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インドネシアの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、インドネシアの鶏卵生産量は1961年の23,000トンから2023年の6,506,367トンへと著しい増加を遂げました。この62年間で生産量は約283倍に拡大しており、特に2017年以降、生産量が急激に上昇しています。このデータは、インドネシアがアジア地域において重要な鶏卵生産国の地位を確立していることを示していますが、急速な成長に伴い、課題や持続可能性への配慮が求められています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 6,506,367
9.51% ↑
2022年 5,941,593
7.55% ↑
2021年 5,524,694
7.45% ↑
2020年 5,141,570
8.17% ↑
2019年 4,753,382
1.39% ↑
2018年 4,688,121
1.19% ↑
2017年 4,632,834
211.83% ↑
2016年 1,485,688
8.22% ↑
2015年 1,372,829
10.33% ↑
2014年 1,244,311
1.68% ↑
2013年 1,223,716
7.35% ↑
2012年 1,139,949
10.91% ↑
2011年 1,027,846
-8.32% ↓
2010年 1,121,100
4.63% ↑
2009年 1,071,500
-4.55% ↓
2008年 1,122,617
-4.43% ↓
2007年 1,174,600
16.21% ↑
2006年 1,010,787
18% ↑
2005年 856,580
-8.31% ↓
2004年 934,200
18.47% ↑
2003年 788,550
1.58% ↑
2002年 776,300
12.06% ↑
2001年 692,738
7.9% ↑
2000年 642,000
22.39% ↑
1999年 524,565
33.51% ↑
1998年 392,892
-35.25% ↓
1997年 606,810
-3.59% ↓
1996年 629,404
8.09% ↑
1995年 582,300
7.24% ↑
1994年 543,000
21.12% ↑
1993年 448,305
0.9% ↑
1992年 444,300
13.46% ↑
1991年 391,600
7.46% ↑
1990年 364,400
6.43% ↑
1989年 342,400
5.13% ↑
1988年 325,700
-1.21% ↓
1987年 329,700
2.97% ↑
1986年 320,200
9.43% ↑
1985年 292,600
7.1% ↑
1984年 273,200
16.45% ↑
1983年 234,600
6.3% ↑
1982年 220,700
7.82% ↑
1981年 204,700
6.61% ↑
1980年 192,000
94.14% ↑
1979年 98,900
10.63% ↑
1978年 89,400
7.97% ↑
1977年 82,800
14.36% ↑
1976年 72,400
4.62% ↑
1975年 69,200
13.63% ↑
1974年 60,900
19.41% ↑
1973年 51,000
22.6% ↑
1972年 41,600
-5.67% ↓
1971年 44,100
23.88% ↑
1970年 35,600
1.42% ↑
1969年 35,100
40.4% ↑
1968年 25,000
2.88% ↑
1967年 24,300
1.25% ↑
1966年 24,000
-4% ↓
1965年 25,000
2.04% ↑
1964年 24,500
2.08% ↑
1963年 24,000
2.13% ↑
1962年 23,500
2.17% ↑
1961年 23,000 -

インドネシアの鶏卵生産量は1960年代から緩やかな増加傾向を示していましたが、特に1970年代後半から1980年にかけて、大幅な増加が見られました。この増加はインドネシアの農村部での商業的養鶏の普及や、それに伴う生産設備の近代化によるものであると推測されます。1980年には192,000トンから204,700トンへと急成長を記録しています。この時期の成長は、インドネシア政府が食料安全保障と栄養改善に向けた政策を萌芽的に導入したことが背景にあります。

その後、1997年の約606,810トンから1998年の金融危機時には約392,892トンと大きく減少しました。これは、アジア通貨危機の影響でインドネシアの経済全体が停滞し、農村部や小規模養鶏業者に深刻な影響を与えたためです。この短期的な減少にもかかわらず、2000年以降、インドネシアの鶏卵生産は経済の回復とともに再び増加基調を見せました。特に2017年以降において、生産量は急激な成長に転じ、2023年には6,506,367トンに達するという驚異的な数値を記録しています。

この急増の背景には、いくつかの要因が挙げられます。一つは、人口増加や都市化の進展に伴う鶏卵の需要拡大です。インドネシアの人口は2億7,000万人を超える規模に達しており、一人当たりのタンパク質消費量の向上が食生活の変化とともに進んでいます。それに加え、国内市場向け生産だけでなく、国際市場への鶏卵・鶏製品の輸出戦略が進められていること、また養鶏業への投資拡大と技術導入が生産性向上を支えています。

しかし、この急速な成長は新たな課題を伴います。一つは、養鶏業における環境負荷の問題です。鶏卵の生産過程では、大規模な鶏舎からの廃棄物やアンモニアガスの排出が環境と健康に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、大規模養鶏業の急速な発展により、小規模経営者が淘汰されるケースも増加しており、地域ごとの経済格差が広がる懸念が指摘されています。

また、感染症のリスクも重要な懸念事項です。過去には鳥インフルエンザの流行がインドネシアの養鶏業界に大きな損害を与えたことがありました。特に、他国との輸出入を強化する場合には、鶏舎の衛生基準を世界的に受け入れられる水準に整備することが求められます。さらに、生産プロセスの高度化に対応するための労働者教育や技能訓練の強化が必要になってきます。

未来に向けて、インドネシア政府および業界関係者は、持続可能な農業モデルを確立することが求められます。具体的には、生産システムの効率化と環境への配慮の両立を目指して、再生可能エネルギー利用や廃棄物管理改善を推進することが考えられます。また、小規模養鶏業者を支援する政策を導入し、多様な生産者が共存できる産業基盤を構築することも重要です。国際的には、輸出戦略を進めていく際、グローバルな基準を満たす安全と品質管理の枠組みを整備することが競争力向上につながります。

最後に、インドネシアの鶏卵生産はグローバルな食料安全保障にも寄与していますが、この成長を持続可能に保つためには、各ステークホルダーが長期的視点で連携して取り組むことが不可欠です。データから示される急成長のポテンシャルを生かしつつ、環境問題、地域格差、感染症対策といった課題に戦略的に対応していくことが、今後の鍵となるでしょう。