Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、タイのヤギ肉生産量は1960年代の年間約150トン程度から2023年の1,911トンまで、着実に増加してきました。特に2000年以降、生産量は急増しており、需要の高まりや産業構造の変化が背景にあると考えられます。一方で、一部の年では生産量の減少も見られ、その理由についても考察が必要です。
タイのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,911 |
2.58% ↑
|
2022年 | 1,863 |
0.73% ↑
|
2021年 | 1,850 |
0.72% ↑
|
2020年 | 1,836 |
-0.91% ↓
|
2019年 | 1,853 |
3.44% ↑
|
2018年 | 1,792 |
-0.03% ↓
|
2017年 | 1,792 |
1.48% ↑
|
2016年 | 1,766 |
1.23% ↑
|
2015年 | 1,745 |
-4.82% ↓
|
2014年 | 1,833 |
-0.65% ↓
|
2013年 | 1,845 |
1.65% ↑
|
2012年 | 1,815 |
15.24% ↑
|
2011年 | 1,575 |
10.53% ↑
|
2010年 | 1,425 | - |
2009年 | 1,425 |
2.15% ↑
|
2008年 | 1,395 |
-15.45% ↓
|
2007年 | 1,650 |
37.5% ↑
|
2006年 | 1,200 |
-5.33% ↓
|
2005年 | 1,268 |
14.97% ↑
|
2004年 | 1,103 |
37.38% ↑
|
2003年 | 803 |
0.19% ↑
|
2002年 | 801 |
-5.65% ↓
|
2001年 | 849 |
30.72% ↑
|
2000年 | 650 |
8.25% ↑
|
1999年 | 600 |
1.78% ↑
|
1998年 | 590 |
4.52% ↑
|
1997年 | 564 |
28.33% ↑
|
1996年 | 440 |
-26.75% ↓
|
1995年 | 600 |
-5.49% ↓
|
1994年 | 635 |
-6.34% ↓
|
1993年 | 678 |
-5.58% ↓
|
1992年 | 718 |
17.28% ↑
|
1991年 | 612 |
12.95% ↑
|
1990年 | 542 |
11.48% ↑
|
1989年 | 486 |
37.56% ↑
|
1988年 | 353 |
-1.51% ↓
|
1987年 | 359 |
-0.75% ↓
|
1986年 | 362 |
-0.58% ↓
|
1985年 | 364 |
9.72% ↑
|
1984年 | 331 |
25.85% ↑
|
1983年 | 263 |
19.71% ↑
|
1982年 | 220 |
30.12% ↑
|
1981年 | 169 |
-32.39% ↓
|
1980年 | 250 |
-16.44% ↓
|
1979年 | 299 |
5.33% ↑
|
1978年 | 284 |
6.76% ↑
|
1977年 | 266 |
10.5% ↑
|
1976年 | 241 |
10.95% ↑
|
1975年 | 217 |
60.78% ↑
|
1974年 | 135 |
-3.23% ↓
|
1973年 | 140 |
-3.13% ↓
|
1972年 | 144 |
-3.03% ↓
|
1971年 | 149 |
-2.94% ↓
|
1970年 | 153 |
-2.86% ↓
|
1969年 | 158 |
-2.78% ↓
|
1968年 | 162 |
-4.17% ↓
|
1967年 | 169 |
-3.68% ↓
|
1966年 | 176 |
-2.5% ↓
|
1965年 | 180 |
-1.23% ↓
|
1964年 | 182 |
-1.22% ↓
|
1963年 | 185 |
52.8% ↑
|
1962年 | 121 |
-13.44% ↓
|
1961年 | 140 | - |
タイのヤギ肉生産量は、1961年の140トンから2023年の1,911トンに至るまで着実に増加しました。特に、2000年以降の伸びが顕著であり、例えば2000年から2007年の間に650トンから1,650トンまで約2.5倍に増加しています。この成長は、経済発展や地域の食文化の変化、国外市場の需要拡大、さらには畜産技術の向上などの要因によるものと推察されます。
一方で、データから注目すべきは、生産量が一貫して増加しているわけではない点です。例えば、1980年代から1990年代には波状的な変動が見られます。この時期は、世界的な農産物市場の動揺や地域的な経済状況の悪化が影響している可能性があります。また、1983年から1991年にかけて急速に増大した生産量(当時263トンから612トン)の背景には、政府による畜産業振興政策が影響した可能性があります。同様に、1996年から1997年に一度落ち込んだ生産量が1998年以降に回復し安定化していく過程を見ると、国内外の市場需要に対応した調整が行われたことが伺えます。
ヤギ肉は、現在のタイ国内の畜産業において重要な産品となっています。特に、イスラム教徒を含む特定の宗教・文化圏での需要が高いことや、近隣アジア諸国への輸出量の増加が、近年の生産量増加の主要な推進力となっています。さらに、気候変動による他の家畜の飼育コストの高騰に対し、飼育が比較的低コストで済むヤギが選好される傾向があることも、タイのヤギ肉産業を押し上げている要因と考えられます。
しかしながら、いくつかの課題も浮上しています。まず、生産増加のペースに対して持続可能性をどのように確保するかが問われています。ヤギの過剰な飼育による土地荒廃や農村部の生態系への影響は無視できません。また、国内でのヤギ肉需要の成長だけでなく、貿易関係の変動や国際的な市場競争、さらには疫病リスクの管理も重要です。とりわけ、近年の新型コロナウイルスのパンデミックは畜産物の貿易流通に大きな影響を与え、この生産チェーンの脆弱性を明らかにしました。
今後、タイがこの産業をさらに発展させるためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず、小規模農家への資金援助や技術サポートを拡充することで、地域全体の生産効率を向上させる必要があります。加えて、市場の多様化に向け、地域を超えた輸出戦略や国際的な認証制度への取り組みを進めることが考えられます。また、地政学的なリスク、特に隣国との貿易摩擦や国際情勢の変化にも柔軟に対応するため、地域間協力や輸送インフラの強化が求められます。
最終的に、これらの課題と向き合いながらも、タイの畜産業はヤギ肉生産を通じた経済成長と持続可能な発展を両立させる可能性を秘めています。国際的な協力の枠組みを利用し、より高度な生産と安定的な供給体制の確立に努めることが、今後の成長における重要な鍵になるでしょう。