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タイのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タイのバナナ生産量は1960年代から徐々に増加しており、特に1990年代後半から2000年代にかけて顕著な成長を見せました。しかしながら、2004年以降、大幅な減少や停滞傾向がみられ、2020年代に落ち着きを取り戻しつつあるものの、依然として安定的な成長とは言えません。2022年の生産量は1,288,313トンであり、ピーク時の2002年(2,060,508トン)と比較すると大幅に減少しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,296,870
0.66% ↑
2022年 1,288,313
-4.11% ↓
2021年 1,343,531
-1.26% ↓
2020年 1,360,670
4.86% ↑
2019年 1,297,590
2.54% ↑
2018年 1,265,420
13.56% ↑
2017年 1,114,280
-0.35% ↓
2016年 1,118,171
8.29% ↑
2015年 1,032,542
-26.15% ↓
2014年 1,398,202
35.57% ↑
2013年 1,031,351
1.07% ↑
2012年 1,020,458
-25.96% ↓
2011年 1,378,338
-13.03% ↓
2010年 1,584,898
3.72% ↑
2009年 1,528,082
-0.8% ↓
2008年 1,540,476
-20.15% ↓
2007年 1,929,284
15.08% ↑
2006年 1,676,499
3.27% ↑
2005年 1,623,470
15.77% ↑
2004年 1,402,380
-28.65% ↓
2003年 1,965,513
-4.61% ↓
2002年 2,060,508
1.95% ↑
2001年 2,021,131
-0.42% ↓
2000年 2,029,697
6.83% ↑
1999年 1,900,000
10.47% ↑
1998年 1,720,000
1.18% ↑
1997年 1,700,000
-2.13% ↓
1996年 1,736,911
-0.75% ↓
1995年 1,750,000
2.94% ↑
1994年 1,700,000
3.03% ↑
1993年 1,650,000
1.23% ↑
1992年 1,630,000
0.62% ↑
1991年 1,620,000
0.43% ↑
1990年 1,613,000
0.19% ↑
1989年 1,610,000
0.25% ↑
1988年 1,606,000
0.11% ↑
1987年 1,604,200
0.5% ↑
1986年 1,596,200
1.03% ↑
1985年 1,580,000
2.27% ↑
1984年 1,545,000
0.98% ↑
1983年 1,530,000
-1.29% ↓
1982年 1,550,000
-3.13% ↓
1981年 1,600,000
3.23% ↑
1980年 1,550,000
3.33% ↑
1979年 1,500,000
3.45% ↑
1978年 1,450,000
-3.33% ↓
1977年 1,500,000
7.14% ↑
1976年 1,400,000
7.69% ↑
1975年 1,300,000 -
1974年 1,300,000
4% ↑
1973年 1,250,000
4.17% ↑
1972年 1,200,000 -
1971年 1,200,000 -
1970年 1,200,000 -
1969年 1,200,000 -
1968年 1,200,000 -
1967年 1,200,000
-5.81% ↓
1966年 1,274,000
8.61% ↑
1965年 1,173,000
57.87% ↑
1964年 743,000
-6.66% ↓
1963年 796,000
20.06% ↑
1962年 663,000
2.63% ↑
1961年 646,000 -

タイのバナナ生産量推移は、同国の農業産業の変遷を考える上で興味深い指標の一つです。この生産データを見ると、1960年代から1980年代まではおおむね増加傾向にありましたが、1970年代から1990年代中盤にかけて成長は比較的緩やかでした。その後1999年に1,900,000トン、2002年には2,060,508トンの記録的な生産量を達成しました。この時期は、タイ国内でのインフラ整備や農業技術の向上、さらには輸出市場の開拓がその成長を支えました。

しかしながら、2004年以降は急激な減少がみられ、特に2012年には1,020,458トンまで落ち込む結果となりました。この減少については、いくつかの背景要因が挙げられます。一つは、国内外の需給バランスの変化です。例えば、日本や中国など輸出先の輸入基準の厳格化や競争力のある他国の生産物への需要増加です。また、タイ国内でも他の作物への転換や農地の都市化も影響を与えたと考えられます。さらに、2011年以降の洪水被害や気候変動の影響により、バナナの主要生産地である地域では栽培が困難になるケースが増加しました。このような自然災害や気候リスクは、農作物における収量に深刻なダメージを与えることが分かっています。

2020年代に入ってからは、再び増加の兆しが見られましたが、2022年の生産量1,288,313トンは以前のピーク時と比べると問題が残る数値です。これは安定供給や市場競争力の面で課題があることを示唆しています。

地政学的な要因としては、タイ近隣諸国や輸出先の政治的安定性がタイの農業輸出に影響を与える可能性があります。例えば、近年の中国やインドなどアジア諸国の農業補助政策は、タイのバナナ生産に大きなプレッシャーを与えています。これに加え、新型コロナウイルスの影響により国際物流が制限されたことで輸出市場にも影響が及びました。

今後、タイがバナナの生産量を持続的に増加させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。第一に、気候に適応した品種改良の推進です。気候変動や病害虫に強い種を開発することで、農家の収量の安定化を図ることが重要です。第二に、技術指導とインフラ整備の充実です。適切な農業技術や収穫後の加工技術の導入により、農業生産性を高めることが可能になります。第三に、国際市場への依存度を下げ、国内消費を促す施策の充実です。タイ国内での消費拡大や、加工食品など付加価値の高い製品を展開することで、国内経済を活性化させることが期待されます。

タイはバナナ生産の長い歴史を持つだけでなく、東南アジアにおける主要な農産品輸出国でもあります。その地位を維持し、さらには向上させるためにも、これからの時代の課題を正確に捉えた大胆な政策展開が求められています。国際連合食糧農業機関(FAO)の統計から見えてくるのは、過去の繁栄と現状の課題、そして未来への可能性です。バナナという一つの作物を通じて、タイの農業全体が持続可能であるための指針を共有し続けることが、今後の成功の鍵になるでしょう。