国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した1961年から2022年にかけてのデータによれば、タイのキャベツ生産量は長期間にわたり大きな変動を見せています。1980年代から1990年代にかけては緩やかな増加傾向が見られ、2000年代初期には一時的に飛躍的な増加を記録しました。しかしながら、2010年代以降は徐々に減少しており、特に2022年にはわずか215,062トンと、この期間の中で最も生産量の少ない水準の一つに達しています。
タイのキャベツ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 215,062 |
2021年 | 261,192 |
2020年 | 270,000 |
2019年 | 270,000 |
2018年 | 278,903 |
2017年 | 271,350 |
2016年 | 268,340 |
2015年 | 256,700 |
2014年 | 248,440 |
2013年 | 242,817 |
2012年 | 392,589 |
2011年 | 490,660 |
2010年 | 549,877 |
2009年 | 496,374 |
2008年 | 495,576 |
2007年 | 479,998 |
2006年 | 478,456 |
2005年 | 449,025 |
2004年 | 482,364 |
2003年 | 517,811 |
2002年 | 854,253 |
2001年 | 610,470 |
2000年 | 641,304 |
1999年 | 200,000 |
1998年 | 220,000 |
1997年 | 198,000 |
1996年 | 195,000 |
1995年 | 210,000 |
1994年 | 205,000 |
1993年 | 195,000 |
1992年 | 194,000 |
1991年 | 193,000 |
1990年 | 194,000 |
1989年 | 193,000 |
1988年 | 192,000 |
1987年 | 191,000 |
1986年 | 190,000 |
1985年 | 189,707 |
1984年 | 170,537 |
1983年 | 171,061 |
1982年 | 151,532 |
1981年 | 160,996 |
1980年 | 148,557 |
1979年 | 104,000 |
1978年 | 135,000 |
1977年 | 135,000 |
1976年 | 142,000 |
1975年 | 181,000 |
1974年 | 160,000 |
1973年 | 160,000 |
1972年 | 180,000 |
1971年 | 173,500 |
1970年 | 174,000 |
1969年 | 174,000 |
1968年 | 173,500 |
1967年 | 173,500 |
1966年 | 173,000 |
1965年 | 161,800 |
1964年 | 167,200 |
1963年 | 171,300 |
1962年 | 134,200 |
1961年 | 108,900 |
FAOの長期データを通してタイにおけるキャベツ生産の推移を分析すると、いくつかの重要なトレンドが伺えます。まず、1961年当初の10万トン程度から1970年代にかけて生産は緩やかに伸び、その後1980年代半ばまで安定的に18万トン前後で推移しました。この時期のキャベツ生産は、国内消費向けへの供給を主目的としており、主に高原地域の適した気候条件を活かした農業手法が寄与しました。
1990年代以降には農業の機械化やインフラ整備、さらには農業政策の改善による収穫効率の向上が背景にあり、キャベツ生産量は順調に伸び、さらに2000年には記録的な641,304トン、2002年には854,253トンのピークに達しました。このような増産の背景には、国際マーケットへの輸出需要の高まりと国内人口の増加に伴う野菜需要の拡大がありました。しかしながら2000年代中盤以降、気候変動の影響や土地利用の変化、農業資源への競争が顕在化し、キャベツ生産量は再び減少基調に転じました。
特に2012年からの10年間は、厳しい減少が続きました。2012年の392,589トンから2022年の215,062トンへの急激な低下は、新型コロナウイルスの感染拡大による労働力不足や流通混乱、また近年の洪水や干ばつといった自然災害が影響を及ぼした可能性が高いと考えられます。さらに、他の主要農産物との競争や土地開発による農業用地の減少も一因に挙げられます。
タイのキャベツ生産の減少は、地域的にはラオスやベトナム、中国南部といった近隣国におけるキャベツ農業の台頭とも競争環境に影響を与えています。これら近隣諸国では気候や地形の類似性を活用し、比較的安価な商品を市場に供給しています。この競争環境の中で、タイの生産者はより良質で高付加価値な商品を市場に提供するか、または生産効率をさらに高める必要性に直面しています。
今後の課題として、気候変動への対応が不可欠です。持続可能な農業技術の採用、例えば、水管理技術や土壌改良の利用、生物多様性を保護する有機栽培の推進が求められます。また、政策面では農民への補助金や災害に対応した保険制度の整備が進められるべきです。さらに、輸出の競争力を高めるため、高品質なキャベツを作るための研究開発を進めることも重要です。加えて、経済連携協定を通じた近隣国との協力と競争のバランスをとる外交が求められるでしょう。
結論として、タイのキャベツ生産量が現在の減少傾向を示している点を踏まえると、国内外の需要変化や環境問題に適応するための農業改革が急務と言えます。こうした取り組みを講じることにより、タイは国内農業の安定とキャベツを含む輸出農産物の競争力を維持し、新たな経済的チャンスを掴むことが可能となるでしょう。