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インドネシアのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、インドネシアのカカオ豆生産量は1961年の1,031トンから急激に増加し、一時期は突出した生産量を記録しました。しかし、近年は横ばいから減少傾向が目立ち、2022年の生産量は667,296トンとピーク時の水準を大きく下回りました。この動向は、インドネシア国内および国際市場において、カカオ生産の変化と課題を反映していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 641,741
-3.83% ↓
2022年 667,296
-3.04% ↓
2021年 688,210
-4.5% ↓
2020年 720,660
-1.92% ↓
2019年 734,795
-4.23% ↓
2018年 767,280
29.9% ↑
2017年 590,684
-10.07% ↓
2016年 656,817
10.7% ↑
2015年 593,331
-18.54% ↓
2014年 728,400
1.04% ↑
2013年 720,900
-2.65% ↓
2012年 740,500
3.97% ↑
2011年 712,200
-15.68% ↓
2010年 844,626
4.33% ↑
2009年 809,583
0.75% ↑
2008年 803,593
8.59% ↑
2007年 740,006
-3.82% ↓
2006年 769,386
2.75% ↑
2005年 748,827
8.26% ↑
2004年 691,704
-0.53% ↓
2003年 695,361
12.3% ↑
2002年 619,192
15.35% ↑
2001年 536,804
27.46% ↑
2000年 421,142
14.6% ↑
1999年 367,475
-19.5% ↓
1998年 456,499
38.46% ↑
1997年 329,700
-6.01% ↓
1996年 350,800
26.01% ↑
1995年 278,400
15.18% ↑
1994年 241,701
-6.34% ↓
1993年 258,059
24.58% ↑
1992年 207,147
18.44% ↑
1991年 174,899
22.87% ↑
1990年 142,347
28.81% ↑
1989年 110,509
39.29% ↑
1988年 79,335
58.04% ↑
1987年 50,199
46.24% ↑
1986年 34,327
1.57% ↑
1985年 33,798
27.53% ↑
1984年 26,502
34.94% ↑
1983年 19,640
13.79% ↑
1982年 17,260
31.38% ↑
1981年 13,137
27.74% ↑
1980年 10,284
19.14% ↑
1979年 8,632
57.06% ↑
1978年 5,496
14.12% ↑
1977年 4,816
23.2% ↑
1976年 3,909
-0.31% ↓
1975年 3,921
22.88% ↑
1974年 3,191
76.01% ↑
1973年 1,813
0.67% ↑
1972年 1,801
-10.35% ↓
1971年 2,009
15.59% ↑
1970年 1,738
-1.42% ↓
1969年 1,763
46.43% ↑
1968年 1,204
-2.35% ↓
1967年 1,233
5.2% ↑
1966年 1,172
5.59% ↑
1965年 1,110
17.46% ↑
1964年 945
14.68% ↑
1963年 824
-8.14% ↓
1962年 897
-13% ↓
1961年 1,031 -

インドネシアは、豊かな熱帯気候に支えられたカカオ豆の主要生産国として、長年にわたり世界のチョコレート業界を支える重要な役割を果たしてきました。1960年代の生産量は毎年わずか1,000トン前後と小規模でしたが、1970年代以降、カカオ栽培面積の拡大や農業技術の導入により飛躍的な伸びを見せ、1980年代には10,000トンを超え、1990年代中ごろには100,000トン台、さらには350,000トン台へと増加しました。2000年代に入ると50万トンを超える水準に達し、2010年近くには70万トン以上を安定的に生産する実績を示していました。

加えて、カカオ豆の需要はグローバル市場で急増し、インド、アメリカ、ヨーロッパ諸国(特にドイツとフランス)の需要増加がその背景にあります。一方で、過去の国際市場動向に大きく依存してきたインドネシアでは、主に価格変動の影響を多大に受けており、農家の経済状態や栽培に充てる投資が大きく制限される時期もありました。

近年、生産量の横ばいまたは減少傾向は顕著となっています。2022年の生産量667,296トンは、2010年のピーク(約84万トン)から比較すると約20%以上の減少となりました。この背景には、いくつかの重要な要因が指摘されています。一つ目は老朽化したプランテーション(農園)問題です。カカオは収穫可能な木としての寿命が決まっており、老樹化した農園では生産性が徐々に低下します。二つ目は病害虫の流行であり、カカオの木がウイルスや害虫に侵され収穫量が大きく落ち込む原因となっています。また、農家が直面する気候変動の影響も、例外なくプラスチック化した気候条件による収穫期の変化や異常気象など、生産性低下への新たな課題と言えます。

さらに、地域間での競争や、肝心の国際価格の下降傾向もインドネシアのカカオ農家に影響を与えています。ガーナやコートジボワールといった他の生産国では、新興技術や政策支援で生産を改善している一方で、インドネシアでは国による明確な支援と市場戦略の遅れが、競争力の低下を引き起こしています。

インドネシアの未来にとって重要なのは、生産を再び持続可能で安定した成長に戻すための具体的な戦略です。一例として、新しく栄養豊富な苗木の提供や効率的な農業手法の普及が急務です。加えて、ウイルス感染対策として高効率な予防策を導入すること、適応型の施策を講じることも求められています。さらに、農家への技術支援だけでなく、輸出市場をもっと多様化することで、価格変動リスクを低減することが必要でしょう。これにより、生産者に安定した収益をもたらす土台が築かれるはずです。

国際的な協力もまた欠かせません。FAOや他の国際機関と連携することで、技術と資本の支援を受けながら、持続可能な農業と気候変動対策を進めるべきです。例えば、地域間協力の強化や気候変動に対応する新しい農業モデルへの投資は、有益な手段となるでしょう。

結論として、データが示す傾向はインドネシアにとって経済的リスクだけでなく、地政学的リスクも含むものです。競争力が低下することで、カカオ輸出から得られる収益は縮小する可能性があり、長期的な収入源としての安定性を失いかねません。インドネシアが再びカカオ生産のリーダーシップを取り戻し、世界市場に革新をもたらすような存在となるためには、国内外を繋ぐ重要な橋渡し役が必要です。