国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、インドネシアの羊の毛生産量は、1961年当時10,200トンから1990年代には一貫して増加し、1996年には23,173トンに達しました。しかし、それ以降は一時的な減少や停滞を繰り返し、2009年に30,598トンとピークを迎えた後は減少傾向が続いています。2022年の生産量は24,361トンとなり、過去最高値と比較して約6,000トン減少しました。このデータは、インドネシアにおける羊毛生産の全体的な成長と課題を示しています。
インドネシアの羊の毛生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 24,361 |
2021年 | 24,618 |
2020年 | 24,804 |
2019年 | 24,999 |
2018年 | 26,118 |
2017年 | 25,000 |
2016年 | 25,000 |
2015年 | 28,000 |
2014年 | 28,000 |
2013年 | 30,750 |
2012年 | 30,750 |
2011年 | 30,750 |
2010年 | 30,750 |
2009年 | 30,598 |
2008年 | 28,816 |
2007年 | 26,836 |
2006年 | 24,400 |
2005年 | 24,981 |
2004年 | 24,225 |
2003年 | 23,432 |
2002年 | 22,922 |
2001年 | 22,203 |
2000年 | 22,281 |
1999年 | 21,677 |
1998年 | 21,432 |
1997年 | 23,093 |
1996年 | 23,173 |
1995年 | 21,508 |
1994年 | 20,224 |
1993年 | 18,720 |
1992年 | 18,705 |
1991年 | 18,325 |
1990年 | 18,017 |
1989年 | 17,731 |
1988年 | 17,475 |
1987年 | 16,088 |
1986年 | 15,840 |
1985年 | 14,670 |
1984年 | 14,367 |
1983年 | 14,094 |
1982年 | 12,693 |
1981年 | 12,531 |
1980年 | 12,372 |
1979年 | 12,216 |
1978年 | 10,833 |
1977年 | 11,592 |
1976年 | 10,809 |
1975年 | 10,122 |
1974年 | 10,209 |
1973年 | 10,641 |
1972年 | 8,988 |
1971年 | 9,420 |
1970年 | 9,981 |
1969年 | 8,994 |
1968年 | 10,665 |
1967年 | 11,100 |
1966年 | 11,040 |
1965年 | 10,950 |
1964年 | 10,950 |
1963年 | 10,500 |
1962年 | 10,500 |
1961年 | 10,200 |
1961年から2022年にかけての羊の毛生産量データを分析すると、インドネシアでは羊毛生産が一時的な浮き沈みがありながらもおおむね1970年代から1990年代にかけて増加傾向にありました。特に1980年代後半以降は約15,000トンから18,000トンの範囲に安定していましたが、その後1990年代後半に20,000トンを突破しました。1996年には23,173トンと大幅な上昇を記録し、2000年代にはさらなる成長が続き、2009年には30,598トンに達しました。このピークはインドネシアの羊毛産業における重要な節目と言えます。
しかしながら、2010年代以降においては30,750トンで横ばいとなり、2014年には28,000トンに減少し、2016年には25,000トンとさらに下落しました。最新のデータである2022年の生産量は24,361トンで、明らかに長期的な減少トレンドが見られます。この減少の背景には、多くの要因が考えられます。気候変動の影響による農業環境の変化、羊の飼育技術の課題、または農村地域におけるインフラの整備不足がその一因として挙げられるでしょう。特に気候変動の影響は、牧草の供給不足や羊が健康を維持するための困難を引き起こす可能性があるため、重要な検討事項です。
地域的には、インドネシアの他の農産物と同じく、羊毛産業も地方経済の大きな柱ですが、農業従事者が十分な利益を得られない場合、若者の農業離れがさらに進行する可能性があります。また、地政学的リスクとして、輸出市場での競争力低下や、国際的な原料需要の変動が問題視されるでしょう。たとえば、中国やインドなどの周辺国が同じ市場で競争力を持つ羊毛輸入業者として台頭しているため、インドネシアの生産者が直面する外的圧力は増大しています。
疫病や災害も生産に影響を与える重要な要素です。新型コロナウイルスのパンデミック時においては、物流の制限、人件費の増加、設備投資の停滞が羊毛生産プロセスに打撃を与えたことが想定されます。また、2010年代後半以降の自然災害も、飼育環境の悪化に寄与している可能性があります。
今後の課題としては、生産性の向上と持続可能性の確保が挙げられます。たとえば、先進国の成功例を参考にし、羊の飼育環境を整え、収益性を向上させるための技術開発が必要でしょう。特に日本やドイツといった農業技術の進んだ国々では、牧場管理システムや飼料の最適化による生産性の向上が見られるため、これらの国から専門家を招いて教育プログラムを実施することも有益です。
また、地域間協力の枠組みを強化し、中国・韓国・オーストラリアなど羊毛市場における主要なプレーヤーとの協働を図るべきです。これにより、市場の安定化や輸出促進につながる新しいビジネスチャンスも生まれるでしょう。さらに、地球規模の気候変動対策として、持続可能な牧草地の管理や灌漑の改善といった施策を採用する必要があります。
以上から、インドネシアの羊毛生産は過去数十年間で大きな成長を遂げましたが、近年のデータはその維持の難しさを示しています。持続可能な方法での生産量の回復を目指すには、政府、地域、国際機関が連携し、技術革新や環境支援策の導入に取り組むことが重要です。これによりインドネシアの羊毛産業はより健全な未来へと進むと考えられます。