国際連合食糧農業機関(FAO)が更新した最新データによると、イラン(イスラム共和国)のキウイフルーツ生産量は1990年以降急速に増加し、2000年代半ばに本格的な生産規模を確立しました。特に2008年には222,000トンと大幅な増加を記録し、その後の成長は一進一退を経つつも概ね安定を維持しています。直近の2023年の生産量は295,142トンと、高水準を保ちつつ微増傾向が続いています。
イラン(イスラム共和国)のキウイフルーツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 295,142 |
0.19% ↑
|
2022年 | 294,571 |
0.1% ↑
|
2021年 | 294,263 |
-0.79% ↓
|
2020年 | 296,593 |
1.28% ↑
|
2019年 | 292,857 |
-0.16% ↓
|
2018年 | 293,341 |
-3.37% ↓
|
2017年 | 303,581 |
7.79% ↑
|
2016年 | 281,650 |
-4.46% ↓
|
2015年 | 294,791 |
-1.39% ↓
|
2014年 | 298,940 |
19% ↑
|
2013年 | 251,218 |
15.6% ↑
|
2012年 | 217,312 |
4.5% ↑
|
2011年 | 207,960 |
15.75% ↑
|
2010年 | 179,658 |
10.07% ↑
|
2009年 | 163,215 |
-26.48% ↓
|
2008年 | 222,000 |
77.08% ↑
|
2007年 | 125,366 |
-20.66% ↓
|
2006年 | 158,008 |
82% ↑
|
2005年 | 86,818 |
20.29% ↑
|
2004年 | 72,174 |
13.26% ↑
|
2003年 | 63,723 |
16.1% ↑
|
2002年 | 54,888 |
20.32% ↑
|
2001年 | 45,619 |
-1.81% ↓
|
2000年 | 46,458 |
8.47% ↑
|
1999年 | 42,829 |
25.04% ↑
|
1998年 | 34,253 |
1.89% ↑
|
1997年 | 33,617 |
53.86% ↑
|
1996年 | 21,850 |
18.99% ↑
|
1995年 | 18,363 |
21.67% ↑
|
1994年 | 15,093 |
4637.29% ↑
|
1993年 | 319 |
1417.14% ↑
|
1992年 | 21 |
425% ↑
|
1991年 | 4 |
300% ↑
|
1990年 | 1 | - |
イランのキウイフルーツ生産は、1990年代にほぼゼロに近い状態から始まり、急速に成長を遂げました。1990年代の拡大初期には、生産量がわずか数トンから1997年には33,617トンに達しています。この急成長は、イラン北部の気候条件と市場の需要を背景に、農業技術やインフラへの投資が進められた結果と考えられます。
2000年代に入ると、生産量はさらに加速度的に増加し、2006年には158,008トン、そして2008年には222,000トンという劇的な伸びを記録しました。しかしその後の2009年には163,215トンと一時的な後退が見られ、以降は安定基調に乗りつつ小さな変動を繰り返す形となりました。2014年以降は生産量が約30万トン前後で推移し、極めて安定した生産基盤が確立されているといえます。
ただし、直近の数年においては生産量の大幅な成長は見られず、むしろ横ばい状態が続いています。一部の年では生産量がわずかに減少する傾向もみられ、その背景にはいくつかの課題が隠れています。まず、気候変動の影響として気温や降水量の変動が農作物の収穫量に影響を与える可能性があります。また、土壌の持続可能な利用や農地の適正管理も重要な課題として浮上しています。
キウイフルーツの生産は、イランの農業部門において経済的に重要な位置を占めていますが、これをさらに強化するためには、いくつかの具体的な対策が求められます。たとえば農業用水の効率的な利用と灌漑技術の導入は、生産基盤を維持する鍵となります。また、気候変動に強い品種の研究開発と導入は、今後の不確実な気候リスクに備えるために必要不可欠です。さらに、サプライチェーンの強化と輸出マーケットの拡張も、国内の需要を超えた持続的な成長を支える要素となるでしょう。
他国との比較では、中国やニュージーランドが世界のキウイフルーツ市場の主要プレイヤーとして知られ、いずれも100万トンを超える大規模な生産基盤を有しています。一方でイランは比較的小規模な生産国ながら、急速な成長と安定的な基盤を背景に、品質面でアジア市場を中心とした輸出の可能性を秘めています。イラン産のキウイフルーツはその自然な甘みと風味で評価されており、これを生かしたブランド戦略が求められます。
将来的なリスクとしては、地域的な衝突や経済制裁などの地政学的問題も影響を及ぼす可能性があります。特に輸出市場への依存が高まった場合、これらのリスクは生産者にとって大きな課題となり得ます。そのため、国際市場への依存度を分散させながら国内市場を強化する選択肢も議論の余地があります。加えて、最新技術を取り入れた農業のデジタル化やスマート農業の導入も有望な手段と言えるでしょう。
結論として、イランのキウイフルーツ生産は驚異的な成長を遂げ、高水準の生産量を保ち続けています。しかし、気候変動や地政学的リスクへの対策が不可欠であり、これを克服するための包括的な取り組みが今後の持続的成長に繋がるでしょう。国際市場への戦略的進出と同時に、国内のインフラ整備や政策支援の強化が鍵となるはずです。国際連合食糧農業機関や周辺国との協力枠組みを強化することも、広範な課題に対応するための重要な手段と言えるでしょう。