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イラン(イスラム共和国)のネギ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年7月更新のデータによると、イラン(イスラム共和国)のネギ生産量は1990年から2023年までの期間で大きな変動を記録しています。1990年代初頭には10,000トンを超える生産量を記録しましたが、その後急激な減少を見せ、1996年には最低地点の51トンを記録しました。その後も生産量は乱高下しながら、2011年の38,714トンという極端な増加や、その後の減少を経て、近年は11,000トン前後の安定した状態に戻っています。2023年の生産量は10,803トンで、これまでの推移を総合的に見ると中程度の水準であるといえます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 10,803
-5.29% ↓
2022年 11,406
0.23% ↑
2021年 11,380
-3.77% ↓
2020年 11,826
7.39% ↑
2019年 11,012
-2.56% ↓
2018年 11,301
30.56% ↑
2017年 8,656
-38.61% ↓
2016年 14,101
26.5% ↑
2015年 11,147
1445.82% ↑
2014年 721
-97.63% ↓
2013年 30,435
10.77% ↑
2012年 27,475
-29.03% ↓
2011年 38,714
5344.96% ↑
2010年 711
-15.99% ↓
2009年 846
1806.08% ↑
2008年 44
-88.49% ↓
2007年 386
28.57% ↑
2006年 300
-79.27% ↓
2005年 1,448
1291.83% ↑
2004年 104
-62.18% ↓
2003年 275
-83.11% ↓
2002年 1,629
714.25% ↑
2001年 200
-87.04% ↓
2000年 1,544
2891.67% ↑
1999年 52
-75.35% ↓
1998年 209
-92.54% ↓
1997年 2,804
5397.65% ↑
1996年 51
-91.61% ↓
1995年 608
3.75% ↑
1994年 586
-59.84% ↓
1993年 1,460
69.3% ↑
1992年 862
-69.5% ↓
1991年 2,826
-71.74% ↓
1990年 10,000 -

ネギの生産量は国の農業条件や市場需要を反映する重要な指標の一つです。イランでは、気候変動や政治・経済的な要因、さらには紛争や地域的な不安定さなどが生産の大幅な変動に影響を与えたと考えられます。1990年に10,000トン以上を記録していた生産量は、1996年に51トンという最低水準にまで減少しました。この減少には、慢性的な旱魃や地域的な競争に加え、農業政策の不十分さが関与している可能性があります。また、中東地域の水資源不足問題や、インフラ未整備による農業生産モデルの非効率さも課題の一部と考えられます。

その後、2011年には38,714トンという驚異的な生産量を記録しましたが、この急激な増加の背景には、異常気象のため一時的に生産が好転したことや輸出の増加があったと推測されます。一方、翌年には大幅に減少していることから、持続可能な生産基盤が構築されていないことがわかります。このような不安定さは、国内の農業政策が長期的・計画的と言い難い状況を物語っています。

また、近年のデータ(2016年以降)を分析すると、生産量は概ね11,000トン前後で安定しており、過去の波乱を乗り越えつつある兆しがみられます。しかし、2023年の10,803トンという数値は、わずかな低下が見られ、今後も気候条件や国際市場の動向に脆弱である可能性が否定できません。特に、近年の気候変動による干ばつや大雨の頻発、農薬や肥料の価格高騰も、イラン国内での農業に悪影響を与えている可能性があります。

国際的な観点から見ると、イランのネギ生産は日本(2023年時点で安定的な国内需要を支える生産体制を構築)や中国(大規模生産と輸出国としての地位の確立)と比較すると、依然として進化が必要です。他国の安定して効率的な農業政策と対照的に、イランのネギ生産はその規模や安定性で立ち遅れています。ネギを含む農産物の生産を増やし、持続可能な形で国内外の需要を満たすには、多面的な改革が求められるでしょう。

今後の課題として、農業用水の効率利用や新たな灌漑技術の導入、品種改良による生産性向上が重要となります。例えば、干ばつ耐性の高いネギ品種を採用することで、気候変動のリスクを緩和することができます。また、地元農家への技術支援や設備投資を促進し、政府と国際機関の協力による農業インフラの整備も不可欠です。このような取り組みは、農業経済の安定化と食品安全保障の確立に繋がります。

さらに、地政学的な視点からみると、中東地域特有の緊張がネギの生産にも影響を与え得る点は無視できません。例えば、近隣国との水資源を巡る競争や、経済制裁による農業機器や資材の輸入制限等は、生産基盤の脆弱化を誘発します。こうしたリスクを軽減するためには、地域間の農業協力や資源共有の枠組みを強化し、持続可能な生産モデルを構築する必要があります。

総合的に見ると、イランのネギ生産は過去の大きな変動から一定の安定水準を維持する形に至っていますが、今後の課題は依然として山積しています。気候条件や地政学的リスクに強い体制を築くとともに、国内外市場での競争力を向上させるための政策づくりが急がれるでしょう。国際協力や科学技術の利用が、イランの農業の将来を形作る鍵となりそうです。

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