国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、タイの羊肉生産量は1961年の61トンから2023年には142トンまで推移してきました。この期間中、一時的に生産量が増加した時期もありましたが、1993年の575トンをピークにその後は減少傾向が続き、直近では小幅ながらも低い水準となっています。近年では、2020年以降、年間生産量が150トン前後で推移しています。
タイの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 142 |
-7.04% ↓
|
2022年 | 153 |
-1.46% ↓
|
2021年 | 155 |
-1.72% ↓
|
2020年 | 158 |
-0.2% ↓
|
2019年 | 158 |
-5.57% ↓
|
2018年 | 167 |
-12.35% ↓
|
2017年 | 191 |
12.51% ↑
|
2016年 | 170 |
4.09% ↑
|
2015年 | 163 |
19.9% ↑
|
2014年 | 136 |
-57.1% ↓
|
2013年 | 317 |
96.89% ↑
|
2012年 | 161 |
130% ↑
|
2011年 | 70 |
-39.66% ↓
|
2010年 | 116 |
-40.82% ↓
|
2009年 | 196 |
-21.6% ↓
|
2008年 | 250 |
41.24% ↑
|
2007年 | 177 |
15.69% ↑
|
2006年 | 153 |
9.29% ↑
|
2005年 | 140 |
-41.67% ↓
|
2004年 | 240 |
-5.88% ↓
|
2003年 | 255 |
13.33% ↑
|
2002年 | 225 |
-6.25% ↓
|
2001年 | 240 |
14.29% ↑
|
2000年 | 210 |
-5.41% ↓
|
1999年 | 222 |
-1.33% ↓
|
1998年 | 225 |
-6.25% ↓
|
1997年 | 240 |
-20% ↓
|
1996年 | 300 |
-28.57% ↓
|
1995年 | 420 |
-14.06% ↓
|
1994年 | 489 |
-15.07% ↓
|
1993年 | 575 |
-31.13% ↓
|
1992年 | 836 |
18.94% ↑
|
1991年 | 702 |
3.71% ↑
|
1990年 | 677 |
4.28% ↑
|
1989年 | 650 |
12.06% ↑
|
1988年 | 580 |
35.34% ↑
|
1987年 | 428 |
30.96% ↑
|
1986年 | 327 |
25.58% ↑
|
1985年 | 260 |
28.97% ↑
|
1984年 | 202 |
36.85% ↑
|
1983年 | 148 |
21.42% ↑
|
1982年 | 122 |
26.56% ↑
|
1981年 | 96 |
-2.14% ↓
|
1980年 | 98 |
-31.34% ↓
|
1979年 | 143 |
71.18% ↑
|
1978年 | 83 |
-5.6% ↓
|
1977年 | 88 |
-41.05% ↓
|
1976年 | 150 |
-53.27% ↓
|
1975年 | 321 |
103.81% ↑
|
1974年 | 158 |
-2.78% ↓
|
1973年 | 162 |
-2.7% ↓
|
1972年 | 167 |
-2.63% ↓
|
1971年 | 171 |
-2.56% ↓
|
1970年 | 176 |
-2.5% ↓
|
1969年 | 180 |
0.88% ↑
|
1968年 | 178 |
145% ↑
|
1967年 | 73 |
7.9% ↑
|
1966年 | 68 | - |
1965年 | 68 | - |
1964年 | 68 | - |
1963年 | 68 |
11.11% ↑
|
1962年 | 61 | - |
1961年 | 61 | - |
タイにおける羊肉の生産は、1961年にわずか61トンでスタートし、1980年代後半から1990年代初頭にかけて急激な増加を見せました。この期間は、ピークに達した1993年の575トンを頂点としており、これは主に国内市場における羊肉需要の増大が影響した結果と考えられます。ただし、1990年代半ば以降は再び減少に転じ、その後も生産量が大幅に回復することはありませんでした。
この生産量の変動には、いくつかの構造的要因が関与しています。まず、タイでは羊肉が主流の食肉として扱われておらず、文化的な食習慣から豚肉や鶏肉の需要が非常に高いことが一因です。また、羊の飼育には適切な牧草地と気候条件が必要ですが、タイの熱帯から熱帯モンスーン地域特有の気候は羊の集約的な飼育に適しているとは言えません。そのほか、政府による積極的な政策支援が行われなかったため、羊肉の生産拡大や輸出産業への転換が限定的に終わった可能性があります。
1993年からの生産量減少はタイ国内での消費需要の先細りに加え、地域間競争や輸入肉の影響が考えられます。タイの近隣諸国、特に中国やインドでは羊肉の需要と生産が拡大していますが、タイがこれらの市場と競争するには生産効率やコストの面で課題が多い状況です。一方で、オーストラリアやニュージーランドからの輸入羊肉の影響により、価格競争力の欠如が国内生産者を圧迫していることもあります。
さらに、近年の羊肉生産量の停滞は、新型コロナウイルスのパンデミックが生じた2020年以降の影響とも関連が推測されます。コロナ禍において、輸送制限や労働力不足、供給網の崩壊が多くの国で食肉産業に大きな影響を及ぼし、羊肉の生産が減少したことが分かります。この後遺症はタイでも見られ、結果的に生産量は低水準に留まっています。また、自然災害や気候変動の問題も近年では含まれており、極端な天候が家畜の生育環境に悪影響を及ぼしている可能性も考えられます。
タイが今後、羊肉産業を改善・拡大するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、地域に適した品種改良の推進や効率的な飼育技術を導入することで、少ないリソースで高い収量を得ることが重要です。また、国内の食文化に羊肉料理を普及させる取り組みや、輸出市場を視野に入れた高品質肉のブランド化も一つの戦略となるでしょう。そして、近隣諸国との農業分野での協力、特にASEAN内での食品安全基準の調整などを進めることで、地域的な競争力を高めることが必要です。
結論として、タイの羊肉生産量は文化的・地理的な制約を抱える中で推移してきましたが、特定の市場ニーズやグローバルな食肉需要の動向を捉えることが、これからの持続的発展に繋がると考えられます。国際機関や地域連携を活用し、持続可能な生産技術や経済政策の支援を受けつつ、国内外における羊肉消費の活性化を目指すことが求められています。