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タイの羊飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点のデータによると、タイの羊の飼養数は1961年以降大きな変動を繰り返しています。1960年代後半から1970年代前半には39,000匹前後で推移したものの、1975年には急激に71,357匹に増加しました。その後減少に転じ、1977年には約19,000匹まで落ち込む劇的な下降を記録しています。1980年代後半には上昇トレンドが強まり、1992年にはピークである約176,000匹に到達。その後再び低下傾向となり、2022年には40,534匹まで減少しています。

年度 飼養数(匹)
2022年 40,534
2021年 40,785
2020年 41,036
2019年 40,890
2018年 42,357
2017年 42,461
2016年 41,972
2015年 43,153
2014年 43,901
2013年 42,040
2012年 54,221
2011年 51,735
2010年 43,139
2009年 40,269
2008年 43,738
2007年 50,963
2006年 51,151
2005年 50,779
2004年 47,811
2003年 42,883
2002年 39,326
2001年 42,720
2000年 37,312
1999年 39,485
1998年 40,404
1997年 41,926
1996年 42,343
1995年 75,329
1994年 90,508
1993年 110,465
1992年 176,229
1991年 166,102
1990年 162,496
1989年 155,898
1988年 130,663
1987年 95,099
1986年 72,679
1985年 57,877
1984年 44,877
1983年 32,785
1982年 27,018
1981年 21,357
1980年 21,776
1979年 31,755
1978年 18,551
1977年 19,652
1976年 33,340
1975年 71,357
1974年 35,000
1973年 36,000
1972年 37,000
1971年 38,000
1970年 39,000
1969年 40,000
1968年 39,651
1967年 16,184
1966年 15,000
1965年 15,000
1964年 15,000
1963年 15,000
1962年 13,490
1961年 13,490

タイの羊飼養数データは60年以上の期間にわたり、社会的・経済的・環境的要因に応じて大きく変動してきました。1960年代から1970年代にかけては、農業における機械化や他産業の発展に伴う農村部の人々のライフスタイルの変化が、ほぼ一定の水準であった羊飼養数の増減に影響を及ぼしました。その中で1975年の急増は特筆すべき年といえ、短期間に71,357匹まで跳ね上がっています。この背景には、羊毛や羊肉の需要増加、あるいは政府による畜産振興策の一環が関与した可能性があります。しかし、その後1977年には19,652匹まで急激に減少しており、何らかの外的要因---例えば天候異常や市場の崩壊---が影響を与えたことが考えられます。

1980年代の後半から1992年にかけて、タイの羊飼養数は急激に伸び続けました。この時期は東南アジア全体で経済が成長を遂げ、畜産業が積極的に推進された時期でもあります。特にピークに達した1992年には176,229匹に到達しており、これはタイ国内における羊の市場拡大と輸出品目としての可能性を示唆します。しかしながら、これ以降再び飼養数は減少基調へと転じ、特に1993年を境に1996年には半減に近い42,343匹にまで減少しています。アジア通貨危機(タイの通称トムヤムクン危機)に伴う経済的な要因や畜産政策の変化が主要因の一つと考えられるでしょう。

近年では、羊飼養数が40,000匹台で安定していますが、これはタイ国内における需要と供給のバランスが一定ラインで維持されていることを表しています。しかし同時に、この安定的な数値は畜産業としての拡大余地が限定的であることも示しています。また、地域の地政学的リスクや自然災害、さらに新型コロナウイルスによる物流の断絶が羊生産と取引にある程度の影響を与えている可能性も考慮すべきです。

未来を見据えた課題としては、第一に、持続可能な羊飼養技術の開発と普及が挙げられます。特に、気候変動への適応とコスト効率の改善を図る必要があります。第二に、地域間および国際間での取引ネットワークを強化し、羊毛や羊肉の付加価値商品を開発することで輸出産業としての地位を高めることが重要です。さらに、アフリカや中東など羊肉の需要が高い地域とのパートナーシップを深めることも重要です。最後に、国際機関や他国との協調による疫病対策の強化が必要であり、疾病が畜産業に与えるリスクを最小限に抑える努力を進めるべきです。

データから見て取れることは、タイの羊飼養数は過去に成功と課題を繰り返しながら、その地位を維持してきたということです。今後、地理的条件や政策的取り組みを生かし、持続的で競争力のある畜産業を目指すためには、多角的な努力が求められるでしょう。