タイの鶏飼養数推移を示すデータによると、1961年には約39,377羽であった鶏飼養数が、長期的な増加を経て2022年には289,778羽にまで達しています。特に1980年代以降、鶏飼養数は急増しており、1990年台前半から中盤にかけて顕著な上昇を見せました。一方で、2005年には急激な減少がみられましたが、その後は回復基調にあります。このような増減の背後には、産業の発展や疾病流行、政策の影響が大きく関わっていると考えられます。
タイの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 289,778.00 |
2021年 | 283,886.00 |
2020年 | 279,999.00 |
2019年 | 276,164.00 |
2018年 | 272,699.00 |
2017年 | 270,998.00 |
2016年 | 276,482.00 |
2015年 | 272,202.00 |
2014年 | 266,962.00 |
2013年 | 259,242.00 |
2012年 | 247,202.00 |
2011年 | 240,712.00 |
2010年 | 231,918.00 |
2009年 | 228,207.00 |
2008年 | 219,150.00 |
2007年 | 209,105.00 |
2006年 | 203,201.00 |
2005年 | 187,371.00 |
2004年 | 250,955.00 |
2003年 | 241,087.00 |
2002年 | 235,233.00 |
2001年 | 232,714.00 |
2000年 | 224,726.00 |
1999年 | 212,390.00 |
1998年 | 204,889.00 |
1997年 | 197,104.00 |
1996年 | 180,484.00 |
1995年 | 172,370.00 |
1994年 | 165,095.00 |
1993年 | 167,709.00 |
1992年 | 163,755.00 |
1991年 | 130,837.00 |
1990年 | 107,559.00 |
1989年 | 89,405.00 |
1988年 | 86,679.00 |
1987年 | 84,495.00 |
1986年 | 79,265.00 |
1985年 | 78,717.00 |
1984年 | 78,198.00 |
1983年 | 78,189.00 |
1982年 | 65,206.00 |
1981年 | 63,264.00 |
1980年 | 56,043.00 |
1979年 | 60,540.00 |
1978年 | 65,324.00 |
1977年 | 56,306.00 |
1976年 | 49,889.00 |
1975年 | 53,860.00 |
1974年 | 47,805.00 |
1973年 | 61,816.00 |
1972年 | 52,782.00 |
1971年 | 53,976.00 |
1970年 | 58,791.00 |
1969年 | 56,100.00 |
1968年 | 53,661.00 |
1967年 | 51,338.00 |
1966年 | 49,126.00 |
1965年 | 47,020.00 |
1964年 | 45,014.00 |
1963年 | 43,103.00 |
1962年 | 41,192.00 |
1961年 | 39,377.00 |
タイの鶏飼養数の推移の分析を通じて、同国における家禽(かきん)産業の動向と関連する課題を考察します。1961年の39,377羽から始まり、2022年には289,778羽に至るまで、タイにおける鶏飼養数は約7倍に伸びています。この増加は、タイの食肉需要の高まりや輸出市場への参入拡大、政府の農業政策などによる影響を受けたものと考えられます。
特に1980年代から1990年代にかけて、鶏飼養数の増加は傾斜を強めており、1990年には過去のピークである107,559羽を記録しました。1991年から2004年にかけて、更なる大幅な増加が続き、2004年には250,955羽と記録的な数値に達しました。この背景には、世界的な鶏肉消費の需要拡大と、それに伴う産業化の推進が影響していると考えられます。これは例えばアジア地域全体で鶏肉消費が増加していたことや、タイが主要輸出国として成長していたことと一致しています。
とはいえ、2005年には187,371羽と大幅に減少しています。この時期には、鳥インフルエンザの大流行がタイはじめ多くのアジア諸国を直撃し、家禽農場への大きな影響を与えました。その後、2006年以降は鶏飼養数が回復傾向に転じ、約20年の長期安定成長期に突入しています。2022年には289,778羽と、過去最高の数字を達成しました。
地政学的背景も考慮する必要があります。タイは鶏肉の主要な輸出国であり、特に日本やヨーロッパ諸国が重要な市場となっています。輸出先国の規制や貿易政策は、タイの養鶏産業に直接的な影響を与えており、例えば食品安全基準や動物福祉基準へ対応するため、継続的な努力が求められます。また、地元市場においても需要拡大が続く中で、農村部の生産性向上が鍵を握る課題と見られます。
課題としては、動物疾患の予防が依然として重要なテーマとなります。鶏インフルエンザなどの伝染病が再発した場合、鶏飼養数や関連産業への大きな経済的損失が予測されます。このため、家禽農業における予防衛生策の強化や、感染拡大を最小限に抑える迅速な対応体制の構築が求められます。また、気候変動による影響により、家禽の生育に影響を及ぼす可能性も出てきています。
未来に向けた具体的な対策としては、国家レベルおよび地域レベルでの養鶏関連技術の導入が挙げられます。たとえば、飼養環境を改善するための技術革新や、持続可能な飼料供給の確保が重要です。また、輸出市場の多様化を進め、特定の地域依存からの脱却を目指すべきです。さらに、国際基準に対応する農業インフラや検査体制の強化が不可欠といえます。国際機関との協力も視野に入れるべきで、災害時の復興支援や農業教育プログラムの展開により、持続可能な産業としての養鶏の発展が期待されます。
結論として、タイの鶏飼養数が過去数十年間で着実に伸び、今後も成長が見込まれる一方で、疾病予防、貿易政策対応、技術導入、気候変動適応といった課題に対応することが急務とされます。タイ国内の持続的成長と国際競争力の向上のためには、政府・産業界・研究機関が連携してこれらの問題に取り組む姿勢が重要です。