国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、インドネシアのヤギ肉生産量は1961年の20,000トンから2023年の61,315トンまで増加していますが、この間には顕著な増減変動が見られます。特に、1983年の65,500トンや2020年以降の連続減少を含む、経済的要因や疫病、環境変動の影響が要因として考えられます。
インドネシアのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 61,315 |
-3.68% ↓
|
2022年 | 63,658 |
6.58% ↑
|
2021年 | 59,730 |
-3.21% ↓
|
2020年 | 61,711 |
-15.29% ↓
|
2019年 | 72,852 |
3.84% ↑
|
2018年 | 70,155 |
-0.28% ↓
|
2017年 | 70,354 |
3.7% ↑
|
2016年 | 67,845 |
4.46% ↑
|
2015年 | 64,948 |
-0.3% ↓
|
2014年 | 65,142 |
-0.04% ↓
|
2013年 | 65,169 |
-0.07% ↓
|
2012年 | 65,216 |
-1.7% ↓
|
2011年 | 66,345 |
-3.56% ↓
|
2010年 | 68,793 |
-6.82% ↓
|
2009年 | 73,825 |
11.81% ↑
|
2008年 | 66,027 |
3.79% ↑
|
2007年 | 63,615 |
-2.15% ↓
|
2006年 | 65,014 |
28.48% ↑
|
2005年 | 50,603 |
-11.42% ↓
|
2004年 | 57,130 |
-10.54% ↓
|
2003年 | 63,860 |
9.78% ↑
|
2002年 | 58,170 |
19.44% ↑
|
2001年 | 48,702 |
8.49% ↑
|
2000年 | 44,890 |
-0.31% ↓
|
1999年 | 45,028 |
-5.21% ↓
|
1998年 | 47,504 |
-27.46% ↓
|
1997年 | 65,483 |
9.85% ↑
|
1996年 | 59,610 |
6.65% ↑
|
1995年 | 55,894 |
-2.05% ↓
|
1994年 | 57,066 |
-19.85% ↓
|
1993年 | 71,200 |
3.49% ↑
|
1992年 | 68,800 |
20.7% ↑
|
1991年 | 57,000 |
-2.23% ↓
|
1990年 | 58,300 |
-7.31% ↓
|
1989年 | 62,900 |
-4.98% ↓
|
1988年 | 66,200 |
7.64% ↑
|
1987年 | 61,500 |
-0.49% ↓
|
1986年 | 61,800 |
24.85% ↑
|
1985年 | 49,500 |
2.48% ↑
|
1984年 | 48,300 |
-26.26% ↓
|
1983年 | 65,500 |
62.94% ↑
|
1982年 | 40,200 |
4.42% ↑
|
1981年 | 38,500 |
6.06% ↑
|
1980年 | 36,300 |
-7.16% ↓
|
1979年 | 39,100 |
6.22% ↑
|
1978年 | 36,809 |
7.45% ↑
|
1977年 | 34,256 |
2.7% ↑
|
1976年 | 33,356 |
1.8% ↑
|
1975年 | 32,767 |
15.77% ↑
|
1974年 | 28,304 |
-5.75% ↓
|
1973年 | 30,030 |
5.88% ↑
|
1972年 | 28,361 |
15.89% ↑
|
1971年 | 24,473 |
-6.57% ↓
|
1970年 | 26,194 |
11.35% ↑
|
1969年 | 23,523 |
16.94% ↑
|
1968年 | 20,115 |
0.58% ↑
|
1967年 | 20,000 | - |
1966年 | 20,000 | - |
1965年 | 20,000 | - |
1964年 | 20,000 | - |
1963年 | 20,000 | - |
1962年 | 20,000 | - |
1961年 | 20,000 | - |
インドネシアは農業と畜産が経済と食料供給において重要な位置を占める国です。その中でヤギ肉は、国内消費や宗教的行事、さらには地域の食文化に密接に関わる畜産品の一つです。1961年から2023年にかけてのデータを見ると、生産量は全体的に増加傾向にありますが、いくつかの重要な変動点と現在の課題が浮き彫りになります。
1961年から1970年までは、年間20,000トン前後で安定的な生産量を維持していましたが、1969年以降に生産量が増加し始め、1970年代後半には年間約30,000トンを超えるようになりました。この成長は、経済発展や農村地域での畜産技術の向上が背景にあります。ただし、1983年になると急に65,500トンに達しましたが、その後1984年には48,300トンへと急下降しています。このように大きな変動が見られる要因として、天候条件や市場の需給バランス、または資源争奪に関連する地政学的リスクが挙げられます。
1990年代以降にかけては、政治的および経済的な変動が影響したと考えられます。1998年のアジア通貨危機の影響を受けた時期には、47,504トンまで減少しました。この経済危機は、畜産経済だけでなく、農村地域全体の生産性にも大きな影響を与えました。その後、2000年代初期には回復基調を見せ、2010年までには年間7万トン近くに達する年もありましたが、2015年以降はおおむね6万~7万トンの範囲内で推移しています。
特筆すべきは、2020年以降の減少傾向です。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、国内市場の需要が影響を受けただけでなく、物流網の混乱や経済停滞による影響が顕著でした。例えば、2020年の生産量は61,711トンに落ち込み、その後も2023年の61,315トンに至るまで回復が限定的であることが分かります。このような低迷の背後には、パンデミックの影響のみならず、農村部のインフラ不足や畜産管理の課題も含まれています。
将来を見据えると、インドネシアが直面する課題は多岐にわたります。まず、ヤギ飼育に適した農村環境の整備や、飼料供給の安定化が重要です。また、気候変動により旱魃や洪水などが畜産生産に与える影響が懸念されるため、耐候性のある飼料券や動物衛生に関する研究が必要です。さらに、地域イベントやイスラム教の行事に伴う需要を正確に予測し、市場の需給調整を行う政策を策定することも課題の一つです。
長期的には、他国との比較から学ぶ点も多いです。たとえば、隣国であるインドでは、農村部の畜産支援策や輸出拡大政策が成功している例が多く見られます。また、デジタル技術を活用した畜産管理プラットフォームの導入など、インドネシアが参考にすべきモデルが存在します。他方、中国やアメリカなどの大規模畜産国と比べると、インドネシアのヤギ肉生産は依然として中小規模であり、輸出産業としての競争力向上が課題です。
これらの課題に取り組む上で、政府の戦略的介入と地域レベルの協力が鍵となります。例えば、農村部の生産者を支援するクレジットプログラムの拡充や、畜産技術のトレーニングを通じて、生産者のスキル向上と安定した供給を目指す取り組みが必要です。また、気候変動に対応するため、国際機関と連携した研究プログラムを推進することも有効でしょう。
結論として、1961年から2023年までのインドネシアのヤギ肉生産量推移データは、経済的、地政学的、環境的要因の影響を大きく受けてきました。未来において安定した生産を維持し、さらなる成長を遂げるためには、生産基盤の強化、需給の正確な予測、ならびに持続可能な畜産管理への取り組みが不可欠です。政府や国際機関がこれらの課題に対応する具体的な政策を講じることが求められています。