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タイの牛飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タイにおける牛の飼養数は、最も古いデータが記録されている1961年には約354万頭でした。その後、おおむね増加傾向を示し1994年に約763万頭に達しました。しかし、これをピークとして急激な減少が見られ、2000年代初頭には回復傾向を示したものの、その後再び減少し、2022年には約462万頭と記録されています。この推移には農業政策、経済変動、地政学的背景や環境問題が複雑に影響していると考えられます。

年度 飼養数(頭)
2022年 4,623,099
2021年 4,628,169
2020年 4,641,127
2019年 4,600,000
2018年 4,643,381
2017年 4,680,000
2016年 4,700,000
2015年 4,750,000
2014年 4,898,575
2013年 5,147,521
2012年 5,392,579
2011年 5,890,701
2010年 6,497,996
2009年 6,647,325
2008年 6,699,999
2007年 6,480,876
2006年 6,042,039
2005年 5,609,790
2004年 5,296,839
2003年 5,048,170
2002年 4,819,713
2001年 4,640,355
2000年 4,601,697
1999年 4,755,792
1998年 5,159,237
1997年 5,789,747
1996年 6,386,926
1995年 6,667,631
1994年 7,637,350
1993年 7,473,000
1992年 7,121,000
1991年 6,626,971
1990年 5,668,530
1989年 5,284,960
1988年 5,072,024
1987年 4,968,845
1986年 4,878,741
1985年 4,828,983
1984年 4,788,989
1983年 4,832,570
1982年 4,578,699
1981年 4,468,796
1980年 3,938,221
1979年 4,275,825
1978年 4,436,607
1977年 4,341,152
1976年 4,322,375
1975年 4,141,725
1974年 4,149,791
1973年 4,092,775
1972年 4,484,962
1971年 4,460,230
1970年 4,666,969
1969年 4,451,590
1968年 4,290,256
1967年 4,176,320
1966年 4,028,550
1965年 3,887,530
1964年 3,752,910
1963年 3,624,360
1962年 3,594,560
1961年 3,542,420

タイの牛飼養数の推移を詳細に分析すると、いくつかの興味深い特徴が浮かび上がります。1961年の約354万頭から約30年にわたる増加を経て1994年に約763万頭に達し、この期間に牛の需要は経済成長や消費動向と相まって増加したと考えられます。しかし、1995年以降、飼養数は減少に転じ、特に1997年のアジア通貨危機が引き金となり、1999年には約475万頭まで急激に減少しました。この減少は農家の経済的負担の増加や市場価格の低迷に起因する可能性があります。

2000年代に入ると再び増加し、2008年には約670万頭に達しましたが、以降は再び減少を続け、2022年には約462万頭となりました。この長期的な減少傾向の背景には、農業人口の高齢化や若年層の農業離れ、代替食肉である豚や鶏への需要転換、そして地球温暖化が酪農や家畜業に及ぼす影響が挙げられます。特に近年では、牧草地の減少や農地の都市化が進み、牛飼育に適した環境が失われていることも指摘されています。

さらに、地域的な地政学的リスクもこの推移に影響を与えています。タイは東南アジアにあり、国境を接する国々との輸出・輸入関係が非常に重要です。近年の輸出規制の変更や、隣国で見られる疫病の発生などがタイの牛飼養産業の変動に影響を及ぼしている可能性があります。また、世界的な新型コロナウイルスによるパンデミックも物流や供給鎖に影響を与え、生産者が市場参加を制限する結果を招く要因となりました。

課題としては、牛の飼養数の減少が農村部の生計手段を脅かし、国内食料安全保障と輸出収益に影響することが挙げられます。現在、多くの農業者が環境負担の少ない農法や持続可能な酪農を模索していますが、タイ国内での実績として確立させるには時間が必要です。さらに環境問題として、牛飼育による温室効果ガスの排出量削減も求められており、これは国際的な議論にも関連します。

これに対し、いくつかの具体的な提案が考えられます。まず、国家レベルでの家畜業への技術支援と効率的な農法の導入支援が必要です。また、地元の農家に対し飼養環境に適した金融政策を実施することで、より持続可能な生産を後押しすることも重要です。さらに、国際協力や地域間での連携を強化し、周辺国と共に疫病や気候変動に対応するための枠組みを構築することが必要不可欠です。たとえば、新たな技術を用いたワクチンの開発や、気候変動に強い牧草の品種改良などが考えられます。

結論として、タイにおける牛飼養数の減少は単なる国内問題に留まらず、食料安全保障や持続可能な農業の実現といった国際的な課題とも密接に関連しています。これを克服するためには、タイ国内外の協力体制を通じた包括的な政策が求められます。農家への経済支援や技術的助言だけでなく、環境保全との調和を目指す取り組みが今後の主要な方向性となるでしょう。