国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、タイのサトイモ生産量は1961年の80,000トンから2022年の102,612トンへと、全体として増加しています。特に2000年代前半以降は顕著な成長を見せており、2010年以降は毎年おおよそ100,000トン前後の生産量を維持しています。ただし、一部で急激な減少や横ばいの時期も観察されており、こうした変動には農業政策や気候条件、さらには国際市場の需要動向が影響している可能性があります。
タイのサトイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 104,183 |
1.53% ↑
|
2022年 | 102,612 |
-0.27% ↓
|
2021年 | 102,894 |
0.17% ↑
|
2020年 | 102,718 |
0.48% ↑
|
2019年 | 102,224 |
-1.46% ↓
|
2018年 | 103,740 |
1.52% ↑
|
2017年 | 102,190 |
1.44% ↑
|
2016年 | 100,740 |
1.52% ↑
|
2015年 | 99,230 |
1.57% ↑
|
2014年 | 97,697 |
2.84% ↑
|
2013年 | 95,000 |
5.56% ↑
|
2012年 | 90,000 |
-0.49% ↓
|
2011年 | 90,443 |
0.49% ↑
|
2010年 | 90,000 |
2.8% ↑
|
2009年 | 87,546 |
2.97% ↑
|
2008年 | 85,017 |
4.34% ↑
|
2007年 | 81,483 |
3.8% ↑
|
2006年 | 78,500 |
0.13% ↑
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2005年 | 78,400 |
7.69% ↑
|
2004年 | 72,800 |
8.33% ↑
|
2003年 | 67,200 |
4.42% ↑
|
2002年 | 64,359 |
4.48% ↑
|
2001年 | 61,600 |
4.53% ↑
|
2000年 | 58,928 |
5.23% ↑
|
1999年 | 56,000 |
1.82% ↑
|
1998年 | 55,000 |
1.85% ↑
|
1997年 | 54,000 |
-0.01% ↓
|
1996年 | 54,005 |
1.9% ↑
|
1995年 | 53,000 |
-1.92% ↓
|
1994年 | 54,037 |
-1.75% ↓
|
1993年 | 55,000 |
0.7% ↑
|
1992年 | 54,615 |
-0.27% ↓
|
1991年 | 54,763 |
-2.21% ↓
|
1990年 | 56,000 |
-0.88% ↓
|
1989年 | 56,500 |
-0.88% ↓
|
1988年 | 57,000 |
-0.87% ↓
|
1987年 | 57,500 |
-0.86% ↓
|
1986年 | 58,000 |
-1.2% ↓
|
1985年 | 58,704 |
-20.59% ↓
|
1984年 | 73,928 |
32.48% ↑
|
1983年 | 55,803 |
-10.09% ↓
|
1982年 | 62,068 |
-24.02% ↓
|
1981年 | 81,691 |
-4.08% ↓
|
1980年 | 85,166 |
5.8% ↑
|
1979年 | 80,500 |
-0.62% ↓
|
1978年 | 81,000 |
-0.61% ↓
|
1977年 | 81,500 |
-0.61% ↓
|
1976年 | 82,000 |
-0.61% ↓
|
1975年 | 82,500 |
-0.6% ↓
|
1974年 | 83,000 |
-0.6% ↓
|
1973年 | 83,500 |
-1.18% ↓
|
1972年 | 84,500 |
0.6% ↑
|
1971年 | 84,000 |
0.6% ↑
|
1970年 | 83,500 |
0.6% ↑
|
1969年 | 83,000 |
0.61% ↑
|
1968年 | 82,500 |
0.61% ↑
|
1967年 | 82,000 |
0.61% ↑
|
1966年 | 81,500 |
0.62% ↑
|
1965年 | 81,000 |
0.62% ↑
|
1964年 | 80,500 |
0.63% ↑
|
1963年 | 80,000 | - |
1962年 | 80,000 | - |
1961年 | 80,000 | - |
タイのサトイモ生産量の推移データを見ると、その動向からいくつかの重要な特徴と課題を読み取ることができます。1961年から1979年までの期間では、毎年ほぼ一定の80,000~83,500トンの生産量が維持されていました。この安定した水準は、当時の伝統的な農法と地域の消費需要を反映しているものと考えられます。1980年には一時的に85,166トンまで急増しますが、その後1983年に55,803トンと急激に減少しました。この減少は、洪水や干ばつなどの自然災害、農作物価格の低下、加えて市場需給の変化などの要因による可能性があります。
1984年から1990年代末までの間では、年間40,000~60,000トンという低めの生産水準に落ち着いており、特に安定した成長が見られません。この時期は、タイ国内で他の作物の需要が高まりサトイモが相対的に重要視されなかったこと、あるいは農業政策の優先順位の変更が影響を及ぼしていたと考えられます。またこの期間には世界的な農業市場の変化も影響を与えた可能性があります。例えば、タイ近隣諸国のインドや中国におけるサトイモ生産量の拡大が、地域間競争を引き起こしたことも一因かもしれません。
2000年代に入り、タイのサトイモ生産量は再び増加傾向を示し始めます。2000年から2018年にかけての生産量は毎年堅実に増加し、特に2004年以降は急速に回復しました。これは土壌改善や水管理技術の発展、そして国内外の需要増加による農業インセンティブ拡充によるものと推測されます。この間、韓国や日本などの近隣国での伝統的な食材需要が増えたことも、輸出市場の成長を後押しした可能性があります。
2010年以降、タイのサトイモ生産量は毎年約90,000トンから100,000トンを上回る安定した水準が続いています。特に2017年以降は、102,000トンを軸に横ばいの傾向を見せています。しかし、この安定の背景にはいくつかの課題が潜んでいる可能性もあります。例えば、高度化した農業技術への依存によりコストが増大している点や、気候変動によるリスク、さらにはサトイモ市場価格の変動による農家収益への影響が懸念されます。特に近年の気温上昇や降水パターンの変化は、生産量に対する潜在的なリスクとして無視できない要素です。
地政学的背景についても言及が必要です。タイは東南アジアの農業大国として、日本や中国、さらには欧米諸国に向けた農産物輸出の要となっています。そのため、他国の貿易政策や為替動向にも強い影響を受ける可能性があります。また、新型コロナウイルスによる国際貿易のストップは、生産過剰や輸出減少につながり、これが今後のサトイモ農家に対する経済的な圧力となる可能性があります。
未来に向けた提言としては、持続可能な農業の実現が一つの重要な課題となります。例えば、気候レジリエンス(災害や気候変動からの復旧能力)を考慮した農法の導入や、農家の所得向上を目指した政府支援の強化が考えられます。具体的には、精密農業技術の拡大や、ICTを活用した市場情報の透明性向上、さらに輸出先の多角化によるリスク回避などが挙げられます。タイ政府は地域ごとの降水量や土地条件に基づく生産計画を策定し、農地の効率的な利用や水資源の管理を進めるべきです。また、農業協同組合の活用や地域間連携による輸送コスト削減など、サプライチェーン全体の効率化も欠かせない要素です。
最終的に、タイのサトイモ生産業は成長基調にありますが、自然災害や国際市場の変化といった外的要因には柔軟に対応する必要があります。サトイモは重要な地域資源であるだけでなく、国際的な農業市場における貴重な輸出品でもあるため、適切な政策と技術投資によってその成長をさらに促進し、農村地域の繁栄にも寄与するでしょう。