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タイの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タイの牛乳生産量は、1961年の2,000トンから2023年の1,278,333トンと、大幅な増加を遂げてきました。特に1970年代以降は急速な増加が見られ、2000年代以降は年間約100万トンを超える生産量を維持しています。一方で2016年以降の成長鈍化や、2022年に見られる生産量の一時的な減少が懸念されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,278,333
4.61% ↑
2022年 1,222,000
-5.71% ↓
2021年 1,296,000
-1.59% ↓
2020年 1,317,000
1.93% ↑
2019年 1,292,000
2.62% ↑
2018年 1,259,000
5.89% ↑
2017年 1,189,000
-0.42% ↓
2016年 1,194,000
3.02% ↑
2015年 1,159,000
8.58% ↑
2014年 1,067,452
-2.54% ↓
2013年 1,095,314
7.15% ↑
2012年 1,022,190
4.09% ↑
2011年 982,000
7.79% ↑
2010年 911,000
8.36% ↑
2009年 840,691
6.93% ↑
2008年 786,186
7.83% ↑
2007年 729,098
-9.23% ↓
2006年 803,250
-9.57% ↓
2005年 888,220
5.41% ↑
2004年 842,611
15.12% ↑
2003年 731,923
10.85% ↑
2002年 660,297
12.35% ↑
2001年 587,700
12.99% ↑
2000年 520,115
11.97% ↑
1999年 464,514
6.27% ↑
1998年 437,116
13.32% ↑
1997年 385,728
12.33% ↑
1996年 343,388
11.77% ↑
1995年 307,229
49.57% ↑
1994年 205,407
30.59% ↑
1993年 157,288
17.37% ↑
1992年 134,011
-5.79% ↓
1991年 142,253
9.19% ↑
1990年 130,278
9.53% ↑
1989年 118,945
19.6% ↑
1988年 99,450
10.61% ↑
1987年 89,912
29.98% ↑
1986年 69,175
19.48% ↑
1985年 57,895
25.32% ↑
1984年 46,197
28.22% ↑
1983年 36,029
26.42% ↑
1982年 28,500
14% ↑
1981年 25,000
-16.67% ↓
1980年 30,000
-11.76% ↓
1979年 34,000
36% ↑
1978年 25,000
38.89% ↑
1977年 18,000
2.86% ↑
1976年 17,500
25% ↑
1975年 14,000 -
1974年 14,000 -
1973年 14,000
79.49% ↑
1972年 7,800
56% ↑
1971年 5,000
42.86% ↑
1970年 3,500
34.62% ↑
1969年 2,600
4% ↑
1968年 2,500
4.17% ↑
1967年 2,400 -
1966年 2,400
4.35% ↑
1965年 2,300
4.55% ↑
1964年 2,200
10% ↑
1963年 2,000 -
1962年 2,000 -
1961年 2,000 -

タイの牛乳生産量は、初期の1960年代において年間2,000トン程度の小規模生産にとどまっていました。これは、当時の経済的基盤や酪農技術が未発達であったことを象徴しています。しかし1970年代以降、酪農技術の向上、市場需要の拡大、そして政府の農業支援政策などの要因により、生産量は急速に増加を見せ始めました。特に1973年から1979年にかけては、年平均で約2倍程度の成長率を見せ、1980年代には毎年の増加が顕著となりました。この成長の背景には、都市化に伴う人口増加や、食生活の西洋化が牛乳の消費拡大を後押ししたと考えられます。

1990年代に入ると、酪農業自体がタイの農業全体で果たす役割も重要性を増し、技術革新や効率的な生産体制が整えられた結果、1995年には年間生産量が30万トンを突破しました。これは、同年代のタイ政府が力を入れていた輸出主導型の経済政策にも関連しています。しかしながら、輸出よりも国内需要の拡大が主要な成長駆動因子でした。

2000年以降は年々生産量が増大し、2005年には88万トンを達成しました。この頃には、地域間の経済格差や気候変動の影響を考慮した政策も導入され、農業部門の強化が進められています。ただし、2006年以降、生産量が一時的に減少する年もあり、これは洪水などの自然災害が一因であるとされています。2010年代後半には、年間生産量は安定して100万トンを超え、ピークを迎えた2019年には1,292,000トンに達しました。

直近の2022年には生産量が1,222,000トンに減少しており、これは新型コロナウイルス感染症による物流の制約や、燃料価格の高騰が農業部門に与えた影響を反映していると考えられます。2023年には1,278,333トンに回復しつつあるものの、2020年代に入り成長の鈍化が目立ちます。この背景には、気候変動による不安定な降水パターン、土壌劣化、政治的な不安定性、そしてインフラ投資の不十分さが挙げられるでしょう。

今後の課題として、タイの牛乳生産にはいくつかの懸念が見受けられます。まず、気候変動により牛の飼育に重要な牧草地の生育が悪化する可能性があります。また、地域紛争や経済的制約によって酪農技術の普及や更新が遅れるリスクもあります。さらに、バリューチェーン(生産から消費までの流れ)の効率化が依然として国内農業セクターでは重要な課題です。

解決策としては、農業技術の研究開発を進めるとともに、小規模農家にも新技術を通じた支援を行うべきです。また、政府が補助金制度を拡充し、気候適応型農業を奨励することも重要です。さらには、地域間での協力枠組みを強化し、輸出産業としての酪農業の競争力を高める戦略も必要です。これらの対策に加えて、SDGs(持続可能な開発目標)に基づいた計画を酪農分野でも推進し、国際的な枠組みに貢献することが、タイが成長を続けるための鍵となるでしょう。

タイの牛乳生産の推移は、単なる数字の増加だけでなく、経済や社会の変化、そして地政学的なリスクも反映した重要な指標です。2024年以降も、持続的な成長を確保するため、地域的、政策的な課題に的確に対応することが期待されます。