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タイの牛乳生産量推移(1961年~2022年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タイの牛乳生産量は1961年に2,000トンだったのに対し、2022年には1,222,000トンとなり、長期的には顕著に増加してきました。ただし、特に2020年以降、減少傾向も見られるため、農業セクターへの課題が浮き彫りになっています。生産量は世界的な消費需要や地政学的要因の影響を受けながら推移しており、タイにとっては今後の持続可能性が問われる重要な指標です。

年度 生産量(トン) 増減率
2022年 1,222,000
-5.71% ↓
2021年 1,296,000
-1.59% ↓
2020年 1,317,000
1.93% ↑
2019年 1,292,000
2.62% ↑
2018年 1,259,000
5.89% ↑
2017年 1,189,000
-0.42% ↓
2016年 1,194,000
3.02% ↑
2015年 1,159,000
8.58% ↑
2014年 1,067,452
-2.54% ↓
2013年 1,095,314
7.15% ↑
2012年 1,022,190
4.09% ↑
2011年 982,000
7.79% ↑
2010年 911,000
8.36% ↑
2009年 840,691
6.93% ↑
2008年 786,186
7.83% ↑
2007年 729,098
-9.23% ↓
2006年 803,250
-9.57% ↓
2005年 888,220
5.41% ↑
2004年 842,611
15.12% ↑
2003年 731,923
10.85% ↑
2002年 660,297
12.35% ↑
2001年 587,700
12.99% ↑
2000年 520,115
11.97% ↑
1999年 464,514
6.27% ↑
1998年 437,116
13.32% ↑
1997年 385,728
12.33% ↑
1996年 343,388
11.77% ↑
1995年 307,229
49.57% ↑
1994年 205,407
30.59% ↑
1993年 157,288
17.37% ↑
1992年 134,011
-5.79% ↓
1991年 142,253
9.19% ↑
1990年 130,278
9.53% ↑
1989年 118,945
19.6% ↑
1988年 99,450
10.61% ↑
1987年 89,912
29.98% ↑
1986年 69,175
19.48% ↑
1985年 57,895
25.32% ↑
1984年 46,197
28.22% ↑
1983年 36,029
26.42% ↑
1982年 28,500
14% ↑
1981年 25,000
-16.67% ↓
1980年 30,000
-11.76% ↓
1979年 34,000
36% ↑
1978年 25,000
38.89% ↑
1977年 18,000
2.86% ↑
1976年 17,500
25% ↑
1975年 14,000 -
1974年 14,000 -
1973年 14,000
79.49% ↑
1972年 7,800
56% ↑
1971年 5,000
42.86% ↑
1970年 3,500
34.62% ↑
1969年 2,600
4% ↑
1968年 2,500
4.17% ↑
1967年 2,400 -
1966年 2,400
4.35% ↑
1965年 2,300
4.55% ↑
1964年 2,200
10% ↑
1963年 2,000 -
1962年 2,000 -
1961年 2,000 -

タイにおける牛乳生産量の推移は、農業技術革新や経済発展、消費者ニーズの変化と密接に関連しています。1961年の2,000トンという小規模な生産から始まり、1970年代以降、乳牛の飼育普及や国内需要の増加に伴い、生産量は急激に伸びました。特に、1970年代後半から1990年代前半にかけては急激な成長が見られ、例えば1983年の36,029トンから1995年の307,229トンへと10年余りで約8倍増加しました。この背景には、タイ政府の酪農支援策や牧草育成に関する農業改革がありました。

2000年代に入ると、さらに大規模な生産体制が整い、2004年には生産量が842,611トンに達し、100万トンを目前としました。その後、2010年代には需要の多様化と市場の成熟化に伴い、2013年には1,095,314トンを記録、2019年には1,292,000トンにまで成長しました。しかし、2020年以降からは成長が鈍化し、2020年の1,317,000トンをピークに、2022年には1,222,000トンへ減少傾向が見られます。この減少の原因として、世界的な新型コロナウイルスの流行で輸送・供給網が停滞した影響や、タイ国内の農地不足、さらには干ばつや洪水といった気象的要因が影響を与えた可能性が考えられます。

他国の状況と比較すると、タイの牛乳生産量は日本(2022年の生産量約750万トン)やアメリカ(約1億トン)に比べると依然として低く、国内需要の大部分を賄うための生産能力としては限界があるといえます。また、中国やインドといった急成長を遂げている隣国の生産量と比べると、タイの増加率は緩やかであり、特に資源管理や農業効率向上の分野で後れを取っている可能性があります。

タイの酪農業は、地政学的なリスクにも問題を抱えています。特に地域的な衝突や土地利用政策の変化、さらには気候変動の進行が、今後の牛乳生産に与える影響は軽視できません。このような外的要因に対応するためには、酪農地の効率的な管理や、気候変動への調整力を高める必要があります。

未来に向けては、農業技術のさらなる革新と持続可能性を高める政策介入が重要になります。例えば、物理的農地の拡大は難しいため、飼料効率を改善する技術の採用や、乳牛の健康を管理する専門的システムの導入が急務となります。また、国内消費の拡大に向けて、教育を通じた乳製品の普及促進や、国内外の市場に適応した生産システムを構築することも求められるでしょう。さらに、国際的な枠組みを通じた地域協力や輸出体制の強化は、タイの牛乳生産量の安定化に寄与する可能性があります。

結論として、タイの牛乳生産は長期的には成長を続けてきたものの、2022年の減少が示すように、持続可能性に向けた政策転換が課題です。政府の支援、農家の技術革新、国際協力の推進が、今後の安定した成長に向けた重要なカギとなるでしょう。