国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、タイにおけるパパイヤの生産量は、1960年代の年間65,000トンを基準として、その後数十年にわたり増加を見せました。特に1990年代から2000年にかけて飛躍的な成長を遂げ、2000年には366,828トンに達しました。しかし、その後は急激な減少と変動期を迎え、2010年代以降は16万トン前後で推移しています。直近の2023年には162,075トンと、安定しつつもわずかに減少しています。
タイのパパイヤ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 162,075 |
-2.13% ↓
|
2022年 | 165,605 |
-0.04% ↓
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2021年 | 165,666 |
0.05% ↑
|
2020年 | 165,580 |
0.01% ↑
|
2019年 | 165,570 |
-0.17% ↓
|
2018年 | 165,847 |
0.32% ↑
|
2017年 | 165,322 |
-0.13% ↓
|
2016年 | 165,540 |
-0.68% ↓
|
2015年 | 166,679 |
5.78% ↑
|
2014年 | 157,571 |
-7.16% ↓
|
2013年 | 169,732 |
-17.8% ↓
|
2012年 | 206,475 |
0.17% ↑
|
2011年 | 206,115 |
-2.59% ↓
|
2010年 | 211,594 |
2.34% ↑
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2009年 | 206,762 |
2.82% ↑
|
2008年 | 201,099 |
2.93% ↑
|
2007年 | 195,377 |
45.32% ↑
|
2006年 | 134,443 |
-36.6% ↓
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2005年 | 212,056 |
-23.7% ↓
|
2004年 | 277,923 |
-10.06% ↓
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2003年 | 309,003 |
-12.14% ↓
|
2002年 | 351,693 |
20.92% ↑
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2001年 | 290,854 |
-20.71% ↓
|
2000年 | 366,828 |
11.16% ↑
|
1999年 | 330,000 |
8.2% ↑
|
1998年 | 305,000 |
5.17% ↑
|
1997年 | 290,000 |
11.54% ↑
|
1996年 | 260,000 |
18.18% ↑
|
1995年 | 220,000 |
15.79% ↑
|
1994年 | 190,000 |
26.67% ↑
|
1993年 | 150,000 |
25% ↑
|
1992年 | 120,000 |
4.35% ↑
|
1991年 | 115,000 |
15% ↑
|
1990年 | 100,000 | - |
1989年 | 100,000 | - |
1988年 | 100,000 | - |
1987年 | 100,000 | - |
1986年 | 100,000 | - |
1985年 | 100,000 | - |
1984年 | 100,000 | - |
1983年 | 100,000 |
16.28% ↑
|
1982年 | 86,000 | - |
1981年 | 86,000 | - |
1980年 | 86,000 | - |
1979年 | 86,000 | - |
1978年 | 86,000 | - |
1977年 | 86,000 | - |
1976年 | 86,000 | - |
1975年 | 86,000 | - |
1974年 | 86,000 | - |
1973年 | 86,000 |
32.31% ↑
|
1972年 | 65,000 | - |
1971年 | 65,000 | - |
1970年 | 65,000 | - |
1969年 | 65,000 | - |
1968年 | 65,000 | - |
1967年 | 65,000 | - |
1966年 | 65,000 | - |
1965年 | 65,000 | - |
1964年 | 65,000 | - |
1963年 | 65,000 | - |
1962年 | 65,000 | - |
1961年 | 65,000 | - |
FAOの最新データが示すタイのパパイヤ生産量の推移を分析すると、この数十年でタイにおけるパパイヤ農業が以下のような特徴的な変化を遂げていることがわかります。
1960年代から1970年代にかけた最初の10年以上、タイのパパイヤ生産量はほぼ一定の65,000トンで推移していました。この安定性は、当時のタイのパパイヤ生産が主に国内消費に依存し、大規模な輸出や現代農業技術の導入が行われていないことを反映しています。その後、1980年代中期から1990年代にかけて、近代農業技術の普及や輸出志向型農業へのシフトが進み、生産量は急激に増加しました。特に1993年からの短期間で150,000トンから330,000トンを超えるまでの大幅な成長が見られます。この背景には、世界的な健康志向の高まりやパパイヤの需要増加があり、タイはその需要を支える重要な生産国の一つとなりました。
一方で、2001年以降のデータでは、生産量の変動が顕著になります。特に2005年から2006年にかけての急激な減少は、タイ農業の複雑な課題を映し出しています。これには、自然災害(例:洪水や干ばつ)、プランテーションでの病害や害虫の発生、都市化に伴う農地縮小が影響していると考えられます。特にパパイヤに特有の「パパイヤリングスポットウイルス」というウイルス病はタイ農業に深刻な打撃を与え、当該期間における生産量低下の主要因の一つとされています。
近年、2010年代以降のデータは年間16万トン前後で安定していますが、増加傾向には転じていません。この停滞の背景には、タイ国内市場の成長鈍化やパパイヤ農家の高齢化、また国際市場での競争激化が挙げられます。特に、近隣諸国であるフィリピンやインドネシアといった新興生産国の影響や、農薬や施肥コストの上昇も無視できない要因と考えられます。
現状を受け、今後のタイにおけるパパイヤ生産においては、いくつかの課題と対策を考慮する必要があります。まず、農業従事者への支援を強化し、持続可能なパパイヤ生産を促進するために新しい技術の導入が必要です。例えば、耐病性の高い品種の開発や導入は、病害虫の影響を軽減し、生産性を向上させる可能性があります。次に、農業用地の効率化を図るため、政府や国際機関を通じて農地管理技術を活用するべきです。また、パパイヤの加工品や輸出向け商品開発にも力を入れることで、付加価値を高め、国際市場での競争力を向上させることが考えられます。
さらに、気候変動の影響に備えることも不可欠です。タイの農業にとって洪水や干ばつといった自然災害のリスクが高まる中、灌漑設備の整備や災害に強い農業インフラの構築が求められます。
結論として、タイのパパイヤ生産は現在、安定期にありますが、過去の変動要因を考慮すると、将来的な課題は依然として根深いものがあります。タイ政府だけでなく、国際社会や民間企業との協力を通じて技術的改善や市場戦略を行うことで、この優れた作物の潜在的価値を最大限引き出すことが可能になるでしょう。