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タイのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タイのブドウ生産量は1961年に650トンと控えめな規模であったものの、長期的には一貫して増加傾向にあります。1970年代後半から1980年代前半にかけて急増し、2000年代以降は安定的な成長を見せています。2023年には80,899トンに達し、過去最高記録が更新されました。このデータは、タイの農業発展や市場需要の変化がブドウ生産にどのような影響を与えたのかを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 80,899
1.49% ↑
2022年 79,714
-0.16% ↓
2021年 79,841
0.42% ↑
2020年 79,509
-0.36% ↓
2019年 79,794
-0.53% ↓
2018年 80,219
2.17% ↑
2017年 78,513
-2.65% ↓
2016年 80,650
4.04% ↑
2015年 77,520
0.19% ↑
2014年 77,370
-2.38% ↓
2013年 79,260
1.46% ↑
2012年 78,120
-0.43% ↓
2011年 78,458
1.52% ↑
2010年 77,285
2.5% ↑
2009年 75,403
2.88% ↑
2008年 73,289
2.41% ↑
2007年 71,561
1.85% ↑
2006年 70,261
2.62% ↑
2005年 68,468
44.25% ↑
2004年 47,465
-16.48% ↓
2003年 56,831
12.61% ↑
2002年 50,469
5.73% ↑
2001年 47,733
8.53% ↑
2000年 43,983
10.28% ↑
1999年 39,884
25.91% ↑
1998年 31,677
-6.28% ↓
1997年 33,800
-16.5% ↓
1996年 40,480
-0.27% ↓
1995年 40,590
1.48% ↑
1994年 40,000
14.29% ↑
1993年 35,000
16.67% ↑
1992年 30,000
25% ↑
1991年 24,000
25.35% ↑
1990年 19,147
-0.55% ↓
1989年 19,253
24.26% ↑
1988年 15,494
-5.11% ↓
1987年 16,328
-35.94% ↓
1986年 25,489
15.86% ↑
1985年 22,000
15.79% ↑
1984年 19,000
12.17% ↑
1983年 16,939
16.82% ↑
1982年 14,500
-20.33% ↓
1981年 18,200
-13.33% ↓
1980年 21,000
43.84% ↑
1979年 14,600
62.22% ↑
1978年 9,000
28.57% ↑
1977年 7,000
150% ↑
1976年 2,800
3.7% ↑
1975年 2,700 -
1974年 2,700
28.57% ↑
1973年 2,100
5% ↑
1972年 2,000
17.65% ↑
1971年 1,700
30.77% ↑
1970年 1,300 -
1969年 1,300
100% ↑
1968年 650 -
1967年 650 -
1966年 650 -
1965年 650 -
1964年 650 -
1963年 650 -
1962年 650 -
1961年 650 -

タイのブドウ生産量の推移を分析すると、まず目を引くのは、1961年から1970年まで続いた非常に安定した生産量(650トン)です。この期間、タイは主に稲作などの伝統的な農業に注力していましたが、1970年代に入るとブドウの需要増加や栽培技術の進展、さらに輸出拡大の兆しが、ブドウ栽培という新興分野への投資を後押ししました。その結果、1977年には7,000トンと飛躍的な増加が見られ、1980年には21,000トンに達しました。

しかし、1980年代は生産量の変動が顕著で、一部の年では大幅な減少が記録されています(例:1987年の16,328トン)。これには、農業政策の変更、天候不順、農作業に従事する労働力の不足といった要因が影響したと考えられます。1990年代半ばになると、再び増加基調に戻り、2000年代以降では安定的な成長が維持されています。特に2005年以降のデータでは70,000トンを上回る安定した生産量が続いており、最新データである2023年には80,899トンと過去最高を更新しています。

タイのブドウ産業の成長背景には、農業インフラの整備と政府の支援策があります。特に、灌漑システムの導入や効率的な耕作管理手法の普及が、生産性向上の要因として挙げられます。また、タイは地理的に果物の栽培に適した多様な気候を持つため、一部の地域で特にブドウ栽培が盛んに行われています。例えば、観光業と結びつけたワイン産業への注力も、近年注目を集めています。

一方で、課題も見逃せません。まず、気候変動による天候の変化や水資源の懸念は、適応的な栽培技術を求められる状況を作り出しています。また、他国との競争も熾烈です。例えば、中国やインドはタイ以上の生産量を誇り、国内消費も輸出市場でも存在感を示しています。中国はすでに1,000万トン以上の生産量を記録しており、主に国内需要を用いることで市場を占有しています。同様に、日本は品質とブランド力を武器に、少量ながら高付加価値の輸出を行っています。

未来の課題としては、新たな農業手法の採用や気候対策を含む持続可能性への配慮、さらには他国に負けない独自の販売戦略が求められます。具体的には、スマート農業と呼ばれる技術の導入が挙げられます。この方法は生産過程をデジタル化し、効率を高めることが期待されます。また、ワイン生産や観光体験と結び付けた農村観光(アグリツーリズム)を推進することで、新たな需要を生み出す可能性もあります。

地政学的リスクに関連して考えると、タイのブドウ生産が地域経済の安定に一定の役割を果たしている点は重要です。東南アジア諸国との農業協力やFTA(自由貿易協定)の活用を通じて、輸出機会を拡大する努力がこれから必要です。一方で、自然災害や地政学的な緊張が農業サプライチェーンに影響するリスクを考慮する必要があります。

結論として、タイのブドウ生産量は安定的に増加している一方で、気候変動や外国競争などの課題があり、長期的な視点での対応が重要です。政府や農家は、生産技術の革新を進めながら、ブランド育成や高付加価値化を目指すことが必要です。そのためには、地域間協力を強化し、持続可能な農業政策を策定することが鍵となるでしょう。