イラン（イスラム共和国）の牛乳生産量推移（1961年～2023年）

FAO（国際連合食糧農業機関）の最新データによると、イランの牛乳生産量は1961年には668,800トンでしたが、その後長期的に増加し、2023年には7,654,331トンに達しています。一方で、過去数十年には減少する年もあり、特に2015年には大幅な生産低下が見られました。近年は再び成長傾向に戻りつつありますが、一貫した増加とは言えず、変動が目立っています。

イラン（イスラム共和国）の牛乳生産量の推移は、国の農業政策や気候条件、経済情勢の影響を強く受けていることが特徴的です。1961年から2023年までの期間を振り返ると、特に1970年代から1990年代にかけては、農業技術の発展と家畜管理の改善により着実な増加が見られました。この時期、1970年の約1,081,700トンから1995年の約3,450,000トンへの3倍近い成長は、乳業だけでなく畜産全体の振興政策が功を奏した結果といえます。

2000年代も総じて増加傾向が続き、2000年の4,760,000トンから2007年の7,343,390トンへと急成長を遂げました。しかし2008年に一時的な生産減少（6,281,804トン）が記録され、これは主に経済制裁や干ばつなどの地政学的および気候的なリスクが関与していたとされています。同様に、2015年には5,704,513トンと大きな減少が見られました。この要因としては、イラン国内の経済的困難やエネルギー不足、国際的な孤立が乳牛飼育や輸送に負の影響を及ぼしたことが挙げられます。

近年では、2020年以降のデータが示すように、生産量は再び回復基調にあります。2020年の7,508,993トンから2023年の7,654,331トンまで持続的な成長が見られますが、この増加ペースは依然として緩やかです。これは、新型コロナウイルス感染症の影響による物流の停滞や、地域衝突などが乳製品市場に悪影響を及ぼしたことと関連しています。また、エネルギーコストの上昇や気候変動による水資源の制約も、畜産業全体における課題として浮き彫りになっています。

他国と比較すると、イランの牛乳生産量は主要輸出国の1つであるアメリカやドイツに比べて相対的に小規模ですが、地域内では上位に位置づけられます。例えば、2023年時点ではアメリカの牛乳生産量が約1億トン、ドイツが約3,400万トンと推定されており、イランはまだ効率的な大量生産体制の確立が課題となっています。

イランの牛乳生産における今後の課題としては、気候変動に伴う干ばつのリスクへの対応が挙げられます。牛は大量の水を必要とし、これが将来、国内資源の圧迫要因となり得ます。そのため、効率的な水利用技術の導入や、より持続可能な家畜管理方法の採用が議論されるべきです。また、国際的な制裁による物流の不安定さを軽減するため、国内の輸送インフラをさらに整備し、乳製品の国内供給を安定させることも重要です。

さらに、牛乳生産量の増加に向けて改革を進めるためには、地域間の協力が不可欠です。例えば、周辺諸国との農業技術交流や、中東全体での気候変動対応計画の枠組みづくりが効果的です。また、国連機関や非政府組織と連携し、環境影響を抑えつつ牛乳農業を近代化する支援プログラムを活用することも推奨されます。

結論として、イランの牛乳生産量は長期的には増加しているものの、環境や経済的要因による変動が大きいという課題があります。将来的には持続可能な農業技術の導入と、地域の安定的な協力体制の確立を進めることで、生産量のさらなる向上と安定が期待されます。