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タイのキノコ・トリュフ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関が2024年に更新したデータによると、タイのキノコおよびトリュフの生産量は1961年の100トンから1989年には7,000トンへと急激に増加し、その後1990年代には最大9,958トンに達しました。しかし2000年代以降、生産量は極端に減少し、2013年から2018年は1,000トン程度で停滞。さらに2019年以降は一時的に200トン以下まで落ち込みましたが、2023年には約1,147トンと部分的な回復傾向を見せています。このデータは、タイの農業政策、生産技術、環境条件、そして市場の動向の影響を大きく受けていることを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,147
564.39% ↑
2022年 173
-3.2% ↓
2021年 178
-3.08% ↓
2020年 184
-4.16% ↓
2019年 192
-85.71% ↓
2018年 1,343
6.26% ↑
2017年 1,264
6.69% ↑
2016年 1,184
7.21% ↑
2015年 1,105
10.47% ↑
2014年 1,000 -
2013年 1,000
-50% ↓
2012年 2,000
-50% ↓
2011年 4,000
-30.32% ↓
2010年 5,740
-19.41% ↓
2009年 7,123
-11.26% ↓
2008年 8,026
-8.66% ↓
2007年 8,787
-6.01% ↓
2006年 9,349
-4.54% ↓
2005年 9,794
-2.06% ↓
2004年 10,000
-0.14% ↓
2003年 10,014
0.56% ↑
2002年 9,958
1.61% ↑
2001年 9,800
3.16% ↑
2000年 9,500
1.78% ↑
1999年 9,334
1.46% ↑
1998年 9,200
2.22% ↑
1997年 9,000
-0.89% ↓
1996年 9,081
-1.29% ↓
1995年 9,200
0.86% ↑
1994年 9,121
1.35% ↑
1993年 9,000 -
1992年 9,000
0.3% ↑
1991年 8,973
0.82% ↑
1990年 8,900
27.14% ↑
1989年 7,000
40% ↑
1988年 5,000
150% ↑
1987年 2,000
150% ↑
1986年 800
14.29% ↑
1985年 700
27.27% ↑
1984年 550
10% ↑
1983年 500
11.11% ↑
1982年 450
12.5% ↑
1981年 400
11.11% ↑
1980年 360
9.09% ↑
1979年 330
10% ↑
1978年 300
15.38% ↑
1977年 260
4% ↑
1976年 250
4.17% ↑
1975年 240
4.35% ↑
1974年 230
4.55% ↑
1973年 220
4.76% ↑
1972年 210
5% ↑
1971年 200
5.26% ↑
1970年 190
5.56% ↑
1969年 180
5.88% ↑
1968年 170
6.25% ↑
1967年 160
6.67% ↑
1966年 150
7.14% ↑
1965年 140
7.69% ↑
1964年 130
8.33% ↑
1963年 120
9.09% ↑
1962年 110
10% ↑
1961年 100 -

タイのキノコおよびトリュフの生産量データは、1961年から2023年までの60年以上にわたり大きな変動を示しています。この変化は、国内の農業政策の方針や農村経済の発展、地球規模の環境問題や国際市場の需要と供給の影響を反映しています。

1961年の100トンという非常に小規模な生産からスタートしたタイのキノコ・トリュフ生産は、1980年代後半まで着実な成長を遂げました。特に1987年から1988年にかけて2,000トンから5,000トンへの急拡大は、市場需要の増加と、それに対応するための政策支援が奏効した結果と考えられます。その後1990年代において生産量は最大のピークとなる約10,000トンに到達し、輸出などを通じてタイ国内外の市場において存在感を示しました。この期間の生産増加は、他国と比較しても際立った成功と言えます。例えば、同時期の近隣諸国である中国やベトナムはキノコ栽培を本格的に導入し始めた段階であり、タイは周辺地域の先駆け的存在でした。

しかし、2000年代以降、タイの生産量は急激に落ち込みました。2003年には10,014トンと依然高水準を維持していましたが、2007年以降、9,000トンを下回り、2009年には7,123トンまで減少。その後、2013年にはわずか1,000トンまで激減しました。この減少は複合的な要因に起因していると考えられます。まず、農地の都市化やインフラ整備が進み、農業に割ける土地が縮小した可能性があります。また、地球温暖化による気候変動が特定のキノコの栽培条件に悪影響を及ぼした可能性も見逃せません。さらに、2000年代には世界的に経済競争が激化し、人件費や生産資材の価格上昇が生産コストを圧迫したことも考慮すべき点です。

COVID-19パンデミックの影響も否めません。特に2020年から2022年にかけて、生産量は200トンを下回る非常に低水準に留まりました。この時期、タイ国内では物流や労働力の確保が困難になるなど、農業全体が深刻な影響を受けました。ただし、2023年には1,147トンへの回復が見られ、これは経済再開や新たな栽培技術の導入といった要因が寄与したと推測されます。

タイのキノコ・トリュフ生産に関する課題は明確です。まず、環境要因への適応が急務です。地球規模の気候変動や土壌の劣化が進む中、キノコ栽培に適した種の研究や、それに基づく気候対応型の栽培技術の開発が求められます。また、国際市場における競争力を高めるためには、他国との協力や技術移転も不可欠です。例えば、中国は独自の品種改良技術で巨大な生産シェアを持っています。この成功事例を学びつつ、高付加価値の商品開発や生産拡大のノウハウの共有を目指した国際交流を進めるべきです。

さらに、安定した生産体制を確保するための農業政策の再構築も重要です。政府補助金の導入や、農業共同体の形成による資源の効率的活用を進めることで、持続可能な生産を後押しできるでしょう。加えて、輸出拡大のためのマーケティング戦略を強化し、タイ産キノコおよびトリュフの品質や価値向上を世界にアピールすることが求められます。

このデータから読み取れるように、タイのキノコ・トリュフ生産はかつて一時的に世界市場をリードしましたが、現在では回復途上にあり、多くの課題に直面しています。これを機に、国際的な協力と革新的な生産技術の導入を通じて、タイ特有の多様な農業資源を最大限に活かすことにより、今後の安定成長を実現すべきでしょう。