国際連合食糧農業機関(FAO)が提供するデータによると、大韓民国の馬飼養数は1960年代には20,000頭を超えていましたが、その後急激に減少し、1980年代には3,000頭前後と極めて低い水準に達しました。その後1990年代以降は徐々に回復基調を示し、2000年代に入ると大幅な増加が見られました。しかし、2014年以降再び減少傾向となり、2022年時点では26,065頭となっています。このデータは、大韓民国における馬の利用目的の変化や農村の構造転換、さらには最近の経済的・社会的要因を反映していると考えられます。
大韓民国の馬飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(頭) | 増減率 |
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2023年 | 27,367 |
5% ↑
|
2022年 | 26,065 |
-0.64% ↓
|
2021年 | 26,234 |
-0.64% ↓
|
2020年 | 26,403 |
-1.55% ↓
|
2019年 | 26,818 |
-6.62% ↓
|
2018年 | 28,720 |
2.18% ↑
|
2017年 | 28,108 |
1.56% ↑
|
2016年 | 27,676 |
64.16% ↑
|
2015年 | 16,859 |
-34.72% ↓
|
2014年 | 25,824 |
-11.99% ↓
|
2013年 | 29,342 |
-1.2% ↓
|
2012年 | 29,698 |
-1.2% ↓
|
2011年 | 30,058 |
-1.13% ↓
|
2010年 | 30,402 |
5.86% ↑
|
2009年 | 28,718 |
3% ↑
|
2008年 | 27,881 |
11.74% ↑
|
2007年 | 24,951 |
8.76% ↑
|
2006年 | 22,941 |
11.98% ↑
|
2005年 | 20,487 |
10.51% ↑
|
2004年 | 18,539 |
13.72% ↑
|
2003年 | 16,302 |
14.31% ↑
|
2002年 | 14,261 |
13.74% ↑
|
2001年 | 12,538 |
18.32% ↑
|
2000年 | 10,597 |
29.82% ↑
|
1999年 | 8,163 |
-3.62% ↓
|
1998年 | 8,470 |
10.69% ↑
|
1997年 | 7,652 |
14.33% ↑
|
1996年 | 6,693 |
7.69% ↑
|
1995年 | 6,215 |
10.04% ↑
|
1994年 | 5,648 |
10.68% ↑
|
1993年 | 5,103 |
-6.78% ↓
|
1992年 | 5,474 |
-0.44% ↓
|
1991年 | 5,498 |
11.36% ↑
|
1990年 | 4,937 |
8.27% ↑
|
1989年 | 4,560 |
28.16% ↑
|
1988年 | 3,558 |
16.62% ↑
|
1987年 | 3,051 |
5.43% ↑
|
1986年 | 2,894 |
-3.82% ↓
|
1985年 | 3,009 |
0.53% ↑
|
1984年 | 2,993 |
2.99% ↑
|
1983年 | 2,906 |
-2.25% ↓
|
1982年 | 2,973 |
-10.85% ↓
|
1981年 | 3,335 |
-6.9% ↓
|
1980年 | 3,582 |
-17.9% ↓
|
1979年 | 4,363 |
-18.71% ↓
|
1978年 | 5,367 |
-16.14% ↓
|
1977年 | 6,400 |
-17.47% ↓
|
1976年 | 7,755 |
-0.44% ↓
|
1975年 | 7,789 |
-11.27% ↓
|
1974年 | 8,778 |
-11.81% ↓
|
1973年 | 9,954 |
-0.78% ↓
|
1972年 | 10,032 |
-4.48% ↓
|
1971年 | 10,502 |
-15.99% ↓
|
1970年 | 12,501 |
-21.87% ↓
|
1969年 | 16,000 |
-6.72% ↓
|
1968年 | 17,152 |
-11.66% ↓
|
1967年 | 19,415 |
-21.52% ↓
|
1966年 | 24,739 |
-9.99% ↓
|
1965年 | 27,484 |
2.74% ↑
|
1964年 | 26,750 |
0.87% ↑
|
1963年 | 26,519 |
5.89% ↑
|
1962年 | 25,045 |
17.15% ↑
|
1961年 | 21,379 | - |
大韓民国の馬飼養数の変遷を振り返ると、1960年代から1970年代を通じて持続的な減少が顕著です。この時期は、工業化や都市化が急速に進み、農業の機械化が進展したため、農耕目的や輸送手段としての馬の需要が急速に低下しました。このような背景により、1970年代後半には5,000頭を下回る水準に縮小し、1980年代には3,000頭前後にまで減少しています。
一方で、1990年代以降、馬飼養数は徐々に回復傾向を示しました。この要因として、農業や輸送手段としての需要が大幅に減少した一方で、娯楽産業や観光への利用が拡大したことが挙げられます。特に、競馬産業や乗馬クラブの展開が主導的な役割を果たし、一時的には2000年代半ばから2010年代にかけて飼養頭数が顕著に増加しました。この時期には30,000頭を超える水準に達しており、多様な目的での飼養が進んでいました。
しかしながら2014年以降、再び馬飼養数は減少傾向に転じています。2014年には25,824頭だったものが、2022年には26,065頭となり、ほぼ横ばい状態を示しました。この減少は、高齢化や都市化の影響でレジャー産業全体の需要が伸び悩んでいること、さらに新型コロナウイルス感染症の影響で観光・レジャー活動が制限され、競馬や乗馬といった産業に影響が及んだことが要因として挙げられます。
これらの背景を踏まえると、大韓民国における馬飼養数の動向は、農村と都市の構造的な変化、経済的事情、さらに国民のライフスタイルの変化が相互に影響しあった結果といえます。特に都市部での生活の集中は、馬飼養を維持するための土地やインフラの確保に課題をもたらしています。また、競馬や乗馬活動の中心である農村地域でも若年層の担い手不足が顕著で、これが馬飼養の持続可能性にさらなる不安を与えています。
今後の課題としては、大韓民国における馬文化の維持と発展のため、持続可能な馬産業育成を目指した取り組みが必要です。その一つとして、観光や教育目的での馬の活用を更に促進する政策が挙げられます。例えば、乗馬体験を通じた地域活性化や、馬を利用したセラピー活動(ホースセラピー)など、馬が単なるレジャーの範疇を越えて広範な分野で活躍できる環境作りが求められます。また、若者を対象とした馬関連産業への就業促進プログラムや、公的助成による農村地域への分散型拠点の整備も効果的です。
さらに、国際的には観光や馬関連ビジネスのグローバル化も追求すべきです。他国との協力を通じて知見を共有し、新しい市場の開拓や文化交流イベントを推進することで、馬産業の発展に貢献することが可能です。特にフランスやイギリスの伝統的な馬文化を参考にしつつ、韓国らしい特色を打ち出した戦略が鍵となるでしょう。
最終的には、持続可能な開発目標(SDGs)の観点からも、馬産業を取り巻く環境の改善は、地域社会の豊かさや文化多様性にも寄与すると考えられます。これに向けた具体的な取り組みは、政府だけではなく地域社会や企業、国際機関の連携が不可欠です。この連携により、大韓民国における馬飼養文化の次世代への継承が可能になるでしょう。