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タイのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、タイのパイナップル生産量は長期的な変動を経て、近年減少傾向にあります。特に2023年の生産量は約1,258,028トンと過去数十年で最も低い水準を記録しています。一方、1970年代から1980年代にかけての急激な増加時期や、2010年代の比較的安定した生産量も見られます。この変動は、社会経済的、環境的な要因が複雑に絡み合った結果と言えます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,258,028
-26.61% ↓
2022年 1,714,213
-2.08% ↓
2021年 1,750,630
4.15% ↑
2020年 1,680,884
-7.91% ↓
2019年 1,825,257
-22.36% ↓
2018年 2,350,887
0.97% ↑
2017年 2,328,378
15.63% ↑
2016年 2,013,634
16.15% ↑
2015年 1,733,677
-9.55% ↓
2014年 1,916,830
-7.31% ↓
2013年 2,067,908
-13.84% ↓
2012年 2,400,187
-7.44% ↓
2011年 2,593,207
34.74% ↑
2010年 1,924,659
1.57% ↑
2009年 1,894,862
-16.82% ↓
2008年 2,278,162
-19.08% ↓
2007年 2,815,275
4.07% ↑
2006年 2,705,179
23.9% ↑
2005年 2,183,280
3.92% ↑
2004年 2,100,979
10.61% ↑
2003年 1,899,424
9.24% ↑
2002年 1,738,833
-16.33% ↓
2001年 2,078,286
-7.56% ↓
2000年 2,248,375
-5.2% ↓
1999年 2,371,791
32.78% ↑
1998年 1,786,234
-14.26% ↓
1997年 2,083,390
4.87% ↑
1996年 1,986,704
-4.84% ↓
1995年 2,087,707
-11.93% ↓
1994年 2,370,415
-8.45% ↓
1993年 2,589,302
18.75% ↑
1992年 2,180,407
12.93% ↑
1991年 1,930,691
3.51% ↑
1990年 1,865,290
-6.99% ↓
1989年 2,005,390
13.24% ↑
1988年 1,770,931
17.28% ↑
1987年 1,509,965
-7.69% ↓
1986年 1,635,723
-7.53% ↓
1985年 1,768,944
20.9% ↑
1984年 1,463,100
9.07% ↑
1983年 1,341,400
-6.78% ↓
1982年 1,439,000
-27.8% ↓
1981年 1,993,000
-45.97% ↓
1980年 3,688,400
27.66% ↑
1979年 2,889,200
34.11% ↑
1978年 2,154,300
0.6% ↑
1977年 2,141,400
-4.38% ↓
1976年 2,239,600
64.88% ↑
1975年 1,358,300
180.93% ↑
1974年 483,493
51.67% ↑
1973年 318,789
155.39% ↑
1972年 124,826
-48.52% ↓
1971年 242,489
25% ↑
1970年 193,990
5% ↑
1969年 184,753
1.5% ↑
1968年 182,023
-21.88% ↓
1967年 233,000
-20.89% ↓
1966年 294,542
-2.08% ↓
1965年 300,790
15.69% ↑
1964年 260,000
-14.19% ↓
1963年 303,000
-5.61% ↓
1962年 321,000
-28.67% ↓
1961年 450,000 -

タイのパイナップル生産量の推移を見ると、1960年代から70年代にかけて大きな増加が見られます。具体的には、1961年の約45万トンだった生産量は1975年に約135万トン、1980年には約368万トンに達するなど、短期間で劇的に増加しました。この背景には、パイナップルが世界市場での需要が高まり、特に缶詰加工用としての輸出産業の成長が寄与していると考えられます。この段階では、タイは世界最大級のパイナップル生産国かつ輸出国としての地位を確立しました。

しかし、1980年代以降は生産量が減少に転じ、1990年代に一定の回復傾向を示したものの、その後は再び波のある動きを示しており、直近のデータでは継続的な減少が目立ちます。2023年には約125万トンと、このデータ群中で最低の水準に落ち込んでいます。この減少の主な要因としては、国内外のパイナップル需要の変化、農業労働人口の減少、気候変動による天候の不安定化、そして生産に必要なコストの上昇が挙げられます。また、新型コロナウイルスの世界的な流行による物流の制限や観光産業の停滞も、間接的な影響を及ぼした可能性があります。

他国との比較をすると、タイの減少傾向とは対照的に、近年ではフィリピンやインドネシアといった周辺国がパイナップル生産を強化し、特にフィリピンは安定した生産の増加を続けています。これは、タイにとって重要な競争相手の出現を意味し、価格競争がさらなる課題となる可能性があります。さらに、タイ国内では農地の都市化が進むことで、パイナップル栽培に適した土地が減少していることも深刻な問題です。

将来的にタイのパイナップル生産を安定させるためにはいくつかの対策が必要です。第一に、生産コストを削減するため、効率的な栽培技術の導入や精密農業(ドローンやIoT機器を利用して農業の効率を高める手法)の活用が挙げられます。第二に、高付加価値な製品の開発を進め、例えばオーガニックパイナップルや加工品などの輸出を強化することが求められます。第三に、気候変動に対応するための作物育種や、干ばつ耐性があるパイナップル品種の普及を進めることも重要です。さらに、地域協力を強化し周辺国との農業技術共有を図ることで、生産全体の底上げが期待されます。

総括すると、タイのパイナップル生産量は1960年代以降大きな変動を経験してきましたが、近年の減少傾向は持続可能な農業への移行が不十分であることを示しています。地政学的に見ると、他国との競合が激化するだけでなく、気候変動の影響が今後さらに顕著になることが予測されるため、改善のための取り組みが急務です。タイ政府や農業団体だけでなく、国際機関や民間セクターも連携して、これらの課題に取り組むことが求められるでしょう。継続的なデータ収集と分析を基にした政策が、この重要な輸出品目の競争力を維持する鍵となります。