% ↑
1989年 283,835
10.48% ↑
1988年 256,910
19.74% ↑
1987年 214,548
-13.61% ↓
1986年 248,346
19.86% ↑
1985年 207,200
109.29% ↑
1984年 99,000
-20.32% ↓
1983年 124,250
-35.25% ↓
1982年 191,880
4.56% ↑
1981年 183,516
-4.04% ↓
1980年 191,234
18.07% ↑
1979年 161,963
-20.24% ↓
1978年 203,052
23.41% ↑
1977年 164,540
16.34% ↑
1976年 141,433
16.81% ↑
1975年 121,083
24.34% ↑
1974年 97,383
16.04% ↑
1973年 83,921
2.3% ↑
1972年 82,037
-5.9% ↓
1971年 87,184
61.07% ↑
1970年 54,127
39.01% ↑
1969年 38,938
48.49% ↑
1968年 26,222
86.62% ↑
1967年 14,051
58.27% ↑
1966年 8,878
133.02% ↑
1965年 3,810
-1.42% ↓
1964年 3,865
106.8% ↑
1963年 1,869
53.7% ↑
1962年 1,216
50.68% ↑
1961年 807 -

ジンバブエの小麦生産量は、長い歴史の中で劇的な変動を経験してきました。1960年代初頭には年間生産量が800トン程度と非常に低い水準でしたが、農業技術の改善、灌漑施設の整備、および政策支援により1970年代中盤から1980年代にかけて大幅に増加しました。この間、1989年には記録的な283,835トンの生産量を達成し、国内の食料供給を支える重要な作物と位置づけられるようになりました。しかし、1990年代以降、気候変動の影響、土地改革政策による農業構造の変革、不安定な経済状況などの要因により、一貫性を欠いた推移となっています。

特に2000年代に入ると、農業政策の混乱やインフラの劣化が顕著となり、生産量は2008年には31,000トン、2009年には12,000トンまで急減しました。この低い生産量は全国的な食料不足を引き起こす要因となり、ジンバブエ政府の主要な課題として浮上しました。2000年代後半の急激な減少は、新自由主義の市場調整、農業資材の不足、灌漑設備の破損などが複合的に影響して生じたと考えられます。ここでの厳しい状況は、経済的な安定が農業生産に如何に重要であるかを改めて示しています。

近年では、2020年に212,530トン、2021年には337,212トンと明らかに回復傾向が見られ、これは政府による農業奨励策の効果や適切な灌漑施策が奏功したこと、また比較的恵まれた降雨量に支えられた結果と分析されます。しかし、2022年には再び200,000トンまで減少しており、気候変動リスクや高まる肥料価格、灌漑施設の維持管理不足などが再び生産に影響を及ぼしている可能性が指摘されています。

他国と比較すると、例えば農業技術や効率的な灌漑システムが発達しているアメリカでは2022年の小麦生産量が約4億トン、中国やインドもそれぞれ1億トンを優に超えており、ジンバブエの生産量の伸びはこれらの国々と大きな差があります。これには、資本投資の不足や自然災害による農業生産への影響が背景にあると考えられます。また、アフリカ地域全体でも、南アフリカやエジプトなど安定した農業基盤を持つ国々に比べて生産性に遅れが見られるのが現状です。

ジンバブエが直面する主な課題は、まず第一に気候変動リスクへの対応です。干ばつや異常気象の頻繁化が小麦栽培に悪影響を及ぼしており、特に灌漑システムの整備と保全が急務となっています。次に、農業資材、特に高騰している肥料価格への補助制度を拡充し、小規模農家が安定して作物を栽培できるよう支援することも重要です。さらに、土地改革政策による農業生産の停滞を一時的に乗り越えつつある現在、高度な農業技術の導入や地域協力の推進によって生産効率を高める努力が求められます。

また、地政学的背景も無視できません。ジンバブエでは過去に隣国や国際的な経済制裁の影響が農業資材の輸入に制限をかけた事例がありました。今後も地域間での安定的な食料供給網の維持、あるいは融資を通じた国際的な協力が鍵となります。例えば、地域協力を強化する枠組みとして南部アフリカ開発共同体(SADC)の中での農業技術の共有は非常に有益となるでしょう。

結論として、ジンバブエの小麦生産量は過去数十年間で継続的な変動を見せ、特に2000年代の激しい減少期以降、一定の回復基調を示しているものの、依然として課題が山積しています。持続可能な農業発展を実現するためには、気候リスクへの適応、インフラ整備、資金調達支援、国際協力の強化といった具体的なアクションが不可欠です。国際機関や地域共同体と手を取り合いながら、ジンバブエの農業セクターが将来より強固な基盤を築けるよう取り組むべきです。