国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、インドネシアにおける羊の飼養数は、1961年の3,597,000匹から2022年の15,615,300匹へ、全体的に大幅な増加を見せています。ただし、2020年以降、減少傾向が見られ、2022年には過去数年のピークである2019年の17,833,732匹から約12%の減少となっています。この長期的な増加と最近の減少をどう見るべきかが今後の注目ポイントです。
インドネシアの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 15,615,300 |
2021年 | 15,636,251 |
2020年 | 17,523,689 |
2019年 | 17,833,732 |
2018年 | 17,611,392 |
2017年 | 17,142,498 |
2016年 | 15,716,667 |
2015年 | 17,024,685 |
2014年 | 16,091,838 |
2013年 | 14,925,898 |
2012年 | 13,420,439 |
2011年 | 11,790,612 |
2010年 | 10,725,458 |
2009年 | 10,198,766 |
2008年 | 9,605,339 |
2007年 | 9,514,184 |
2006年 | 8,979,849 |
2005年 | 8,327,022 |
2004年 | 8,075,149 |
2003年 | 7,810,702 |
2002年 | 7,640,684 |
2001年 | 7,401,117 |
2000年 | 7,426,990 |
1999年 | 7,225,690 |
1998年 | 7,144,003 |
1997年 | 7,697,690 |
1996年 | 7,724,447 |
1995年 | 7,169,287 |
1994年 | 6,741,389 |
1993年 | 6,240,000 |
1992年 | 6,235,000 |
1991年 | 6,108,189 |
1990年 | 6,005,789 |
1989年 | 5,910,400 |
1988年 | 5,825,000 |
1987年 | 5,354,000 |
1986年 | 5,284,000 |
1985年 | 4,885,000 |
1984年 | 4,698,000 |
1983年 | 4,789,000 |
1982年 | 4,231,000 |
1981年 | 4,177,000 |
1980年 | 4,124,000 |
1979年 | 4,071,000 |
1978年 | 3,611,000 |
1977年 | 3,864,000 |
1976年 | 3,603,000 |
1975年 | 3,374,000 |
1974年 | 3,403,000 |
1973年 | 3,480,000 |
1972年 | 2,996,000 |
1971年 | 3,146,000 |
1970年 | 3,362,000 |
1969年 | 2,998,000 |
1968年 | 4,409,000 |
1967年 | 3,704,000 |
1966年 | 3,778,000 |
1965年 | 3,938,000 |
1964年 | 3,426,000 |
1963年 | 3,424,000 |
1962年 | 3,413,000 |
1961年 | 3,597,000 |
インドネシアの羊飼養数は、このデータに基づけば、1961年から長期的には右肩上がりで推移してきました。特に1980年代後半から2000年代にかけての急成長は注目に値します。例えば、1986年の5,284,000匹から1996年の7,724,447匹に至るまで、10年間で約46%増加するという顕著な伸びが見られました。この成長は、主にインドネシアの人口増加や経済発展、農業政策の強化による家畜業の成長が要因として考えられます。
さらに、2000年代後半以降の羊飼養数の急激な成長も特筆すべきです。2012年の13,420,439匹からわずか3年間で2015年には17,024,685匹と、約27%増加しています。これは、羊肉需要の拡大が背景にある可能性があります。羊肉は宗教行事や伝統行事において重要な食材であり、また栄養価の高い食材としても認識されています。この需要が、羊生産の成長を支えたと考えられます。
一方、2020年以降の減少傾向は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が大きいと思われます。パンデミックによりサプライチェーンが混乱し、餌の供給が制限され、羊飼養業者に負担が生じた可能性があります。また、需要側では、宗教行事や宴席の縮小によって羊肉消費が減少したことが影響しています。これは類似する羊飼養国(例えばインドやパキスタン)でも同様の傾向が見られるため、地域的な問題として考えられます。
長期的な増加傾向が一転して近年の伸び悩みや減少をもたらした原因の一つには、インドネシアにおける気候変動の影響も挙げられます。頻発する洪水や乾季の深刻化が牧草地の減少を引き起こし、家畜業の安定性を脅かしています。また、都市化の進展によって農地が削減されている問題も見逃せません。これにより、将来家畜業が持続的に運営できるかどうかが疑問視されています。
これを解決するためには、いくつかの対策が求められます。まず、政府や農家は飼料効率を向上させる新技術を採用する必要があります。具体的には、栄養価の高い改良飼料や自動化技術を導入することで、効率的な羊の育成が可能です。また、気候変動に対応した牧草地管理や災害時のリスク対策も重要です。例えば、洪水が発生しやすい地域では、インフラの改良を進めるべきです。
さらに、地域間協力の枠組みづくりも求められています。インドネシアの家畜業界は、隣接する東南アジア諸国(例えばフィリピン、ベトナム、タイ)と連携し、輸送や需給の調整を強化することで、地域全体での安定供給体制を築ける可能性があります。また、国際市場での競争力を高めるためには、品質管理や持続可能性の向上も必要です。
結論として、インドネシアの羊飼養業は、成長の余地を多分に備えながらも近年の課題を克服する必要があります。政府、農家、さらには地域間協力による共同の取り組みが鍵となるでしょう。FAOやその他の国際機関は、資金援助や技術支援を通じてその努力を支えるべきです。これらの取り組みによって、持続可能で安定した家畜業が実現すれば、インドネシアのみならず、地域全体の食料安全保障にも貢献することが期待されます。