国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによれば、大韓民国の羊肉生産量は1961年の4トンからゆるやかな変動を経て、2023年には5トンとなりました。1960年代後半から1970年代中盤にかけては、増加傾向が見られ最大で53トン(1983年)を記録しましたが、1980年代以降は全体的に減少の一途をたどっています。これは、大韓民国国内における食肉生産全体の中で羊肉が占める割合が極めて小さいことを示しており、他国と比較して羊肉の重要性が低いことが読み取れます。
大韓民国の羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 5 |
-1.29% ↓
|
2022年 | 5 |
-18.07% ↓
|
2021年 | 7 |
-5.41% ↓
|
2020年 | 7 |
-20.23% ↓
|
2019年 | 9 |
12.24% ↑
|
2018年 | 8 |
-19.34% ↓
|
2017年 | 10 |
57.03% ↑
|
2016年 | 6 |
-55.75% ↓
|
2015年 | 14 |
41.89% ↑
|
2014年 | 10 |
-24.04% ↓
|
2013年 | 13 |
1.88% ↑
|
2012年 | 13 | - |
2011年 | 13 |
-24.17% ↓
|
2010年 | 17 |
22.45% ↑
|
2009年 | 14 |
7.69% ↑
|
2008年 | 13 |
65.45% ↑
|
2007年 | 8 |
37.5% ↑
|
2006年 | 6 |
8.11% ↑
|
2005年 | 5 |
15.63% ↑
|
2004年 | 4 |
10.34% ↑
|
2003年 | 4 |
20.83% ↑
|
2002年 | 3 | - |
2001年 | 3 |
-4% ↓
|
2000年 | 4 |
-24.24% ↓
|
1999年 | 5 |
-13.16% ↓
|
1998年 | 5 |
-15.56% ↓
|
1997年 | 6 |
-10% ↓
|
1996年 | 7 | - |
1995年 | 7 | - |
1994年 | 7 |
-16.67% ↓
|
1993年 | 8 |
-71.43% ↓
|
1992年 | 29 |
107.92% ↑
|
1991年 | 14 |
4.12% ↑
|
1990年 | 14 |
-5.83% ↓
|
1989年 | 14 |
3% ↑
|
1988年 | 14 |
2.04% ↑
|
1987年 | 14 |
-24.62% ↓
|
1986年 | 18 |
-13.33% ↓
|
1985年 | 21 |
15.38% ↑
|
1984年 | 18 |
-65.79% ↓
|
1983年 | 53 |
211.48% ↑
|
1982年 | 17 |
22% ↑
|
1981年 | 14 |
-41.18% ↓
|
1980年 | 24 |
-22.73% ↓
|
1979年 | 31 |
7.32% ↑
|
1978年 | 29 |
13.89% ↑
|
1977年 | 25 |
-28% ↓
|
1976年 | 35 |
56.25% ↑
|
1975年 | 22 |
14.29% ↑
|
1974年 | 20 |
55.56% ↑
|
1973年 | 13 |
-50% ↓
|
1972年 | 25 |
80% ↑
|
1971年 | 14 |
75.44% ↑
|
1970年 | 8 |
-28.75% ↓
|
1969年 | 11 |
63.27% ↑
|
1968年 | 7 |
36.11% ↑
|
1967年 | 5 |
9.09% ↑
|
1966年 | 5 |
57.14% ↑
|
1965年 | 3 | - |
1964年 | 3 |
-12.5% ↓
|
1963年 | 3 |
-17.24% ↓
|
1962年 | 4 |
3.57% ↑
|
1961年 | 4 | - |
大韓民国の羊肉生産量は、時代を通じて変動しながらも、全体的には非常に小規模であることが特徴です。1960年代は生産量が3~11トンという少量で、1970年代に入り35トン(1976年)や53トン(1983年)と比較的高い数値を記録したものの、その後減少傾向が続いています。2000年代以降は5~17トン程度と低水準に留まり、2023年は5トンと若干の後退が見られます。この小規模生産は、韓国が主として豚肉や鶏肉を中心とした食文化を持つことによる需要の低さや、羊の飼育が地理的・気候的にあまり適していない状況に起因していると考えられます。
大韓民国では、羊肉は国内市場での消費が限られた食材であるため、国産羊肉は需給の基本部分を満たす程度の役割にとどまっています。他国と比較すると、例えば羊肉を伝統的に消費する中国やオーストラリアでは大規模な羊肉生産が行われており、2018年に中国は200万トン以上、オーストラリアでは約70万トンを超える生産量を記録しています。この対照的な状況からも、大韓民国国内での羊肉生産が経済的・文化的に大きな優先事項になっていないことが証明されます。
羊肉生産量の減少傾向は、複数の課題を反映しています。一つは、都市化や工業化により、大規模な牧場に適した土地が減少したことです。また、気候条件が乾燥地域に適する羊飼育に必ずしも優れた性質を持たない韓国の地形も要因として挙げられます。さらに、外国からの輸入による市場の競争激化も国内の羊肉の需要の停滞を招いています。オーストラリアやニュージーランドなどの主要輸出国から高品質な羊肉が容易に輸入できることが国内生産の減退を支えています。
この状況に対処するためには、大韓民国における羊肉の役割を再検討し、限定された市場ニーズに焦点を当てた生産活動に取り組むことが有効です。高品質・高価格帯をターゲットにした「プレミアム市場」への特化が一つの方向性となるでしょう。また、輸入に依存せざるを得ない羊肉という食材を活用した食文化の普及や、観光業とリンクした特産品として位置付け、韓国独自の羊肉料理を世界に広めることも可能性として挙げられます。
地政学的背景や気候の変化も中長期的に重要な視点です。例えば気候変動により環境条件が変化すれば、羊の飼育環境も影響を受けます。また、輸入に依存する現状では、輸出国の農業政策や国際的な紛争による供給途絶リスクも懸念材料の一つです。これに対応するためには、持続可能な農業政策や、多様な国からの輸入先を持つことが求められます。
結論として、大韓民国が羊肉生産量を今後も持続的に維持・活用するためには、農業政策の再構築、新たな市場戦略の創出、高付加価値製品の開発が重要です。また、国際的な貿易パートナーとの協力を深め、輸入リスクを分散させる対応も同時に進めるべきでしょう。こうしたアプローチを取ることで、羊肉産業における競争力の拡大と、国内食品市場に付加価値をもたらすことが期待されます。