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タイのスイカ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タイのスイカの生産量は、1960年代から1980年代にかけて大幅に増加した後、1980年代半ば以降は停滞を見せる期間が続きました。特に2010年代以降は急激に減少し、2020年代に入る頃には長期的な低迷状態に入っています。最新の2023年の生産量は166,561トンで、過去のピークと比べて非常に低い数値です。このような生産量の推移は多くの要因が複雑に絡み合った結果と考えられ、今後の課題と対策が問われています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 166,561
38.08% ↑
2022年 120,628
-24.53% ↓
2021年 159,830
-0.11% ↓
2020年 160,000 -
2019年 160,000
-2.22% ↓
2018年 163,636
-1.42% ↓
2017年 166,000
0.37% ↑
2016年 165,389
-0.54% ↓
2015年 166,286
4.72% ↑
2014年 158,790
16.61% ↑
2013年 136,171
-47.22% ↓
2012年 258,010
-34.38% ↓
2011年 393,159
-25.51% ↓
2010年 527,836
-9.02% ↓
2009年 580,188
-13.59% ↓
2008年 671,440
-19.09% ↓
2007年 829,885
4.97% ↑
2006年 790,559
21.94% ↑
2005年 648,343
45.1% ↑
2004年 446,813
23.93% ↑
2003年 360,527
-31.13% ↓
2002年 523,461
13.11% ↑
2001年 462,781
9.41% ↑
2000年 422,973
5.74% ↑
1999年 400,000
2.56% ↑
1998年 390,000
1.06% ↑
1997年 385,911
0.24% ↑
1996年 385,000
-1.28% ↓
1995年 390,000
-0.51% ↓
1994年 392,000
-0.76% ↓
1993年 395,000
0.77% ↑
1992年 392,000
0.51% ↑
1991年 390,000
2.63% ↑
1990年 380,000
-1.55% ↓
1989年 386,000
0.52% ↑
1988年 384,000
0.52% ↑
1987年 382,000
0.53% ↑
1986年 380,000
-0.21% ↓
1985年 380,795
-2.78% ↓
1984年 391,665
-15.32% ↓
1983年 462,545
-50.87% ↓
1982年 941,482
28.31% ↑
1981年 733,771
16.22% ↑
1980年 631,372
2.81% ↑
1979年 614,145
28.82% ↑
1978年 476,764
7.08% ↑
1977年 445,230
-31.82% ↓
1976年 653,055
10.94% ↑
1975年 588,632
21.36% ↑
1974年 485,046
-0.39% ↓
1973年 486,957
15.39% ↑
1972年 422,000
-1.49% ↓
1971年 428,379
18.6% ↑
1970年 361,203
-41.81% ↓
1969年 620,764
38.01% ↑
1968年 449,782
24.94% ↑
1967年 360,000
30.52% ↑
1966年 275,816
41.78% ↑
1965年 194,532
13.55% ↑
1964年 171,323
-7.66% ↓
1963年 185,527
57.2% ↑
1962年 118,016
0.95% ↑
1961年 116,900 -

タイのスイカ生産量のデータをたどると、1960年代から1980年代初頭にかけては驚異的な増加を記録しました。1961年の116,900トンから1969年には620,764トンへと大幅に拡大し、1982年には941,482トンというピークに達しました。この時期の生産量増加は、農業技術の進展や市場需要の拡大、輸出市場の開拓などの要素が寄与したと考えられます。しかしながら、この後は一転して生産量が抑えられるようになり、特に1983年以降はより明確な減少傾向が現れ始めました。

1990年代以降には、年間生産量が約380,000~400,000トンで安定する時期が続きましたが、これはおそらく国内での需要と供給のバランスが背景にあると推測されます。ただし、2000年代の半ば頃から再び増加が見られたものの、それも2007年の829,885トンを最大値として、その後は再び不安定な状況に戻りました。そして2010年代には、急速な減少が顕著に表れるようになり、特に2013年以降には1960年代の後半の水準を下回る数値にまで縮小しました。最新の2023年には166,561トンと、極めて低い水準にとどまっています。

このような変動には、多様な要因が関与していると考えられます。地球温暖化といった気候変動の影響がスイカ栽培に適した環境を劣化させた可能性や、国内農業従事者の減少、特に都市部への人口移動や高齢化がもたらす労働力不足も一因かもしれません。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを含む最近の世界的な危機は、農業サプライチェーンを混乱させ、輸出に重点を置いた作物生産に悪影響を及ぼした可能性があります。さらに、スイカよりも収益性の高い作物への転換も一部の農家で進んでいると考えられます。

地政学的な背景については、タイが他の主要輸出市場、特に中国の需要変化に左右されやすい位置にあることも見逃せません。中国や他の近隣諸国も独自にスイカの生産を増強しているため、国際市場での競争が激化し、タイのスイカ生産業が影響を受けた可能性が示唆されます。

このような状況を受けて、いくつかの対策が考えられます。一つは、より耐候性のあるスイカ品種の開発と普及です。気候変動に対応できる農作物の育成は、タイのみならず世界全体で喫緊の課題となっています。また、農業技術の高度化やデジタル化、効率的な灌漑技術の導入は、農業生産性を向上させ、限られた資源を有効に活用する助けになります。さらに、農業分野への若者の参入を促進する政策や、スイカを用いた加工食品の生産を含む付加価値の高いビジネスモデルを政府や民間が推進することも戦略の一つです。

最後に、地域間の協力も極めて重要です。ASEAN諸国や他国との農業技術や政策経験の共有、さらには貿易協定による市場の安定確保などが、将来的にタイのスイカ産業の復活を可能にする鍵となるでしょう。これらの多角的なアプローチが今後成功すれば、タイのスイカ生産量にも安定した回復が期待できるのではないでしょうか。