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タイのナス生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関が2024年7月に更新したデータによると、タイのナス生産量は1960年代から2020年代にかけて長期的な変動を示しています。1961年には約50,000トンの生産量で推移していたものが、1980年代後半には約60,000トンを超え、1998年には65,000トンでピークを記録しました。しかし、2000年代初頭以降急激に減少し、2020年代ではおおむね20,000トン台で安定しています。この変動の背後には、農業政策の変化、気候条件、経済情勢、そして地域の地政学的リスクなどが複雑に影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 21,066
0.17% ↑
2022年 21,032
0.48% ↑
2021年 20,931
-1.44% ↓
2020年 21,236
1.48% ↑
2019年 20,927
1.45% ↑
2018年 20,629
-6.88% ↓
2017年 22,153
10.77% ↑
2016年 20,000
1.35% ↑
2015年 19,734
-26.16% ↓
2014年 26,725
3.58% ↑
2013年 25,801
3.87% ↑
2012年 24,839
-17.21% ↓
2011年 30,004
-14.18% ↓
2010年 34,963
2.84% ↑
2009年 33,997
0.59% ↑
2008年 33,798
12.48% ↑
2007年 30,047
99.25% ↑
2006年 15,080
-14.65% ↓
2005年 17,668
-55% ↓
2004年 39,258
-34.39% ↓
2003年 59,839
-10.22% ↓
2002年 66,650
2.38% ↑
2001年 65,102
46.05% ↑
2000年 44,575
-24.17% ↓
1999年 58,780
-9.57% ↓
1998年 65,000
2.74% ↑
1997年 63,266
-1.15% ↓
1996年 64,000
2.34% ↑
1995年 62,538
-0.73% ↓
1994年 63,000
5% ↑
1993年 60,000
-0.48% ↓
1992年 60,288
0.99% ↑
1991年 59,700
1.19% ↑
1990年 59,000
-0.84% ↓
1989年 59,500 -
1988年 59,500
1.88% ↑
1987年 58,400
0.34% ↑
1986年 58,200
0.34% ↑
1985年 58,000
0.87% ↑
1984年 57,500 -
1983年 57,500
0.88% ↑
1982年 57,000 -
1981年 57,000 -
1980年 57,000
0.88% ↑
1979年 56,500 -
1978年 56,500 -
1977年 56,500
0.89% ↑
1976年 56,000 -
1975年 56,000 -
1974年 56,000
1.82% ↑
1973年 55,000 -
1972年 55,000
9.13% ↑
1971年 50,400
0.8% ↑
1970年 50,000
0.2% ↑
1969年 49,900
0.81% ↑
1968年 49,500
0.2% ↑
1967年 49,400
-1.2% ↓
1966年 50,000
6.38% ↑
1965年 47,000
-4.47% ↓
1964年 49,200
-21.9% ↓
1963年 63,000
28.57% ↑
1962年 49,000
-2% ↓
1961年 50,000 -

タイのナス生産量の推移を詳しく見ると、初期の1960年代から1990年代末まで、比較的安定した成長が見られることが特徴です。特に1980年から1998年にかけては毎年増加を記録しており、最盛期の1998年には65,000トンの生産量を達成しました。この当時、タイの農業は主に国内の需要を満たすため、また一部地域では近隣諸国に輸出するために拡大が進められ、ナスの栽培もその例外ではありませんでした。こうした拡大には、肥沃な土地と豊富な水資源、さらに農業従事者の多さといった条件が大きく寄与しました。

一方で、2000年代に入るとナスの生産量は急激な減少に転じました。特に2005年には17,668トン、翌2006年にはさらに15,080トンまで低下しています。この急激な落ち込みの主な原因としては、まず気候変動による干ばつや洪水などの自然災害が挙げられます。また、タイはこの時期に経済的・貿易的な優先順位を変更し、米やゴムといった他の作物の生産を優先したことも影響しています。さらに、農地の都市化による農地面積の減少がこのトレンドに拍車をかけました。この傾向は他の東南アジア諸国、中国、インドなどでも同様に観察されており、都市化と農地の対立は地域全体の課題となっています。

2020年代に入ると、タイのナス生産量は年間約20,000~21,000トンの間で安定しています。この水準は1990年代のピーク時と比較すると約3分の1にとどまる数字ですが、減少傾向が収束し、一定の安定期に入ったと考えられます。しかし、これが需要を十分に満たしているかというと疑問が残ります。近年、健康志向の高まりや伝統的な食文化への回帰傾向の中でナスは重要な食材とされています。また、輸出用商品としてのポテンシャルが未だ十分に活かされていない点も指摘されています。

このような状況を踏まえ、未来に向けた課題と対策をいくつか考察します。まず、農業分野では気候変動への適応能力を高めるため、耐性品種の導入や灌漑設備の強化が必須です。特にタイは気候リスクの高い国であるため、水不足や豪雨への柔軟な対策が求められます。また、現地の農家に対する支援として、技術トレーニングや金融支援を充実させることで、持続可能な農業生産を促進することができます。さらに、都市化に伴う農地の減少に対処するため、都市農業の促進や農村活性化政策が重要です。加えて、国内市場だけでなく輸出市場を活性化させるための国際的なマーケティング戦略の強化も考慮するべきでしょう。この点では、ナスの加工食品開発など付加価値を高める戦略が有効です。

地政学的リスクに関しては、近年、東南アジア地域を含む多くの国々が貿易摩擦や政治的不安定、さらには自然資源争奪などの課題に直面しています。これらはタイの農業輸出にも影響を与える可能性があるため、ASEAN諸国間での連携強化が不可欠です。特に農産物の安定供給を確保するためには、地域間の協力枠組みを構築し、貿易の摩擦を最小限にすることが求められます。

総合的に見て、タイのナス生産量が過去に達成したピークを再び目指すのは難しいかもしれません。しかし、これまでに蓄積された経験と技術を応用し、多様なニーズに対応する柔軟な農業体制を構築することが、今後の持続可能な発展にとって重要です。国際機関や政府による支援と地元農家の努力が協調し、タイの野菜産業を新たなレベルに引き上げることが期待されます。