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タイの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization, FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、タイの鶏卵生産量は1961年の45,700トンから2023年には722,736トンと着実に増加しています。この間、特定の時期に短期的な減少も見られましたが、全体では持続的な成長を続けています。特に1980年代から1990年代にかけての急激な伸びが顕著です。近年では2021年から2023年にかけて年約1万トン規模の増加ペースが見られました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 722,736
-0.49% ↓
2022年 726,307
1.78% ↑
2021年 713,634
1.25% ↑
2020年 704,806
1.25% ↑
2019年 696,086
-1.96% ↓
2018年 710,000
2.16% ↑
2017年 695,000
0.72% ↑
2016年 690,000 -
2015年 690,000
-5.69% ↓
2014年 731,603
5% ↑
2013年 696,781
1.37% ↑
2012年 687,396
9.46% ↑
2011年 628,000
2.53% ↑
2010年 612,500
1.58% ↑
2009年 603,000
6.62% ↑
2008年 565,558
4.85% ↑
2007年 539,391
5.1% ↑
2006年 513,232
9.51% ↑
2005年 468,665
19.14% ↑
2004年 393,360
-28.98% ↓
2003年 553,857
2.95% ↑
2002年 538,000
8.47% ↑
2001年 496,000
-3.61% ↓
2000年 514,563
3.65% ↑
1999年 496,438
-7.31% ↓
1998年 535,563
-5.04% ↓
1997年 564,000
7.43% ↑
1996年 525,000
5.21% ↑
1995年 499,000
5.83% ↑
1994年 471,500
10.68% ↑
1993年 426,000
-9.36% ↓
1992年 470,000
-2.49% ↓
1991年 482,000
7.33% ↑
1990年 449,100
22.2% ↑
1989年 367,500
50.61% ↑
1988年 244,000
20.2% ↑
1987年 203,000
4.1% ↑
1986年 195,000
-4.18% ↓
1985年 203,500
21.13% ↑
1984年 168,000
-3.45% ↓
1983年 174,000
5.78% ↑
1982年 164,500
5.45% ↑
1981年 156,000
7.22% ↑
1980年 145,500
7.78% ↑
1979年 135,000
3.85% ↑
1978年 130,000
11.11% ↑
1977年 117,000
9.35% ↑
1976年 107,000
10.31% ↑
1975年 97,000
12.14% ↑
1974年 86,500
6.13% ↑
1973年 81,500
3.16% ↑
1972年 79,000
5.33% ↑
1971年 75,000
1.35% ↑
1970年 74,000
3.5% ↑
1969年 71,500
14.4% ↑
1968年 62,500
8.7% ↑
1967年 57,500
1.32% ↑
1966年 56,750
5.09% ↑
1965年 54,000
4.35% ↑
1964年 51,750
4.65% ↑
1963年 49,450
4.66% ↑
1962年 47,250
3.39% ↑
1961年 45,700 -

タイの鶏卵生産量はこの60年以上で大きく成長を遂げてきました。その背景には、農業技術の進歩、農家への助成政策、そして国内外の需要の増加があります。1961年の生産量はわずか45,700トンでしたが、これは当時の国内需要に限定された生産規模を反映しています。その後、タイの経済成長や農業政策の改善に伴い、生産量は段階的に伸び、特に1980年代後半から1990年代初頭にかけて急速に拡大しました。この時期には、農業の機械化や鶏卵産業の大規模化が進んだことが大きな要因とされています。この期間の最も高い成長率として、1989年には367,500トンから1990年の449,100トンへと約22%の増加を記録しています。

一方で、タイの鶏卵生産量には減少傾向が見られた年もあります。例えば、1993年には前年度比で約44,000トンの減少がありました。原因としては、経済不況や鶏の病気の流行が挙げられます。加えて、2004年の大幅な減少(393,360トン)は、鶏インフルエンザの感染拡大が影響したと考えられます。このような疫病の流行は、国内の生産のみならず、輸出に依存していた生産構造にも深刻な影響を与えています。新型コロナウイルス感染症の影響があった2020年以降も、一定の変動は見られるものの、増加基調が続いている点は、養鶏産業が順調な回復を遂げていることを示しています。

国際的に見ても、タイの鶏卵生産量は東南アジア地域で重要な位置を占めており、一部の卵種は世界市場でも大きな支持を集めています。ただし、近隣の中国やインドと比較すると生産量では大きく劣っています。例えば中国では年間3,000万トン超の生産量が記録されており、これはタイの生産量の約40倍に相当します。高い人口需要と国土面積の差が主因とはいえ、タイの鶏卵産業はまだ成長の余地を持っていると考えられます。

タイの鶏卵産業が直面する課題の一つは、生産効率の向上です。特にエネルギーコストや飼料価格の影響を受けやすい現状では、効率化を図るとともに、持続的な農場運営を可能にする環境保全の取り組みが求められます。農家の教育や技術支援をさらに進めるとともに、鶏の健康を維持するための医療体制の充実が必要となります。また、新型コロナウイルス感染症や地政学的リスクに対しては、国内市場を強化し、輸出依存を軽減する戦略も効果的です。

将来的な提案として、品質管理の強化による付加価値の向上や、鶏卵の加工品市場への参入拡大が挙げられます。日本や韓国などの近隣諸国では、衛生管理が行き届いた高品質卵が高値で取引されている傾向にあります。このような市場をターゲットとするための輸出促進政策を講じることで、付加価値を追求しながら国際競争力を高める道筋が描けます。また、気候変動や新たな疫病流行のリスクに備えた緊急対策の枠組みを策定し、国家規模でのサポート体制を強化することも重要です。

タイの鶏卵生産量の推移を振り返ると、着実な成長とともに一定の波も見て取れます。しかし、これまでの困難を乗り越える中で築かれてきた基盤を土台に、さらなる成長と持続可能性の確保が期待される分野であると言えるでしょう。これにより、地域の食料安全保障と経済の安定に貢献する産業としての役割を果たしていくことが求められます。