国際連合食糧農業機関(FAO)が最新のデータとして提供した統計によれば、イラン(イスラム共和国)の鶏卵生産量は、1961年の60,000トンから2023年の780,351トンまで長期的に増加傾向を示しており、特に1970年代後半から急激な成長を見せました。しかし、イラン革命や国際的な制裁、近年の経済波乱などが影響し、不安定な時期も見られます。近年のデータでは、生産量が年間80万トン前後で推移しており、伸びは鈍化しています。
イラン(イスラム共和国)の鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 780,351 |
-2.77% ↓
|
2022年 | 802,618 |
2.52% ↑
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2021年 | 782,864 |
3.61% ↑
|
2020年 | 755,570 |
-13.1% ↓
|
2019年 | 869,421 |
20.15% ↑
|
2018年 | 723,600 |
7.41% ↑
|
2017年 | 673,689 |
-16.83% ↓
|
2016年 | 810,000 |
4.23% ↑
|
2015年 | 777,119 |
2.07% ↑
|
2014年 | 761,364 |
-14.74% ↓
|
2013年 | 893,000 |
-2.19% ↓
|
2012年 | 913,000 |
30.43% ↑
|
2011年 | 700,000 |
-8.74% ↓
|
2010年 | 767,000 |
2.13% ↑
|
2009年 | 751,000 |
3.3% ↑
|
2008年 | 727,000 |
3.41% ↑
|
2007年 | 703,000 |
3.84% ↑
|
2006年 | 677,000 |
-10.8% ↓
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2005年 | 759,000 |
15.88% ↑
|
2004年 | 655,000 |
4.13% ↑
|
2003年 | 629,000 |
14.99% ↑
|
2002年 | 547,000 |
-5.85% ↓
|
2001年 | 581,000 |
0.17% ↑
|
2000年 | 580,000 |
17.65% ↑
|
1999年 | 493,000 |
-1% ↓
|
1998年 | 498,000 |
5.96% ↑
|
1997年 | 470,000 |
-3.37% ↓
|
1996年 | 486,400 |
4.15% ↑
|
1995年 | 467,000 |
-9.5% ↓
|
1994年 | 516,000 |
14.67% ↑
|
1993年 | 450,000 |
15.38% ↑
|
1992年 | 390,000 |
14.71% ↑
|
1991年 | 340,000 |
15.25% ↑
|
1990年 | 295,000 | - |
1989年 | 295,000 |
18% ↑
|
1988年 | 250,000 | - |
1987年 | 250,000 |
4.17% ↑
|
1986年 | 240,000 |
4.35% ↑
|
1985年 | 230,000 |
4.55% ↑
|
1984年 | 220,000 |
10% ↑
|
1983年 | 200,000 |
8.11% ↑
|
1982年 | 185,000 |
6.32% ↑
|
1981年 | 174,000 |
1.16% ↑
|
1980年 | 172,000 |
1.18% ↑
|
1979年 | 170,000 |
-23.77% ↓
|
1978年 | 223,000 |
1.36% ↑
|
1977年 | 220,000 |
6.28% ↑
|
1976年 | 207,000 |
10.11% ↑
|
1975年 | 188,000 |
5.03% ↑
|
1974年 | 179,000 |
4.07% ↑
|
1973年 | 172,000 |
13.91% ↑
|
1972年 | 151,000 |
16.15% ↑
|
1971年 | 130,000 |
6.56% ↑
|
1970年 | 122,000 |
7.02% ↑
|
1969年 | 114,000 |
7.04% ↑
|
1968年 | 106,500 |
6.5% ↑
|
1967年 | 100,000 |
36.99% ↑
|
1966年 | 73,000 |
4.29% ↑
|
1965年 | 70,000 |
13.82% ↑
|
1964年 | 61,500 | - |
1963年 | 61,500 | - |
1962年 | 61,500 |
2.5% ↑
|
1961年 | 60,000 | - |
イランの鶏卵生産量は、過去数十年にわたり着実な成長を遂げてきました。1960年代では6万トン前後の生産量だったのに対し、1970年代に入ると農業技術の進化や家禽飼育の近代化により急激に増加し、1976年には20万トンを突破しました。この成長はイランの農業改革や都市化の進展、国内需要の増加が大きな要因です。しかし、1979年のイラン革命にともなう社会情勢の混乱によって、生産量は223,000トンから170,000トンへ急減しました。その後も経済政策の変動やイラン・イラク戦争の影響による低迷を経験しましたが、1990年代以降は回復を見せ、1994年に50万トンを突破しました。
21世紀に入ってからは、イランの人口増加と消費パターンの変化が鶏卵の需要を押し上げる大きな要因となっています。一方で、気候変動や水資源不足、国際的な制裁などの影響も重なり、生産量に小規模での起伏が見られます。2000年代中盤以降の成長速度は緩やかになっており、特に2011年の700,000トンへの急減や2017年の673,689トンという数値は、経済制裁や家禽感染症が原因と考えられます。加えて、新型コロナウイルスのパンデミックや昨今のインフレも生産コストの増加や供給網の混乱を引き起こし、近年のやや停滞した成長に影響した可能性があります。
他国との比較を行うと、イランの鶏卵生産量は2023年の段階で韓国(約70万トン)を上回り、ドイツ(約100万トン)に接近しています。しかし、日本(約250万トン)や中国(約3,000万トン)のような主要な鶏卵生産国には遠く及びません。これは、イランが生産効率の面で抱える課題を示しています。例えば、農業技術の近代化や家禽飼育の効率向上には、用水管理の徹底や飼料供給の高品質化などが必要です。
また、地政学的背景もイランの生産動向に影響を与えています。イランは紛争地域に近接し、地政学的リスクが経済安定や貿易の自由度に影響を与えています。国際的な制裁に伴って輸出や先進技術の導入が制限され、それが農業分野にも波及しています。このような状況では、国内市場の需要に応じた生産を維持するための政策が重要となります。
これからの課題としては、インフラ改善や資源の効率的な利用、そして気候変動の影響への適応力強化が挙げられます。具体的な提言として、①効率的な灌漑システムの導入、②耐熱性品種の育成プログラムの推進、③輸入に依存しない地元産の家禽飼料の開発、④地域間協力を通じた技術移転などがあります。また、家禽感染症に対する予防策の強化も欠かせません。政府や国際機関は、こうした分野での投資を戦略的に進めるべきです。
総じて、イランの鶏卵生産は近代的手法の導入や政策的支援を通じて、さらなる成長の可能性を秘めています。しかし、変動する国内外の情勢を踏まえた柔軟な対応が必要であり、地域間協力や国際機関との協議を活用することで、食料安全保障の強化を実現することが求められます。