国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、大韓民国におけるパイナップル生産量は、1980年代後半に大きな成長を見せましたが、1990年代以降に急激な減少を経験しました。その後、2000年代を通じて低水準のまま横ばい状態が続き、2020年代にかけても安定的ながら回復の兆しは少ない状況です。2023年の生産量は970トンと報告されており、全盛期の1989年(9,908トン)と比較すると約90%の減少となっています。
大韓民国のパイナップル生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 970 |
-0.13% ↓
|
2022年 | 972 | - |
2021年 | 972 |
-0.01% ↓
|
2020年 | 972 |
2.29% ↑
|
2019年 | 950 |
-4.12% ↓
|
2018年 | 991 |
2.94% ↑
|
2017年 | 962 |
4.41% ↑
|
2016年 | 922 |
-9.23% ↓
|
2015年 | 1,016 |
6.9% ↑
|
2014年 | 950 |
18.75% ↑
|
2013年 | 800 |
-27.27% ↓
|
2012年 | 1,100 |
3.77% ↑
|
2011年 | 1,060 |
-3.64% ↓
|
2010年 | 1,100 |
-0.75% ↓
|
2009年 | 1,108 |
0.54% ↑
|
2008年 | 1,102 |
0.59% ↑
|
2007年 | 1,096 |
0.46% ↑
|
2006年 | 1,091 |
2.25% ↑
|
2005年 | 1,067 |
3.31% ↑
|
2004年 | 1,033 |
3.26% ↑
|
2003年 | 1,000 |
-5.39% ↓
|
2002年 | 1,057 |
-0.66% ↓
|
2001年 | 1,064 |
-22.11% ↓
|
2000年 | 1,366 |
-40.24% ↓
|
1999年 | 2,286 |
78.59% ↑
|
1998年 | 1,280 |
-38.34% ↓
|
1997年 | 2,076 |
-14.18% ↓
|
1996年 | 2,419 |
-11.62% ↓
|
1995年 | 2,737 |
-31.58% ↓
|
1994年 | 4,000 |
-27.27% ↓
|
1993年 | 5,500 |
-21.43% ↓
|
1992年 | 7,000 |
-17.65% ↓
|
1991年 | 8,500 |
-6.75% ↓
|
1990年 | 9,115 |
-8% ↓
|
1989年 | 9,908 |
25.35% ↑
|
1988年 | 7,904 |
61.7% ↑
|
1987年 | 4,888 |
32.79% ↑
|
1986年 | 3,681 |
4.51% ↑
|
1985年 | 3,522 | - |
大韓民国のパイナップル生産量は、1980年代において徐々に拡大し、1989年には9,908トンを記録しました。この増加は、国内の農業技術の向上や気候を活かした生産活動の結果と考えられます。しかし、1990年代に入り生産量は急激に減少し、1995年には2,737トン、1998年には1,280トンまで低下しました。この減少の背後には、輸入品との競争激化や気候条件の変化、さらにパイナップル生産に従事する農業従事者の減少など複数の要因が指摘されています。また、1997年のアジア通貨危機の影響も、農業セクター全体の負担を増加させた可能性があります。
2000年代以降、生産量はおおむね1,000トン前後で安定しましたが、大規模な成長は見られていません。この期間には輸入依存が進み、大韓民国国内でのパイナップル消費の大部分は輸入品に頼るようになりました。特にフィリピンやタイ、さらには台湾やベトナムといった熱帯気候の国々からの高品質な輸入品との競争が、生産コストと市場競争力に影響を与え続けています。
地政学的背景として、東南アジア諸国との外交や貿易関係も生産量縮小に直接的な影響を及ぼしています。特に1990年代以降の自由貿易協定(FTA)は、域内での農産物流通を活性化させましたが、大韓民国のような国内での栽培条件が限られる国では逆に競争圧力が強まりました。これは同時に、生産コストの上昇や国内農家の利益減少を招き、結果として栽培面積の縮小や労働力の流失を引き起こしました。
2020年代現在においても、パイナップルの生産量は抑制されており、2023年には970トンと、前年度からほぼ変化がありません。この長期的な低迷を克服するためには、複数の課題に取り組む必要があります。一つは国内市場での競争力を回復させるため、品質向上と生産効率の向上が挙げられます。例えば、バイオテクノロジーを活用した品種改良や、スマート農業技術を導入して環境負荷を軽減しつつ生産性を向上させる取り組みです。また、地域ごとの気候に適応した栽培戦略を採用することで、気候リスクを分散することも重要です。
さらに、消費市場に対するマーケティング活動やブランディングの強化も鍵となります。具体的には、「地元産」を活かしたフレッシュな提供やエコサステイナブルな生産背景の周知など、消費者に選ばれる理由を明確にする戦略が必要です。一方で、国内での栽培が経済的に非効率である場合、農業産業の転換や他作物への移行を推進する考えも必要かもしれません。
総じて、大韓民国のパイナップル生産は90年代以降急激に減少し、その後低水準で推移を続けています。これらのデータが示す現状を踏まえると、農業技術と政策の両面から持続可能な生産環境を整備し、国際競争力を強化するための包括的な取り組みが求められます。