FAO(国際連合食糧農業機関)が公開したデータによると、大韓民国における羊の飼養数の推移には顕著な変動が見られます。最も多かった時期は1979年の8,181匹であったのに対し、2022年には1,270匹まで減少しています。一時的な増加の局面は何度か見られますが、全体的には減少傾向が強く、特に2000年以降その傾向が顕著となっています。
大韓民国の羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 1,270 |
2021年 | 1,526 |
2020年 | 1,611 |
2019年 | 2,023 |
2018年 | 2,172 |
2017年 | 2,142 |
2016年 | 1,436 |
2015年 | 3,255 |
2014年 | 2,199 |
2013年 | 2,522 |
2012年 | 3,035 |
2011年 | 2,989 |
2010年 | 3,918 |
2009年 | 3,216 |
2008年 | 2,971 |
2007年 | 1,800 |
2006年 | 1,308 |
2005年 | 1,202 |
2004年 | 1,057 |
2003年 | 952 |
2002年 | 791 |
2001年 | 809 |
2000年 | 829 |
1999年 | 1,088 |
1998年 | 1,242 |
1997年 | 1,455 |
1996年 | 1,624 |
1995年 | 1,630 |
1994年 | 1,517 |
1993年 | 1,956 |
1992年 | 3,970 |
1991年 | 3,368 |
1990年 | 3,225 |
1989年 | 3,410 |
1988年 | 3,321 |
1987年 | 3,261 |
1986年 | 4,286 |
1985年 | 4,900 |
1984年 | 4,651 |
1983年 | 6,152 |
1982年 | 4,282 |
1981年 | 4,010 |
1980年 | 6,233 |
1979年 | 8,181 |
1978年 | 7,900 |
1977年 | 6,974 |
1976年 | 6,810 |
1975年 | 5,799 |
1974年 | 4,582 |
1973年 | 3,750 |
1972年 | 3,609 |
1971年 | 2,988 |
1970年 | 2,200 |
1969年 | 2,465 |
1968年 | 2,197 |
1967年 | 1,604 |
1966年 | 1,637 |
1965年 | 1,029 |
1964年 | 1,043 |
1963年 | 1,179 |
1962年 | 1,465 |
1961年 | 1,415 |
大韓民国における羊飼養数の推移を年代ごとに見ると、1960年代から1970年代には一貫して増加し、1979年にはピークの8,181匹に達しました。しかし、その後は急激に減少し、特に1980年代からは減少傾向が顕著です。2000年以降は飼養数はさらに縮小し、最新のデータである2022年には1,270匹にまで落ち込んでいます。
この変動の背景には多くの要因が考えられます。まず、大韓民国では経済成長と都市化が進む中で、畜産業全体が規模縮小や業態転換を迫られる状況がありました。特に、羊は肉用生産の側面で牛や豚に劣る市場規模であることから、小規模な需要が繰り返し続いてきたといえます。また、羊毛や乳製品については、輸入に依存する割合が高まっているため、国内での生産が減少していった可能性があります。
さらに、地政学的背景も影響しています。大韓民国では土地の利用可能性が限られており、より収益性の高い農作物や家畜の飼育に土地が割かれる傾向があります。これに加え、1997年のアジア通貨危機後や近年の新型コロナウイルス感染症の流行といった経済的打撃が、養羊農家にも影響を与えたと考えられます。輸入品の増加と価格競争もまた、国内羊飼養の減少を加速させた要因でしょう。
一方で、2007年から2010年にかけての一時的な増加は注目すべきポイントです。この期間、大韓民国では食文化の多様化や輸入品に対抗する試みなどが一定の影響を与えた可能性があります。それ以降は再び減少に転じたものの、この時のトレンドは市場がいまだ可能性を秘めていることも示唆していると言えます。
こうした現状を踏まえた上で、いくつかの課題と提案が考えられます。第一に、国内の羊肉や羊製品市場の需要を喚起するための政策として、食文化の普及キャンペーンが有効です。例えば、日本など他国ではラム肉の健康志向が注目されていることから、大韓民国でも同様のマーケティング戦略を活用することができます。第二に、養羊業の近代化と効率化が課題です。技術導入や支援策を通じて、中小農家が持続可能なビジネスモデルを模索することが求められます。
また、地域間協力の枠組みを活用して、特に周辺国との市場連携を図るのも一案です。中国や日本、オーストラリアなど羊の生産や消費で大きな市場を持つ国々と協力し、輸出入やノウハウの共有を進めることで業界全体の競争力を高めることが期待されます。国際協力の拡大を通じて、地政学的なリスクを緩和しつつ、国内の羊飼養数を安定的に維持するための道筋を考えることが重要です。
最後に、気候変動や疫病といったリスクへの備えも必要です。自然災害や感染症拡大は家畜に大きな被害をもたらす可能性があり、これらに対する防疫対策や適応策を進めることが、今後の畜産業の持続可能性に直結します。
結論として、羊飼養数の減少は国内の需要変化や経済の構造変化、地政学的な要因によるものが大きいですが、改善の余地はあります。大韓民国は、政策的なイノベーションや国際協力、持続可能な発展モデルを通じて、羊飼養業の発展を再び目指す方向性を明確にする必要があります。この取り組みは地元経済の成長にも寄与し、地域社会の多様性を豊かにする可能性を秘めています。