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タイのカカオ豆生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タイのカカオ豆生産量は1980年に300トンからスタートし、その後徐々に増加し、2000年には1,034トン、2001年にはピークとなる1,454トンを記録しました。しかし、それ以降は長く減少傾向にあり、2013年にはわずか67トンにまで落ち込みました。2014年以降は若干の回復を見せましたが、以降の生産量は年間120トン程度で横ばいの状態が続いています。

年度 生産量(トン)
2022年 124
2021年 124
2020年 124
2019年 123
2018年 124
2017年 125
2016年 120
2015年 128
2014年 144
2013年 67
2012年 322
2011年 523
2010年 763
2009年 781
2008年 823
2007年 932
2006年 1,097
2005年 1,069
2004年 1,167
2003年 1,287
2002年 1,026
2001年 1,454
2000年 1,034
1999年 400
1998年 400
1997年 400
1996年 400
1995年 400
1994年 400
1993年 400
1992年 400
1991年 400
1990年 400
1989年 400
1988年 400
1987年 400
1986年 300
1985年 300
1984年 300
1983年 300
1982年 300
1981年 300
1980年 300

タイのカカオ豆生産量に関するデータは、同国における農業の変遷や経済的、地政学的背景をよく表しています。1980年から1999年までは300~400トンで一定の生産量を保ち、2000年に1,000トンを超える飛躍を遂げました。この増加は、カカオの需要増加と市場価格の上昇に伴う国際的な需要を受けた政策転換や農業従事者への支援強化が関与していると考えられます。特に2001年のピーク時にはカカオ豆はタイの生産品目として注目を集めていました。

しかし、2000年代半ばからカカオ豆の生産量は大幅に減少しました。この背景には複数の要因が考えられます。まず、タイは熱帯モンスーン気候に分類されるものの、カカオの最適環境とされる高温多湿の気候が特定の地域に限定されるため、植物病害や不適切な管理方法が生産性に影響を与えたと見られます。また、国際市場でのカカオ豆の価格変動が農業従事者の意欲を下げ、生産維持が困難になったことも一因です。さらに、タイでは他の輸出志向の農作物、たとえば米や果物に重点が置かれる政策が多く、カカオ生産の支援体制が十分ではなかったと推測されます。

2013年に最低水準となる67トンを記録して以降、わずかに回復する兆しは見せているものの、2022年時点で124トンと低水準で安定しています。これは、気候変動や災害によるリスクのみならず、カカオ生産における国全体の戦略的優先度の低下を反映している可能性があります。また、近年の東南アジア地域全体を通じた経済成長と他の主要農産物の需要増加も関与しているでしょう。

今後、タイがカカオ豆生産量を増やすには、具体的な対策が必要です。まずは技術支援の拡充が挙げられます。カカオ栽培に適した地域の特定と、生産者への技術的ノウハウの提供を行うことで、収量改善を図ることができます。また、多国間協力による国際市場へのアクセス向上も重要です。たとえば、インドネシアなどカカオ生産で成功している隣国との協力を深め、技術交流や輸出基盤の整備を進めることが考えられます。さらに、消費者ニーズに応じたオーガニック認証や高品質商品の生産を推進することで、付加価値を付けた市場展開が望ましいといえます。

一方で、地政学的なリスクへの対応も欠かせません。例えば、気候変動に対する適応策や災害耐性の強化、国内外の市場価格変動に対応するための価格安定化政策の検討が求められます。また、新型コロナウイルスや地域紛争が国際物流に及ぼした影響を考慮し、サプライチェーンの多様化と強靭化を図る必要もあります。

結論として、タイのカカオ豆生産量の推移は、農業政策や市場の影響を如実に反映しています。このデータを分析すると、適切な戦略の策定と国際的な連携を強化すれば、タイはカカオ生産を再び成長の軌道に乗せることが可能であるといえます。国や国際機関が主導して、生産者支援の仕組みを整えることが喫緊の課題です。