Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、大韓民国のヤギ肉生産量は、1961年の750トンから徐々に増加し、1997年にピークの3,615トンに達しました。しかし、その後、生産量は減少傾向に転じ、2023年には1,936トンと持ち直しています。これらのデータは、国内外の食文化や需要の変化、農業政策、さらに地政学的背景が生産動態に与えた影響を如実に反映していると言えます。
大韓民国のヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,936 |
35.67% ↑
|
2022年 | 1,427 |
-3.88% ↓
|
2021年 | 1,485 |
-4.98% ↓
|
2020年 | 1,563 |
-6.03% ↓
|
2019年 | 1,663 |
6.65% ↑
|
2018年 | 1,559 |
-13.62% ↓
|
2017年 | 1,805 |
-11.82% ↓
|
2016年 | 2,047 |
22.87% ↑
|
2015年 | 1,666 |
11.53% ↑
|
2014年 | 1,494 |
7.71% ↑
|
2013年 | 1,387 |
-3.69% ↓
|
2012年 | 1,440 |
-3.03% ↓
|
2011年 | 1,485 |
2.06% ↑
|
2010年 | 1,455 |
-3% ↓
|
2009年 | 1,500 |
-4.76% ↓
|
2008年 | 1,575 |
-28.57% ↓
|
2007年 | 2,205 |
-20.11% ↓
|
2006年 | 2,760 |
-10.68% ↓
|
2005年 | 3,090 |
-0.48% ↓
|
2004年 | 3,105 |
8.95% ↑
|
2003年 | 2,850 |
8.57% ↑
|
2002年 | 2,625 |
-2.78% ↓
|
2001年 | 2,700 |
-2.7% ↓
|
2000年 | 2,775 |
-2.63% ↓
|
1999年 | 2,850 |
-13.64% ↓
|
1998年 | 3,300 |
-8.71% ↓
|
1997年 | 3,615 |
11.83% ↑
|
1996年 | 3,233 |
5.64% ↑
|
1995年 | 3,060 |
13.33% ↑
|
1994年 | 2,700 |
5.88% ↑
|
1993年 | 2,550 |
13.33% ↑
|
1992年 | 2,250 |
44.23% ↑
|
1991年 | 1,560 |
62.5% ↑
|
1990年 | 960 |
36.17% ↑
|
1989年 | 705 |
11.9% ↑
|
1988年 | 630 |
-16% ↓
|
1987年 | 750 |
-23.08% ↓
|
1986年 | 975 |
-31.58% ↓
|
1985年 | 1,425 |
-17.39% ↓
|
1984年 | 1,725 |
9.52% ↑
|
1983年 | 1,575 |
40% ↑
|
1982年 | 1,125 |
27.12% ↑
|
1981年 | 885 |
5.36% ↑
|
1980年 | 840 |
-11.11% ↓
|
1979年 | 945 |
-7.35% ↓
|
1978年 | 1,020 |
13.33% ↑
|
1977年 | 900 |
-4.76% ↓
|
1976年 | 945 |
-5.97% ↓
|
1975年 | 1,005 |
11.67% ↑
|
1974年 | 900 |
30.43% ↑
|
1973年 | 690 |
31.43% ↑
|
1972年 | 525 |
25% ↑
|
1971年 | 420 |
-3.45% ↓
|
1970年 | 435 |
31.82% ↑
|
1969年 | 330 |
-8.33% ↓
|
1968年 | 360 |
-11.11% ↓
|
1967年 | 405 |
-27.03% ↓
|
1966年 | 555 |
5.71% ↑
|
1965年 | 525 |
-22.22% ↓
|
1964年 | 675 |
-21.05% ↓
|
1963年 | 855 |
-12.31% ↓
|
1962年 | 975 |
30% ↑
|
1961年 | 750 | - |
大韓民国におけるヤギ肉生産量の推移をみると、1960年代には小規模であった生産量が、農業技術の改善や国内需要の高まりを背景に1980年代から1990年代にかけて大幅に増加しました。この増加は、国内市場での需要拡大だけではなく、輸出市場への対応も含まれていた可能性があります。しかし、1997年に3,615トンと最大値に達した後、それ以降は急激な減少が見られます。この減少の背景には、消費パターンの変化や、他の畜産物における競争の激化があると考えられます。また、1997年のアジア通貨危機による経済的不安定も、農業分野への投資や生産効率に影響を及ぼしたと推測されます。
2000年代から2010年代にかけて、ヤギ肉の生産量は1,000~2,000トン台の低迷した数値で推移しました。この間、大韓民国では都市化の進行に伴い、伝統的な農村部が縮小、労働力が減少していったことが影響していると考えられます。さらに、他国との自由貿易協定(FTA)の締結による畜産品の輸入増加が、国内の自給率に影響を与え、ヤギ肉生産業も厳しい競争を強いられた可能性があります。
注目すべきは、2023年に1,936トンと直近の中では回復が見られる点です。この回復には、健康志向の高まりやヤギ肉の栄養価の認知向上が寄与しているかもしれません。ヤギ肉は高タンパク質で脂肪分が低く、健康食材として再注目されています。また、国内農業政策の見直しや、政府の補助金制度が地域の小規模生産者を支援していることが要因と言えるでしょう。
課題としては、人口減少や高齢化が進む社会では、農業分野全般が労働力不足に直面しています。ヤギ肉生産の維持・増加には、自動化技術の導入や外国人労働者の受け入れ、さらには畜産業を魅力的にする教育・訓練プログラムの整備が必要です。また、ヤギ肉の文化的・経済的意義を広く国内外にアピールし、消費市場を拡大することも重要です。
さらに地政学的リスクとして、2022年から2023年にかけて多数の国で食料安全保障が議論されています。世界的な紛争や気候変動による影響が、耕作地や家畜飼育にもたらすリスクを考えると、大韓民国などの輸入依存国は、自給率の向上と緊急時の備蓄制度を重視する方向へ舵を切るべきです。ヤギ肉は保存性が高く、輸出入の選択肢として戦略的な食料資源になり得ます。
結論として、大韓民国においてヤギ肉生産業は停滞期を経て徐々に回復傾向にあるものの、直面する課題は少なくありません。農業分野の高齢化や気候変動によるリスクを乗り越えるためには、持続可能な農業技術の普及、貿易戦略の強化、地産地消を後押しする政策などの導入が必要です。加えて、ヤギ肉の魅力を消費者に分かりやすく伝えるプロモーション活動を支援することも、その未来を明るいものにする鍵となるでしょう。