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イラン(イスラム共和国)のナシ生産量推移(1961年~2023年)

イラン(イスラム共和国)のナシ生産量は1961年の17,000トンから順調に増加し、1990年代以降では15万トンから20万トン規模となりました。2014年には過去最高の279,580トンを記録しましたが、その後は大きな減少傾向が見られ、2016年には80,576トンと著しく落ち込みました。近年では10万トン前後の生産量で推移し、2023年には96,465トンを記録しています。このように長期的な増減の波が確認される一方、近年の減少傾向は特に注目すべき課題として浮き彫りになっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 96,465
8.56% ↑
2022年 88,855
3.92% ↑
2021年 85,502
-19.66% ↓
2020年 106,429
-0.33% ↓
2019年 106,785
15.72% ↑
2018年 92,281
-1.4% ↓
2017年 93,594
16.16% ↑
2016年 80,576
-71.73% ↓
2015年 285,000
1.94% ↑
2014年 279,580
99.57% ↑
2013年 140,090
8.33% ↑
2012年 129,317
2.54% ↑
2011年 126,115
4.22% ↑
2010年 121,012
2.63% ↑
2009年 117,915
1.82% ↑
2008年 115,812
-44.18% ↓
2007年 207,475
29.48% ↑
2006年 160,233
-0.58% ↓
2005年 161,171
1.36% ↑
2004年 159,007
-11.57% ↓
2003年 179,805
-5.11% ↓
2002年 189,492
-0.69% ↓
2001年 190,805
3.62% ↑
2000年 184,143
13.71% ↑
1999年 161,937
-13.53% ↓
1998年 187,281
-9.52% ↓
1997年 206,989
3.85% ↑
1996年 199,318
-3.7% ↓
1995年 206,969
0.1% ↑
1994年 206,754
32.82% ↑
1993年 155,665
-2.05% ↓
1992年 158,924
3.85% ↑
1991年 153,031
3.62% ↑
1990年 147,690
16% ↑
1989年 127,321
1.67% ↑
1988年 125,227
17.05% ↑
1987年 106,987
3.8% ↑
1986年 103,068
5.87% ↑
1985年 97,351
11.68% ↑
1984年 87,170
15.77% ↑
1983年 75,299
5.54% ↑
1982年 71,346
147.8% ↑
1981年 28,792
2.83% ↑
1980年 28,000 -
1979年 28,000
-12.5% ↓
1978年 32,000
-5.88% ↓
1977年 34,000
-5.56% ↓
1976年 36,000
-5.26% ↓
1975年 38,000
-5% ↓
1974年 40,000 -
1973年 40,000
-6.98% ↓
1972年 43,000
58.77% ↑
1971年 27,083
-9.72% ↓
1970年 30,000 -
1969年 30,000
11.11% ↑
1968年 27,000 -
1967年 27,000
8% ↑
1966年 25,000 -
1965年 25,000
8.7% ↑
1964年 23,000
9.52% ↑
1963年 21,000
10.53% ↑
1962年 19,000
11.76% ↑
1961年 17,000 -

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データに基づき、イランにおけるナシ生産量の推移を分析すると、長期的には生産量が段階的に増加してきたものの、特定の時期には大きな変動が見られることがわかります。このデータから見える背景や要因を詳しく解説し、将来的な課題や具体的な対策について提案します。

1960年代から1980年代半ばまでは、ナシ生産量は着実に増加しており、1972年には43,000トン、1982年には71,346トンへと成長しました。この原因としては、農業関連の技術革新や農地の拡大、灌漑設備の整備などが挙げられます。一方、1966年から1977年にかけての一部停滞は、経済的・政治的な要因や気候条件の影響が考えられます。また、1979年のイラン革命以降の混乱が1980年代初頭の減少に繋がった可能性も考えられます。

1990年代には約15万トンを超える生産量を維持し、1994年には206,754トンという重要な節目を迎えました。しかし、その後は気候条件の変動や水資源の不足、さらには効率的な農業管理の欠如が影響したとみられ、生産量が下落する年も散見されます。2000年代後半以降では約15万トン前後の生産が続いていましたが、2014年には大きな飛躍を遂げ、一時的に過去最高の279,580トンとなりました。この年の増産は、農業振興政策や技術的改善、気象条件の好転が背景にあると考えられます。

しかし、2016年以降、再び急激な減少が始まりました。特に2016年の80,576トンへの落ち込みは、干ばつや水不足が深刻化した影響の可能性が高く、その後の回復も限定的にとどまっています。2023年の生産量は96,465トンであり、依然として過去の最高値からは遠く及びません。この減少傾向には、気候変動や過剰利用された水資源の枯渇、さらには経済制裁による農業資材の調達難が背景にあると考えられます。

国際的な観点で比較すると、中国は世界最大のナシ生産国であり、生産量は年間約1,700万トンを超える規模を誇ります。その他の主要生産国としては韓国や日本、アメリカなどが挙げられ、これらの国々は最新の農業技術を導入し気候変動への適応力の向上に成功しています。一方、イランのように降水量が限られる国々では、持続可能な農業が求められています。

特にイランにとっては、気候変動による影響が地政学的リスクと結びつくことも懸念されます。水不足の深刻化は国内の農業地帯での懸念を高め、地域的な衝突や農村部の経済的困窮を引き起こす可能性があります。また、近年多発する干ばつや砂漠化の進行がナシを含む農作物全般に悪影響を与えることも予測されます。

これらの課題を克服するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。第一に、農業用水の効率的利用を目指した灌漑技術の革新と普及が必須です。滴下灌漑や気候適応型農業技術の導入により、水資源の浪費を防ぐことができます。第二に、政府による持続可能な農業政策の強化です。具体的には、気候変動への適応策として耐乾性の高い品種の育成や普及を進める必要があります。また、農業従事者に対する教育や研修を通じて、持続可能な農業技術を広めることが重要です。さらに、国際協力を通じて先進国の成功事例を参考にすることも有益です。

結論として、イランのナシ生産量は長期的な増加基調を経て停滞または減少しつつあり、特に近年では水資源や気候変動の影響を大きく受けていることが明らかです。この状況を改善するためには、持続可能な農業の実現に向けた政策と技術の導入が急務です。また、地域的な協力や適応策を通じて、地球規模での気候変動に対抗していくことが求められます。以上の対応により、将来的な持続可能性を確立するための礎を築くことができるでしょう。